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41話ネタバレ話
登場人物 陛下、夕鈴
カップリング 陛下x夕鈴

41話ネタバレです!!
・さて、来月号が出るまで今後のパターンをいろいろ妄想するとしますか…ね!
41話

陛下視点と
夕鈴視点で


ガタン、と大きな音が耳に響く。
随分大きな音だとは分かるのだけれど、
なぜか遠くのほうで響いているだけで、
耳に振動は伝わらない。
目の前が一瞬真っ白になり、
次に真っ赤な顔の夕鈴が視界に入った。
その瞬間僕の頭の中は計算でいっぱいになった。
この後の夕鈴の行動パターンをいくつも考えては、
それに対する一番正しい対応を想像して、
消して、やりなおす。
夕鈴は口を押さえて、大きな瞳で僕を見つめている。
もう叔母はいなくなったし、
叫んでも、泣いても、怒っても、何をしても受け止める準備はできている。
無理して普通にしようとして、
ギグシャクと不思議な行動をするところももうイメージトレーニングが終わっているので、
笑うなどというヘマはしないはずだ。
僕は夕鈴を安心させようと思ったのか、
もしくは自分を落ち着かせようと思ったのか、
どちらか分からないけれどまずは微笑んだ。
いつもと変わらない表情を作っておくのは、
パニックの相手と対面するときに大切なことだ。
僕自身も少なからず動揺はしているけれど、
これは今起こったことに対してではなくて、
夕鈴が何を言ったりしたりするかが予想外のことになるかもしれないからだ。
夕鈴の顔は赤から青になった。
「大丈夫?」
「…はい」
「……」
夕鈴は黙って、下を向いた。
「すみません」
搾り出すような声はほとんど聞こえなかったけれど、
なんとか言葉が理解できた。
「ううん。こっちこそちゃんと支えられなくてごめんね」
「いえ、」
沈黙になった。
明るく慰めるべきなのか、
そもそも今のは慰めが必要なくらい夕鈴にとって嫌なことだったのか、
なにもなかったようにするべきなのか、
何が正解なのかすぐには判断できなかった。
もごもごと迷って何も言えずにいると、
先に夕鈴が口を開いた。
「あの、陛下、今の、事故なので!」
「え?」
突然勢いよく顔をあげたかと思うと、
夕鈴は仮面のように笑顔を作ってそう言った。
「事故なので、なにもなかったので、忘れてください!」
そのまま僕の返事も聞かずに、夕鈴は立ち上がって、
後宮へ戻ろうとする。
「ちょっと待って」
「なんですか」
反射的に止めてしまったけれど、
これはこのまま返したほうがよかったのだろうか。
「えーと」
特に言うこともないのに先に手を出してしまったのは失敗だった。
夕鈴の顔は無表情に近く、
僕はますます何を言ったらいいか分からなくなった。
「私が落ち着いていなかったからバランスを崩してしまったことについては、
本当に申し訳ありませんでした。
しかもそれに陛下を巻き込むなんて、大変なことをしたと思っています」
無表情な上早口で繰り出される謝罪というのはなかなか迫力があった。
しかしこんなところで引き下がることはない。
このまま夕鈴を行かせてしまったら、
夕鈴はまた一人でいろんなことを考えて、
泣いたり怒ったりして、
僕が何を考えているかなんて無視してしまうのだろう。
一人でぐるぐる考えて、
一欠片もそれを分けてくれないのは夕鈴の悪い癖だ。
「いや、僕がいいたいのはそのことじゃなくて…」
「そのあとのことは、もうなかったことにしてください!
事故です。事故なんです。気にすることじゃないんです!」
事故、事故と繰り返す夕鈴の顔がだんだんゆがんでくる。
「気にしてないなら、なんでそんな顔するの?」
逃げようとする夕鈴の肩を抑える。
着物越しではない夕鈴の肌は熱かった。
思ったよりも細く、もしかしたら夕鈴は着太りするタイプなのかと思う。
その肩が震える。
夕鈴の瞳も揺れて見える。
泣かせたいわけではなけれど、
夕鈴は本当によく泣く。
泣く理由は教えてくれないのに、涙だけはよく見せる。
ずるいと思いながら、結局僕が言うこともやることも、
ますます夕鈴を困らせてしまうことが多い。
今回もそうだったようで、
僕が口を開くたびに、夕鈴の目から涙が落ちる。
すぐにそれを隠すように下を向いた。
「夕鈴?」
これは後から言われたことだけれど、
僕は自分が夕鈴の名前を呼ぶたびに追い詰めてしまっているなんて知らなくて、
何度も呼んでしまう。
「夕鈴」
もう一度呼ぶと、夕鈴は下を向いて震えていたのに、
急に開き直ったような表情で僕をにらみつけた。
「…陛下にとっては、なんでもないことかもしれません。
でも、
私にとっては初めてのことだから、
事故だとでも思わないと、やってられないんです!ほっといてください!」
なぜ怒られなければいけないのか全く分からない。
でも夕鈴は怒っている。
僕は一言もなんでもないなんて言ってないのに、
また夕鈴は僕のことを勝手に決め付けている。
だから一人で考えるのはやめてほしいのに。
「そんなに嫌だったの?」
夕鈴は信じられないという顔をした。
「嫌とかそういう問題じゃないんです」
「じゃあなんで?少しあたっただけだよ」
とうとう夕鈴は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「その少しが問題なんです!」
たまたまバランスが崩れて、
たまたま転んで、
ちょうどぶつかったのが唇だった(本当に唇だったのかも分からない)。
たったそれだけを初めてに入れてしまうなんて、
もったいない。
あんなのでは、
僕は夕鈴との口付けがどんな感触だったのか全く覚えてないし、
味だって分からなかった。
「あんなの初めてにいれないで」
「なんですかそれ!もう陛下は黙っててください。
陛下にとっては些細なことでも、
他の人にとっては大問題なときもあるんです」
心外だ。
「僕は些細なことだなんて言ってないよ。
ただ、あれが僕と夕鈴の初めてじゃ嫌だなって思っただけ」
夕鈴の勢いにつられていくように、
僕はつらつらと喋って、
そしてそれを後悔した。
夕鈴はポカンと口をあけている。
「え?」
まるで次があるような言い方をしてしまった。
未来の約束なんてしていけないのに。
保証のできないことは、口にしてはいけない。
夕鈴と僕はお互い腹の探りあいをするみたいに、
いつもお互いの出方を見ながら距離を取り合っている。
近づき過ぎないように、でも傷つけないように。
なにかの勝負をするかのように、
僕は夕鈴がずっと今のまま、
何も変わらず近くにいてくれたらいいと思っていて、
夕鈴が何を考えているかは知らないけれど、
夕鈴も同じようなことを考えていると思っていた。
だって夕鈴も、僕に隠し事ばかりして、
そのくせ隣にいるのだから。
同じじゃないのかな。
でも今、
夕鈴の瞳が湖みたいに揺れているのを見ていると、
そんなことはどうでもいい気がしてきた。
僕はとっくに夕鈴が好きだったし、
約束なんてなくたって、
来年も次も一緒にいることを、
どこかで当たり前みたいに思っているのだから。
「だって夕鈴、もうどんなだったか覚えてないでしょ。
初めては忘れてほしくないから。
やりなおしていい?」
そのあと夕鈴がどんな顔をしていたか、
近すぎて見えなかった。


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まちがえちゃ
ダメなんだから
演技なんだから

距離を
境界線を

ちゃんとしなきゃ
ちゃんとしなきゃ
しっかりしなきゃ…!

外の風が肩のあたって、
ひんやり冷たかった。
全然動きやすくないし、
そのせいで足を滑らすし、
髪飾りも引っかかるし、
こんな格好は二度としなくない。
少しでも、陛下の前で着飾って、
照れていた自分が恥ずかしい。
陛下にとってはなんでもないことで、
私がどんな格好でいようが、
何をしようが、
どうでもいいんだって何回も自分に言っているのに、
いつまでも私はそれを理解できないみたい。

ガタン、と大きな音が耳に響く。
勢いがよくてほとんど何がなんだか分からなかったけど、
唇のあたりに何かがあたったことは確かだった。
口を押さえて、
目の前の陛下を見つめる。
目をそらすことができなくて、
陛下の驚いた顔をずっと見てしまう。
何度も合言葉のように、
しっかり距離を考えなくちゃと頭の中で反芻していたはずなのに、
少なくとも物理的には私はしっかり失敗していた。
近づかないようにとがんばってきたのに、
たった一度の失敗で、
取り返しのつかないことになった。
言い訳は全く思い浮かばない。
とにかく謝らなくては、と思うけれど言葉が出てこない。
そんな私の様子を見て、
陛下がいつものように微笑む。
「大丈夫?」
「…はい」
「……」
なんとか返事をするといたたまれなくなってすぐに下を向いてしまった。
「すみません」
もっと大きな声で謝らなくてはいけないのに、
私の声はかすれてかっこ悪かった。
「ううん。こっちこそちゃんと支えられなくてごめんね」
「いえ、」
こんなときにも気を使わせてしまって本当に情けない。
私はまだ頭の中がごちゃごちゃで、
何を言ったらいいのかきちんと整理もできない。
陛下は私を気遣うような表情をしている。
いつだって私ばかりが慌てて、パニックになって、
迷惑をかけている。
少なくとも陛下に気を使ってもらうのはやめてもらいたい。
今すぐこの場を立ち去りたい。
寝台に伏して、何もなかったことだと思って、
夢を見たい。
忘れたい。
なかったことにしたい。
こんな、
私の心臓ばかりがとても速く、うるさい。
哀れむような陛下の視線が、嫌だ。
「あの、陛下、今の、事故なので!」
「え?」
政務室で鍛えた笑顔を作った。
「事故なので、なにもなかったので、忘れてください!」
走り出したい気持ちを抑えて、
私は後宮に足を向けた。
このまま笑顔でいれば、
なんとか感情を抑えていられそうだった。
「ちょっと待って」
「なんですか」
陛下に引き止められて、
無視はできずに足を止める。
陛下に限って怒ったりはしないかもしれないけれど、
クビにするなら李順さんから言って欲しいし、
もしこれ以上気をつかって私を惨めにさせるなら、
そんな優しさは本当にやめてほしい。
「えーと」
陛下は何を言うでもない。
やっぱり私に気を使っているらしい。
陛下はいつも優しいけれど、
陛下に恋をしている人間がいることは絶対気がつかないし、
気がついてもその扱いはとてもひどい。
こんな人を好きになった私が悪いのだけれど、
好きに理由なんてないから仕方がない。
ひとまずこの場を逃げ去って、
私は一人で勝手に泣いたり叫んだりしたかった。
「私が落ち着いていなかったからバランスを崩してしまったことについては、
本当に申し訳ありませんでした。
しかもそれに陛下を巻き込むなんて、大変なことをしたと思っています」
「いや、僕がいいたいのはそのことじゃなくて…」
「そのあとのことは、もうなかったことにしてください!
事故です。事故なんです。気にすることじゃないんです!」
陛下は私の気持ちは絶対受け止めてくれないくせに、
それを掘り起こそうとする。
「気にしてないなら、なんでそんな顔するの?」
陛下の手が私の肩に当たる。
外の風で冷たくなってしまった肩が、
そこだけとても熱い。
陛下と視線が合うけれど、何を考えているか分からない。
私は逃げるように下を向いた。
「夕鈴?」
陛下が名前を呼ぶたびに、
私は返事をしなくてはいけなくて、
なにか言わなくてはいけなくて、
そのたびに言えない言葉がたくさん浮かんで、
どんどんたまって破裂するような気さえしてくる。
「夕鈴」
そんなに知りたいなら言うわよ!
迷惑にしかならないから、いつも黙っているのに。
「…陛下にとっては、なんでもないことかもしれません。
でも、私にとっては初めてのことだから、
事故だとでも思わないと、やってられないんです!ほっといてください!」
一気に怒鳴りながら叫ぶと、
陛下はポカンとした顔をして見当違いなことを言った。
「そんなに嫌だったの?」
「嫌とかそういう問題じゃないんです」
嫌なわけがない。
嫌なのではなくて、ほうっておいてほしいだけだ。
好きな人と事故でも口付けしてしまったことは、
恋をする人間にとっては大問題なのだ。
それが分からない陛下は、
黙って見過ごしてくれるのが一番の優しさだということが、
全く分からないらしい。
「じゃあなんで?少しあたっただけだよ」
少しあたっただけ?
私は自分の体温が一気にあがるのが分かった。
陛下にとっては少しあたっただけであっても、
私にとってはれっきとした初めての口付けだ。
「その少しが問題なんです!」
「あんなの初めてにいれないで」
もう陛下は何を言っているのか分からない。
私の初めては私が決める。
陛下なんてもう二度と私にさわることもないくせに、
好き勝手なことばかり言って意味が分からなかった。
「なんですかそれ!もう陛下は黙っててください。
陛下にとっては些細なことでも、
他の人にとっては大問題なときもあるんです」
もう悲しいのだから、怒りたいのだか、自分の感情さえもよくわからなかった。
陛下は少しムッとした顔をしたけれど、
私はもう謝る気なんておこらなかった。
何にムッとしているかだってわからない。
「僕は些細なことだなんて言ってないよ。
ただ、あれが僕と夕鈴の初めてじゃ嫌だなって思っただけ」
「え?」
「だって夕鈴、もうどんなだったか覚えてないでしょ。
初めては忘れてほしくないから。
やりなおしていい?」
え?え?と頭の中は疑問視でいっぱいになる。
陛下は質問をしたはずなのに、
私の答えは待ってくれないし、
それどころか私が陛下が何を言っているのかちゃんと理解する前に、
目の前がいっぱいになって、
息もできなくなった。
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