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自由な話
登場人物 陛下、夕鈴
カップリング 陛下x夕鈴


・真面目な話です!
・某所でリクエストくださった方にささげます、がリクエスト内容にそってなくてすいません<いつもこれな気がするー!
李順の隣で空を見ていて、
ああつまらないと思う頭の片隅で思い出したことがある。
そういえば昔怪我をした野鳥を拾ったことがあって、
手当てをしてやったんだった。
今まで忘れていたのは、
それがたいしたことではないわりに、
嫌な思い出でしかなかったせいだろうか。
籠の中が狭いと主張するように、
飛び回るその鳥がかわいそうで小さな扉を開けてやって、
外に出した。
その次の瞬間には、
鳥は手のひらから飛び立って、
力強く小さな爪が僕の手のひらを押しだす感覚を残して消えてしまった。
唖然として口を開けたまま、
爪の食い込んで少し痛い手のひらに視線を落として、
ああ、名前を付けなくて、よかった
と思った。



彼女はあの時の鳥に似ている。
観賞用の飼育されている鳥とは違って、
小さくて、地味な色合いだが柔らかい羽の愛らしい鳥だ。
今でも同じ種類を時々見かけることがあって、
小刻みに両足で跳びながら、エサを拾って歩く姿が、
いつも忙しく働こうとする夕鈴に似ている。
近づいていくとサッと逃げて、
ぼんやりと余所見をしているといつのまにか近くに来て、
この微妙な距離のとり方さえ。

ここから見える空を全部使って、自由に飛べるその鳥が、
籠の中で僕の隣にいることに、
幼い頃は何を思っていたのだろうか。
今となってはただ純粋に怪我を治してあげたいなんて理由ではなくて、
自分の息苦しさの道連れのように、
そこに置いたのではないかと思ってしまう。
もしくは、
お前よりはマシなのだ、と
気休めにでもしたかったのではと。
まるであの空が自分のものになったかのような、
錯覚をくれる自由な鳥を、
籠に閉じ込めて僕は嬉しかったのだろうか。


鳥を飼っていたんだよ。怪我したところを見つけてね、と夕鈴に伝えて、
君のようにかわいかったよ、と付け加えた。
夕鈴は少し笑って、ありがとうございます、と言った。
僕は君の名前は忘れられる気がしないよ。
あの鳥のように、
何も言わずに逃げていったりしないでくれますように。
君が逃げ出したくならないように、
僕はとても気をつけているから。






「おいしそうなにおいだね」
朝からそわそわと僕の様子を伺っている夕鈴がおかしくて、
待っていることができなかった。
きっと何か秘密でしているんだろうと思って、
途中で邪魔してはいけないとは分かっているのだけど、
黙って待っているのはなんだかつまらない。
案の定台所に顔を覗かせた僕を見て、
夕鈴は大慌てだった。
「陛下!」
「何してるの」
「な、なんでもないです!」
「それ何?」
小さな手をたくさん振り回して夕鈴は背中の後ろにあるものを隠している。
においでなんとなく分かるし、
腕なんかでは全然隠しきれないのに一生懸命だ。
「教えてくれないなら当てようかな」
「入ってこないでくださいー!もう、浩大に見張りを頼んだのに裏切ったわね」
まったくもう、と怒る様子もかわいくて、
僕はくるくる表情のかわる夕鈴から目を離せない。
「本当は驚かせようと思ったんですよ」
がっかりした顔の夕鈴を見て、
黙って待っていてあげたらよかったかも、と一瞬後悔するのだけれど、
慌てる夕鈴がかわいかったからまあいいかと思ってしまう。
「そっか、ごめんごめん」
「陛下にはなかなか隠し事ができないんですよねえ」
ふぅ、と夕鈴は短くため息をつく。
君はなんでも顔に出るからね。
嬉しいときは笑って、怒るときは思いっきり怒って。
嘘を吐くのはへたくそで、
気遣うような笑顔は悲しいくらい優しい。
「君のことは何でも教えてほしい。隠し事など必要ない」
蒸し器の前で真剣な顔をする夕鈴を捕まえて、
自分のほうに強く引いた。
無防備な夕鈴は簡単に腕の中に入ってくる。
「陛下?!」
「そう思わないか」
「な、なんで…」
「それとも君は、なにか私に言えないことでもあるのか」
夕鈴の顔が一瞬で真っ赤になる。
これくらいの距離なんて、そろそろ慣れてもいいころなのに、
夕鈴はいつまでも赤くなって逃げようとする。
それでも腕を振り払ったりはしないから、
それに甘えて少しだけまた距離を縮める。
いつ本当に拒絶されるか分からないのに、
腕を伸ばせばもっと近づきたくなって、
やりすぎては自分にひやりとすることもある。
「ちょっ近いです!」
「それは答えになっていない」
「ないです!秘密とかないですからー!」
「ならばよい」
ぱっと手を離すと、夕鈴は泣きそうな顔をしていて、
今回は少しやりすぎたかもしれないと思った。
時々加減が難しい。
もう少し、もう少しと思っていても突然一歩を踏み出しすぎて、
夕鈴がほんの少しでもそれで遠ざかってしまう度、
僕の心臓はうるさくなりすぎて、呼吸ができなくなる。
「ふざけてたら怪我するんですからね」
「うん、気をつけるね」
負け惜しみのように呟いて、夕鈴は蒸し器の蓋を慎重に開けた。
僕はふざけていたわけではないけれど、
一応謝っておく。
蒸し器の中は緑色の肉まんみたいなものに見えた。
「これ、ヨモギのおまんじゅうなんですよ。
近所のおばあちゃんがたくさんくれたって、青慎が」
「ああ、ヨモギか。どこかで覚えのあるにおいだと思った」
「毎年これを食べないと落ち着かないんですよね」
夕鈴は出来立てのまんじゅうを手にとって、
半分に割った。
「中はつぶあんです!」
嬉しそうに半分僕に差し出してくれた。
「あ、すみません…王様と半分こなんてダメですよね」
「そんなことないよ」
夕鈴が恥ずかしそうにして手を引っ込めようとしたのを捕まえて、
まんじゅうを奪った。
「あつっ」
口の中にいれた饅頭は予想以上に熱い。
よもぎの強い香りがいっぱいに広がった。
「大丈夫ですか!」
「うん、あまり温かいものって食べないからびっくりしちゃった」
「…私でよかったら、いつでも作りますよ」
夕鈴はすぐそういうことを言うから、
だめなんだと思うんだけど。
だって『いつでも』って言ったら、
明日も、明後日も、10年後も入ってるんだよ。
「あ、もちろん毎日とかは無理ですけど、
陛下が食べたいとき、…で、私が用意できるときです!」
「そっか。じゃあまたお願いするね」
その後の夕鈴の顔が変だったから、
僕は多分笑うのに失敗したのだろう。
夕鈴は僕の演技と本音を見分けることができないわりには、
時々驚くほど鋭い。
何も言わない優しい子で、よかったと思う。






未来の約束ができないのは、
きっと約束を守れないからというよりは、
最初から期待しているのが怖いからかもしれない。
その期待してしまった瞬間からの、
失敗したときを思うのが怖くて怖くて、
何も決めない中間にいるのが、一番楽だと知っているから。
毎日一緒にいれば忘れそうになるのに、
夕鈴は突然僕を現実に引き戻す。
僕が、このまま夕鈴がここにいるのが当たり前だと思いそうになったとき、
突然ここは夕鈴の居場所ではないのだと思い出させる。
それはなんでもいいのだけれど、
弟からの手紙を大事そうに見つめる顔とか、
幼馴染のことを話すときとか、
慣れた手つきで料理をするところとか、
今日のように、
彼女の当たり前が、ここではないどこかにあるのだと、
確認しようとしているかのように何もかもが。
いつか鳥の怪我が治ったように、
夕鈴もここにいる理由がなくなれば、
いなくなるのだろうね。

籠を作って覆ってしまえたらいいのに。
君が、
故郷の話をする顔や、
王宮を自由に歩き回る姿や、
だれかと話して見せる笑顔が、
魅力的でなければいいのに。
そうしたら僕はそれを傷つけるのが怖いなんて思わずに、
自分のものだけにしておけるのに。
いつかいなくなるのが怖くて、
それよりも拒絶されるのが怖くて、
僕は遠めに君を見ながら、
今は何もできない。








「陛下!」
パタパタと走る音が聞こえて、
すぐに視界に夕鈴が見えた。
とても興奮した様子で走ってきて、僕のところに着いたころには息はすっかりあがっていた。
「どうしたの?」
「あの、さっき李順さんに料理長とお話してもらって、
下準備とかにかぶらなければいつでも使っていいよって言われました!」
早口に夕鈴に言われて、僕は一瞬なんのことだか分からなかった。
「?」
「台所です。しかも余った食材使っていいって」
「ああ」
息抜きに使うってことだろうか。
「ふふ、これでいつでも、陛下が好きなときに温かいもの作れます!」
「…ありがとう」
「みんな優しいからよかったです」
なんで夕鈴は、僕の予想できないことばかり言うのかな。
処理が追いつかないみたいに、めまいがしそうになった。
ここにいる人間を、
優しいなんて形容するのは君ぐらいだろう。
同じ場所に住んで、
同じ人間を見て、
同じものに触れていても、
夕鈴の口から話を聞くと、全く別の世界に思えてくる。
僕にとっては灰色で、訳のわからないもやに覆われているけれど、
君にはどんな風に見えているんだろう。
この鎖みたいに重い空気も、
君はそんな風に感じはしないのか。
「あ」
ふと夕鈴が外に目を向けた。
あの鳥が飛んでいた。
僕のところにいた鳥は小さかったから、
あの大きさならもう成鳥だろう。
「元気に飛んでいますね」
「そうだね」
今日は雲がなくて、空は真っ青だった。
それを背景に夕鈴の横顔を見つめる。
青くて広い空は、君にとても似合う。
「ねえ夕鈴」
「なんですか」
「この前、鳥を飼っていたって言ったよね」
「ああ、怪我を治してあげたんですよね」
「そう。あの鳥、怪我が治ったらすぐ飛んでいっちゃったんだ。
今日みたいに天気の良い日だよ」
こういう話をするときに、
もう僕には悲しいとかそういう気持ちはなくて、
ずっと昔のことだからどうでもいいのだけど、
なぜか夕鈴に言ってしまう。
夕鈴と目が合った。
「へえ、そんなに元気になったんですか!
きっと元気にしてくれてありがとうって伝えたかったんでしょうね」
ああ、だめだ。
別になにかを言って欲しくてこんなことを話したわけではないのに、
夕鈴はいつも、
僕の予想できないことばかり言うんだ。
夕鈴は、自分のことみたいに嬉しそうに笑った。
君に言われると、
本当にそんな気がしてくるのが不思議なところだ。
僕は僕の目にうつるものしか見えないけれど、
君がこうして教えてくれるなら、
僕も
少し鮮やかな世界を、楽しめるだろうか。
ずっと先まで、
君がここでそうして何にも縛られずに、
自由に笑ってくれたら、いいなと思う。

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このコメントは管理人のみ閲覧できます
花梨さんへ
こんにちは。
ありがとうございます。
深夜12時から2時にかけて勢いで書いた話なので、
いつもより余計個人的な趣味が入っている気がしますが、
楽しんでいただけてよかったです。
更新滞らないようにがんばります!
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花梨さんへ
忙しいかと思いきや意外と夜は自由です←
何度でも遊びに来ていただけたら嬉しいです!
お話あげたときいつも自信がないので励まされますv
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secret


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