スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【46話ネタ】静かな朝の夢の続きを
登場人物 陛下、夕鈴
カップリング 陛下x夕鈴

・陛下視点のじめじめした話です

・ネタバレというか、
46話読まないと意味が分からないかもしれないです

昨日表記し忘れてしまいました。申し訳ありません。





あたりは花で溢れていて、
どんな香りか知っているのに、それを今感じることはできない。
その中心で笑っているのは確かに彼女と自分自身だが、
僕はそれを遠くから見ている。
夕鈴の顔は見えないけれど、僕は彼女が幸せだと分かる。
二人はとても幸せそうで、
夕鈴の隣に立っている僕は、彼女の髪に触れて、風で乱れたところを直した。
風が吹けば花が落ちるが、香りはしてこない。
その香りを思い出そうとすると、
もっとずっと前の、ぼんやりとした記憶の中にある、古い空気がにおってきた。


目を開けたときにはまだ僕は自分が外にいると思っていた。
しばらくぼんやりした頭で天井を眺めてから、
天井があるからここは外でないということが分かった。
ゆっくり体を起こすと、意識がはっきりとしてくる。
外を見ればまだ少し起床には早すぎると分かったが、
あの香りを思い出そうと思って外へ出た。



<静かな朝の夢の続きを>




この前夕鈴と一緒に歩いたときより、
周りを注意深く見ていくと、見覚えのある木や庭の造りが目に留まる。
あの頃僕は自分がどこを歩いているかなんて意識していなかったけれど、
このあたりはかなり頻繁に訪れていたような気がする。
音から遠ざかるように、
何も考えずに歩いて疲れたら適当な地面に座っていた。
今座ってみると、時間帯のせいか湿っている。
そのまま横になってみる。
幼い頃も、人や、雑音から逃げるように、
一人でこうして土に身を預けるようにした。
朝の、まだ日もあたらず冷たい土から伝わるわずかな振動に安心する。
このまま目をつむって、
またあの夢の中に戻れたらいいのに、と願ってみるが、
もう眠気は戻ってこない。
幸せそうだな、と思ったことは覚えているのに、
幸せな夕鈴がどんな顔をしていたかは思い出すことができない。
どんな感じで笑っていたのだっけ。
「陛下?」
急に目の前が薄暗くなったかと思うと、
突然上から呼ばれた。
いつもならこれほど近くにいればすぐに気配に気が付くというのに、
この至近距離でなにも感じなかったなんて
気が緩んでいるのだろうか。
「夕鈴…どうしたの?早起きだね」
僕は何度か瞬きして、顔の筋肉をほぐすようにしてから微笑んだ。
先ほどまでの顔があまり穏やかだったとは思えなくて、
少し表情を動かさなければ不自然になってしまいそうだった。
「そうなんです。
少し早く目が覚めてしまって、せっかくだから、
また香り袋を作ろうと思って来たんですけど…」
夕鈴は何か伺うような、戸惑った視線をこちらに向けている。
きっとこの前僕がした小さい頃の話を思い出して、
気遣おうとしてくれているのだろうけれど、そんな顔は必要ない。
もうどうでもいい昔のことであるし、
今ここにいるのだって、特別な理由なんてない。
「僕も早く起きすぎちゃったんだ。
ここに散歩に来たら気持ちいいと思ったんだけど、気が合うね」
「…そうですね」
夕鈴は少し間をあけてから笑った。
彼女は嘘をつくのがとても下手だから、
納得してなかったり、まだ言い足りなさそうなときはすぐ分かる。
だからと言って何も言ってきたりはしないのだけれど。
僕はそれに気がつくけれど、知らないふりをする。
それでいつもうまくいくから。

ふわりと風が吹いて、
夕鈴の髪が舞った。
周りの花から香りが移ったのか、
甘い香りが広がる。
まだ微妙な顔の夕鈴を見て
あまり上手に言ってあげることができなかったなあと反省しながら、
何もなかったように彼女を抱き寄せた。
そんな顔をしないで。
「陛下?」
「これ以上甘い香りで、私を誘わないでくれ」
「え?!」
腕の中で固まって、
なにか独り言を(何で今演技…とかなんとか)ぶつぶつ言いながら耐えている夕鈴がおもしろくて、
ついつい言ってしまいそうになる。
演技じゃないよ。
こうして手を伸ばしたくなるような、
そういう表情を、君がしたから。





*





「あまり優しいのも、考えものだと思うんだよね」
ぽつり、と呟くと李順はいつもの不愉快そうな顔になった。
「なんのことですか」
「およめさんの話」
分かっていたけれど聞きたくなかった、という気持ちを微塵も隠さず、
李順は盛大なため息をついて僕を無視して書簡をまとめた。
「無視か」
「うまい返答が思いつきませんでしたので」
しれっとした顔で李順はそのまま出て行った。
だって本当に考えものじゃないか、と思う。
夕鈴は僕を女たらしだって誤解して言うけれど、
夕鈴のほうがよっぽどたちが悪い。
警戒していたかと思ったら、
突然身を預けてきたり、
仕事だからという理由だけで、
僕のことを真面目に心配してくるのだから。
僕は時々彼女が誰にでも優しいのを忘れて、
そのまま抱きしめていたくなる。
うっかり手を伸ばせば逃げ去って、
気を付けていると急に腕の中に入ってきて、
そうして人の心を揺さぶったそのまま、
彼女は誰にでも微笑む。
彼女の優しさが、
特別に向けられたものではないと知っているから、
素直に受け取れないのだろうか。
最初はただ心地よかっただけなのに、
知らず知らずのうちに見苦しくも独占したくなってくる。

このままではいられないなんて、
人から言われなくたって分かっていることだ。
いつか出る答えが
僕の望まない答えになるのなら、
それから目を逸らすのはそんなに悪いことだろうか。
彼女が誰か違う人の隣で笑う未来を思うなら、
まだ何も考えたくはない。








*

ほら、やっぱり。

後宮にいるときは、分からないのに、
一歩外に出れば僕は見たくもない夕鈴の笑顔を見る。
ふわりふわりと誰にでも笑う。
「妃よ」
声をかけると、
夕鈴はすぐに振り向いて、
少し首をかしげるように、控えめに笑った。
「いかがされましたか、陛下」
「外から君の小鳥のように可愛らしい声が聞こえたからな、
捕まえにきた」
「まあ何をおっしゃっているのかしら」
演技、演技と暗示のように繰り返す夕鈴は、
今だって演技だと信じているのだろう。
そう分かっているから、
君が勝手に勘違いしてくれるから、
僕は本音を隠さずに言える。
「連れて行っても構わぬな」
返事は聞かないで、
そのまま夕鈴を抱き上げた。
「え?!」
まだ周りに人がいるから、
あまり大声は出さないけれど、
夕鈴はすっかり固まって、
それから地面におろすまで一言も喋らなかった。




「…?どうしたんです、陛下」
外に出て、だれもいない日向に夕鈴を下ろして、自分も座る。
「ちょっと休憩」
「もう、李順さんに怒られますよ」
そんなことを言いながらも、
僕が横になると夕鈴も一緒に地面に横になってくれた。
こんなに近くに座っていて、
一緒に過ごしているのに、
いつか僕の隣に並んだ彼女の笑顔を想像できないのは
僕の想像力の貧しさから来るものなのか。
次の桂花が咲くころに、
夕鈴はどんな顔をしているのだろう。

隣に座る夕鈴を見ると、
ぼんやりと上を見て、目を瞑っている。
風が彼女の髪を舞い上がらせて、
すとんと落ちたときに夕鈴と目が合った。

「幸せですねえ」

え?
僕は一瞬考えが見透かされたのかと思ったけれど、
そんなわけがない。

「幸せ?」

「はいっ」

その顔を、見たことがあるのは僕だけだといいな、と思う。

さすがに、
夕鈴は僕と一緒にいるから幸せだなんて勘違いはできなくて、

きっと天気がいいからとか、
外に座ってきれいな景色を見ながらのんびりしているからとか、
そういうことだろうと思うのだけど、

でもその一言だけで僕は考えていたことが全部どうでもよくなって、
あと少しこのままで座っていられたら僕だって幸せだと思ってしまうだろうから、

君はすごいよね。

太陽がもう少し傾くまで、こうして座っていたいと思う。
まだ答えは出せないけれど、
あの夢の、少し明るい続きを想像できそうな気がして。


ーーー

(2013.6.2)

とある方にリクエストもらって書き始めたけどなんか気に入らないので書き直すとは思うのですが…
貧乏性だからとりあえずアップ。

スポンサーサイト
 
コメントの投稿
secret


トラックバック URL
http://osakanaya3.blog.fc2.com/tb.php/93-53bb8a52

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。