スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
茉莉花
■登場人物 方淵、紅珠、水月
■カップリング 方淵x紅珠

・陛下x夕鈴を書くつもりで筆をとったらなぜか方淵x紅珠になってましたがこのふたりかわいいですよね!

つづきからどうぞ

―――


曲の終わりの音で、すべてが決まるといっても過言ではない。
紅珠は丁寧に弦を鳴らして、
その響きが空気に混じるのを聞いた。
空気の揺れがすっと消えて、一息をつく。
「氾水月」
できがどうであったかと兄に尋ねようと顔をあげたところで、
聞きなれない声に邪魔をされた。
この屋敷の主である兄を、氾水月などと呼び捨てにする人間など、
いったい誰であろうか。
振り向くと、
この場所にはいないはずの、柳家の次男が立っていた。
「貴様、人を呼びつけておきながら何をしている。
半刻もここで待っていたがいつ終わるのだ。いいかげんにしろ。
用がないなら帰らせろ」
「用はあるよ。それに、いい演奏だっただろう」
謝りもしないで、水月は微笑んだ。
「そういう問題ではない!」
「まあまあ、そんなに怒らないで。せっかくの休日なのだから。
お茶を持ってくるからそのあたりにいてよ」
人を招いておいてこの扱いはいかがなものか。
我が兄ながら随分のんきな物言いにはらはらしつつ、
紅珠は半刻も待って、またも待たされている方淵に目を向けた。
柳家の次男ということと、後宮で妃である夕鈴から話を聞くこともあって、
紅珠はときおり方淵の様子を耳にする。
しかしそうして話に聞くよりも、
紅珠の私邸に遊びに来た夕鈴に伝達を持ってきたり、
兄に呼ばれて今日のようにたまたま姿を見たときの印象のほうがずっと強い。
姿勢のよい立ち姿と、まっすぐとした視線の強さが、
紅珠には珍しく思えた。
「申し訳ございません。いらっしゃっていることにも気がつかないで」
紅珠が謝ると、方淵は首を振った。
「貴女は関係ない」
関係ない、という単語があまりに冷たくて、紅珠は思わず心臓がとまるような思いがした。
そんなことを紅珠にいうような人には今まで出会ったことがない。
紅珠が傷ついたことに気がついたのか、
方淵は少し訂正をいれることにした。
「貴女に責任はないという意味だ。
呼び出したのは貴女の兄であるし、
私が来たことに気づいたくせに無視したからな」
廊下から顔をのぞかせたとき、
間違いなく水月とは目が合っていた。
まだ曲が続いていたので何も言わなかったし、
聞き入っていたのは確かだ。
「…いつから弾いている」
「え?」
なんの話なのか、紅珠にはすぐに分からなかったが、
方淵の視線が楽器に向いていることに気づいて答えた。
「あまり覚えておりませんわ。とても幼いころからです。
水月兄様が弾いているのを聞いていて、
知らぬ間に。
まだまだ兄様のようにはいきませんけれど、とても好きですの」
「そうか」
方淵はおもむろに紅珠の横に立った。
紅珠は少し場所をずれようか迷ったが、
そのまま座っていることにした。
「少し触れてもいいか」
突然聞かれて、そういえば琴の話をしていたと思い起こし、
紅珠は小さく頷いた。
「お弾きになるのですか」
兄の水月は紅珠に仕事の話をすることはないが、
ときたま練習の最中に、
方淵が音楽を分かってない、とぽつりともらすことがあった。
宴が終わってからはそんなことも言わないが、
兄が珍しく他人のことを話すものだから、よく印象に残っている。
「昔だ」
昔というほど年もとっていないだろうにそんな言葉を使うのは、
きっとずっと前のことだからだろう。
方淵の指が弦に触れる。
紅珠ほど滑らかには動かないが、
なんの歌かはすぐに分かった。
ぽつりぽつりとつながれる歌に合わせて、
紅珠は口を開いた。
だれでも知っている民謡だ。
紅珠の透明な声が響く。
ふと音がとまった。
「…すまない。続きは忘れた」
「では続きは私が」
とまったところから、紅珠の指が続きを奏でる。
伴奏つきで、慣れた手つきで弦がはじかれる。
そして歌の続きの歌詞を口にした。
三番目の歌詞にかかかると、隣に立つ方淵の小さな声が聞こえた。
おせじにもあまり上手だとは言えないが、
紅珠は方淵に視線を向けて、微笑む。
方淵は気まずそうに顔をそらしたが、
歌はやめなかった。

パチパチパチ、と軽い音が聞こえて、
二人は一緒に振り向いた。
方淵にしてみれば胡散臭い笑顔をした水月が立っていて、
手に茶具一式と、菓子をのせた盆があった。
自分を無視したときと同じように、
ずっと見ていて今の瞬間をわざと狙ったに決まっている。
「そろそろ休憩にしようか、紅珠は今日がんばったからね」
「…貴様、用というのはどうした」
「ああ少し渡すものがあるだけだから」
「ならば従者をよこせ」
「大事なものだから、人には任せられなくて」
何を言っても適当に流されるだけだろうからと方淵は黙ることにした。
後で家に帰ったら藁でもなんでも切り刻んでやろう。


―――

もちろんちゃんと用事はあったんですよ。

(2012.12.03)
スポンサーサイト
 
こんにちは(^^)
ほんわかラブな紅珠&方淵ステキです///
良いですね~この距離感!
これから恋が芽生えるかも…なこの距感じ!好きです!
ごちそうさまでした~♪
バニーガールさんへ
バニーガールさんこんにちは!
いつもコメントありがとうございます^^
元気がでます!

片想い未満な微妙な関係私も大好きなんです!
仲間ですね~(笑)
本誌で一言でも会話してくれたらいいのに!
おばさま編が終わったらまた紅珠に出てきて欲しいです。
コメントの投稿
secret


トラックバック URL
http://osakanaya3.blog.fc2.com/tb.php/82-db2edabc

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。