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登場人物 陛下、夕鈴
カップリング 陛下x夕鈴

・陛下目線
・タイトルで内容がバレバレな気がしますが、夕鈴が風邪引いた話です
・夕鈴→陛下のようで陛下→夕鈴のような、陛下→←夕鈴のような
・暗くない!

続きからどうぞ!



―――あなたの手を、離したくなくて。




「今日は少し、寒いですね」
「じゃあ窓を閉めようか?」
その日は日中もずっと日が照っていて、夜になっても肌寒さはなかった。
少し変だとは思ったのだけど、僕はそのとき気づくことができなかった。
他にもたとえば、いつもなら僕が夜後宮に来ると少し緊張した面持ちでいるのに、
その日はぼんやりと遠くを見ていた。
それに普段僕がなにかしようとすると、夕鈴は全部自分でやるからいい、
と言ってなにもやらせてくれなのだけれど、
その日は僕が窓を閉めた。



翌朝その答えは明らかになった。
朝食の席にも、午後の政務室にも君の姿はなく、
李順に尋ねてみると、疲れているそうですよ、と不親切な説明を受けた。
それ以上追求しても『仕事が終わったら会いにいけますよ』というようなことを、
違う単語を使って言われるだけ。
朝から机の上にたまっていく仕事のせいで抜け出すのも難しくて、
結局僕が夕鈴のもとへ行けたのは夕方になってからだった。
夕鈴の部屋は昨日閉めた窓がそのままになっていて、
こもった空気は僕には熱すぎるくらいだった。
「妃の様子は?」
近くにいた女官に尋ねると、夕鈴は朝からずっと眠ったままらしい。
そのため寝台のすぐ近くに用意されている薬をとっていない。
「わかった。お前たちは下がってよい」
人がいなくなったことを確認して、僕はすぐ夕鈴のもとへ駆け寄った。
いつもの夕鈴なら、寝ているときもいつもの百面相をしながら寝言をつぶやいたり、
おもしろい動きをしたりするのだけど、
今日は少し違う。
少し肌が汗ばんで、頬も赤い。
熱だ。
額に手をあてると思った以上に熱かった。
「夕鈴、気づかなくてごめんね」
今これだけ熱があるのだから、
きっともっと前から疲れがたまっていたんだろう。
君のことを毎日見ているはずなのに、なにも気づけなかったことが恥ずかしい。
寝台の横に用意してあった手巾を手にとって、
額と首元に浮かんだ汗を拭いた。
ずいぶん汗をかいているから、本当は着替えさせたほうがいいのかもしれない。
それはあとで女官にお願いするとして、首元だけ緩めることにした。
苦しそうだった夕鈴の顔が穏やかになって、それはよかったのだけど、
僕は寝ている夕鈴の衿元を勝手に緩めたことを少し後悔した。
普段はきっちり衿を重ね、鎖骨も見せないようにしている夕鈴が、
僕が勝手に衣を着崩してしまったと知ったらすごく怒るんじゃないだろうか。
そんなことを考えながらまた夕鈴の頬に手をあてる。
僕の手はすごく冷たいから、これで少しでも冷えてくれないだろうか。
早く夕鈴の熱が下がってくれるといい。
君の声をまったく聞けないまま今日が終わるなんて寂しいから。
「・・・ん」
しばらく夕鈴の寝顔を見ていると、夕鈴が身じろぎしてそしてゆっくり目を開けた。
「おはよう」
「・・・へーか?」
風邪のせいか寝起きのせいか、大きな瞳が少し濡れている。
「大丈夫?」
「はい・・・これ、陛下の、手ですか?」
夕鈴の細い指が僕の手に触れた。
「そうだよ」
「・・・冷たくて気持ちいい」
夕鈴は目を閉じて、僕の手に頬を摺り寄せた。
普段なら絶対こんなふうに甘えたことをしてこない君が。
「夕鈴、かわいい」
こんな君は見たことがない。
僕は自分の心音が速くなるのを感じながら、重心を前に傾けた。
寝台がきしむ音がして、そんなかすかな音でさえ僕は緊張してしまう。
自分でも風邪を引いたのかもしれない。
体が熱くて、ぼんやりするから。
「陛下」
自分ではないなにかに動かされるように、
僕は夕鈴のほうへと体を傾けていて、僕たちの顔は至近距離にあった。
夕鈴の声で現実に引き戻されて、
僕は自分がなにをしようとしていたか気づいて慌てて体を起こした。
「ゆ、夕鈴・・・」
泣くかな、怒るかな。
僕たちは偽者でも夫婦なのに、僕はこういうときの夕鈴の反応が怖くて仕方ない。
でも今のは演技じゃないんだよ。
君があまりにも愛おしいから、思わず近づきたくなっただけ。
怯えて拒絶しないでほしい。
「わがまま、言ってもいいですか?」
「え?」
夕鈴は僕が想像していた反応はしなかった。
熱があるからなにが起きているか分からないんだろうか。
「なーに?なんでもきくよ」
それでも夕鈴を怖がらせないように、僕はできるかぎり優しく答えた。
わがままなんて単語が、夕鈴の口から聞けると思わなかった。
風邪を引いただけでこんなに違う君が見れるなんて、風邪も悪くないと思ってしまう。
「水飲む?なにか食べたい?」
夕鈴のことだから、呆れるほど小さなことしか願わないんだろう。
君のわがままなら、本当になんだってかなえてあげたいと思うのに。
「あの」
「うん」
「このまま・・・もう少しだけ、ここにいてくれませんか?」
夕鈴の大きな瞳に映った僕は、間抜けな顔をしていた。
「え?」
予想していなかった答えで、僕は自分の顔が熱くなるのを感じた。
「だめ、ですか?」
心配そうな夕鈴の顔。
「だめなわけないよ」
「よかった」
そう言って夕鈴は小さく微笑みを見せて、すぐにまた眠ってしまった。
安心したのか幸せそうに眠る君は子どもみたいで愛らしい。
君の頬に当てられた僕の手を、もう冷たくないのに離さない。
君の細い指のくすぐったさに僕は落ち着かなくて、
思わず夕鈴から顔をそむけた。

これから君が起きるまで、おとなしく座っていられるように。






――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「陛下の手、大きくていいですね」
「そうかな?」
「手が大きいといっぺんにたくさんものを持てますし」
「・・そうだね」
「はい」
「夕鈴の手も2つとも入るよ」
「へ、陛下!ここ人いませんよ!」
「夕鈴の手は小さくてかわいいね」
「へいか・・・!(手握ってもらうの実は好きなんだって、言えない)」



―――――――――――――

(10.11.2011)
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