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登場人物 陛下、夕鈴、李順
カップリング 陛下x夕鈴

・陛下記憶喪失ネタで続くはずです。

「なんだ、この娘は」
黎翔は、不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。
目が覚めたら、陛下陛下と聞きなれぬ声とその馴れ馴れしさにまず驚き、
体を起こせば人を怠けているかのように説教し始めた。
近くに控えているはずの人間はだれもおらず、急いで李順を呼んだ。
目の前でじっとこちらを見ている少女は、下級女官としても雇わないであろうほど、
楚々とした品は全くなく、まっすぐとした視線は不躾にさえ思える。
「陛下…こちらは汀夕鈴殿です」
「名前など聞いていない。
この娘はいったい何者だ?
何故勝手に部屋に入れた。どういうつもりだ」
李順は黎翔の瞳をじっとみて、おかしいところは外見上なにもないと判断し答えた。
「陛下の縁談よけに雇った臨時の妃ですが、何か問題ございましたか」
李順が短く説明すると、黎翔は顔をしかめた。
「そういえばそのような話をした気がするが…」
「あなたが縁談をいちいち断るのが面倒だとおっしゃったんですよ」
李順は正直に話す。
臨時の妃を提案したのは自分だが、
それは黎翔が面倒だ面倒だと何度も言うから、そうせざるを得なくなっただけだった。
「雇ったとは聞いてないぞ。
急な決定だとしても、こんな事後報告の方法があるか。
しかも…」
黎翔は夕鈴を上から下まで眺めた。
「…このような娘で、本当に縁談避けになるのか?」
「……」


黎翔に突然呼ばれるのはめずらしいことでもないが、
夕鈴に対する不審な目つきには違和感があった。
そして李順が何かあったのかとたずねる前に、黎翔から「なんだ、この娘は」と訊かれたのだ。
李順は一瞬にしてその質問の意図を探るために頭を回転させたが、
分からないので正直に答える。
一言二言交わせば分かるが、黎翔には、記憶がないらしい。
しかし李順のことは認識しているわけで、どこから抜けているか早急に明らかにしなければ面倒になる。
「この娘は下級役人の娘で、王宮のどの派閥にも属しておらず、顔が割れておりません。
その方が都合がよろしいでしょう。
どのような娘でも関係ありません。
貴方が彼女を『愛して』いれば」
黎翔は小さく頷いた。
「なるほどな。それで、私の役割は、
この娘と人前では夫婦のように振舞うということか」
「そういうことです」
分かりきったことを説明するのは奇妙な感覚だが、
ひとまず黎翔は納得した様子なのでもうこの話はいいだろうと思った。
臨時の妃だなんだよりも、
昨日渡した書簡のことは記憶にあるのかというほうが重要だ。
夕鈴が来る前まで全て記憶が抜け落ちているなんてことになったら、
説明しなければいけない案件が山ほどありすぎて頭が痛くなる。
黎翔はやっと夕鈴に目を向けた。
はじめて会ったときのような、冷たい笑みとともに。
「汀夕鈴というそうだな。
周りに不自然に思われないよう頼む」
「…はい陛下」
夕鈴は静かに返事をし、恭しく頭を下げた。
「下がってよい」
無機質に部屋に響く声が夕鈴の耳に入る。
「はい、陛下」
一礼をして顔をあげると、黎翔はもう夕鈴を見てはいなかった。
すぐに外に足を向け、部屋から出て行った。
後ろを李順が追い、
黎翔に声が聞こえなくなる距離で夕鈴を引き止めた。
「夕鈴殿」
「はい、李順さん」
黎翔が目の前からいなくなり、動揺が声に出て震える。
李順はそれは無視して話を続けた。
「今の陛下はあんな感じですが…まあいつも通り適当にお願いします」
なんとも投げやりな助言をもらい、夕鈴は苦笑いした。
「はい。大丈夫だと思います」
李順の話しぶりを見るとたいしたことはなさそうだ。
きっとそのうち記憶も戻るだろう。

李順は夕鈴の後ろ姿を見送ると、
黎翔のもとに戻る。
「あの娘、今後は勝手に部屋に入らないように言っておけ。不愉快だ」
李順の姿が見えると同時に黎翔はそう言いながら上着を羽織る。
「私の管理不足です。申し訳ございません」
とは言っても夕鈴が黎翔の部屋に許可なく入ることなどない。
昨晩だかいつだか知らないが、
自分から呼んだのだろうと思いつつもそれは口にしない。
「それより、昨日お伝えしておいた案件、いかがでしょうか。
覚えていらっしゃいますか」
「北部の城壁の増築の件なら、お前のいっていたように人件費を上げてよい。
致し方ないからな。速度を優先してくれ」
その工事なら、もう完成に近い状態ですが、と李順は伝えようとしてやめた。
ひとまず確認しなければならないことを全てまとめてから、
体系立てて話さなければ効率の悪いことになる。
「承知いたしました。ではそのように」
黎翔は特に反応しなかったが、沈黙は承諾と同じである。
ひとまず業務に支障が出そうな言語機能や一般常識が抜け落ちた様子はない。
しかも、王が臨時妃に入れ込みすぎという最近の李順の心配事も解決してくれた。
―――ちょうど、夕鈴殿が来る前と同じになったと思えばいいのでしょうか。


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