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つきがきれいですね
登場人物 方淵、紅珠
カップリング 方淵→←紅珠(無自覚)

・一応知り合いなんだけど、まだ仲良くないかんじ
・超絶短いです

つづきからどうぞ

「この時間に外へでていいのか」
方淵は目の前にいる人物に戸惑ったものの、
屋敷の主なんだからいて当たり前だと頭を整理した。
氾水月に急ぎの用があっていやいや屋敷へ向かったのだが、
そこにはいなくて、
妹である氾紅珠の私邸へ出向いていると聞いたものだから、
仕方がなくそこを訪れた。
女性の屋敷に日が落ちてから訪れるなどしたくはない。
しかし急ぎだから仕方がないし、
そもそも自分の家にいない水月がとにかく悪い。
言い訳はいくつも考えたので、
実際門をたたくときにはそこまで緊張をしていたわけではないのだが、
出てきたのが屋敷の主その人だったものだから、
口も利けなくなってしまった。
気の利いた挨拶もないまま、
やっと口から出た言葉といえば、
野暮な質問をした。
紅珠は微笑む。
「どなたがいらっしゃったのか、
侍女に聞きましたの。
大切なお客様ですから、私がお迎えしたくて。
水月兄様に御用ですのね」
方淵の用件は言わなくても伝わっていたようだ。
もちろん方淵が私用で紅珠を尋ねることなどないので、
見当はつくのであろうが。
紅珠はなれた動作で客人を中に招き入れた。
「今日は琴のお稽古をしていて、
ついつい夢中になって遅くなってしまいましたのよ。
私がわがままを言ったのです。
どうか兄様を責めないでくださいませ」
「…用事が済めばそれでいい」
ぶっきらぼうな返事の中に、
紅珠は自分の問いへの肯定的な音をみつけて、
短く笑った。
「奥におりますわ」
庭を横切りながら、
方淵はふと池に目をやった。
水月はよく早退の言い訳に鯉へのエサやりをあげるが、
この池には鯉はいないようだった。
「魚はいないのか」
「小さい金魚がおりますわ。
お魚がお好きなんですの」
「いや」
会話は続かないが、紅珠は気にしないようで、
軽い足取りで先に進んだ。
「今晩は魚より、池に映る月のほうが美しいと思います」
方淵はまた池に目をやる。
ずいぶん広いので、しばらく歩いてもまだ池に沿って歩いていた。
「そうか」
「ええ。
水の中で満月がゆらりと煌いて、吸い込まれそうですわ。
綺麗だとお思いになりませんか」
返事がないので、
紅珠は一度立ち止まって後ろを向いた。
方淵の足取りはほとんど止まるくらいにゆっくりで、
視線は空の月に向けられている。
そして池の月へと移る。
「…貴女の話を聞いていると、そう思えてくるな」
明るい満月が逆光になって、影の落ちた顔の表情はよく見えないが、
微笑んでくれた気がして、
紅珠は自分の顔がほてったように感じた。





つきがきれいですね。
あなたといると。




―――

2012.11.21
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