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現パロ1
登場人物 陛下、夕鈴
カップリング 陛下x夕鈴の予定ですが途中

こちらもリクエストで。

「小学校から大学までの一貫校で高校生夕鈴と大学生陛下のお話はどうでしょう。
高校から入ってきた夕鈴のバイト先のトップが陛下だったという感じで」

というリクエスト内容だったのですが、
ぜんっぜん設定が違ってしまったのでまた書き直すと思われます…;
大学生兼社長で書いていたはずがただの社長になってしまいました。

しぶにあげた漫画の小説版です。
そしてもう少しつづけたいです。

つづきからどうぞ。
―――


制限速度は時速30kmのはずだが、
メーターを見るととうに60kmに届きそうだった。
窓の外にぼんやりと目を向けていた黎翔は、
運転席に座る李順に声をかける。
「李順、スピード落とせ」
「無理ですよ!遅刻します。気乗りしないからって遅れるのは…え?」
ぶつぶつ文句を呟いていた李順の目が見開かれた。
横をさっと振り返ったその一瞬で、
いつのまにか目の前に人が飛び出してきていた。
「くっ…」
急いでハンドルを切る。
運転は下手ではない。
スピードが出ていたとしても、
なんとか死亡事故を免れる程度には道をそらせたはずだった。
ゴン、と嫌な音がして車が止まる。
衝撃はあったがエアバックが飛び出すほどではなく、
これならすぐに戻れそうだと安心した。
先ほどの人物は避けたから怪我はしていないだろうが、
一応様子を聞いておかなくてはならない。
なんとも面倒だった。
朝から出かけるのがさも億劫そうだった社長は、喜んでいるかもしれない。
「社長、大丈夫ですか」
後ろに座っていた黎翔はシートベルトを締めるようにいっておいたから無傷ではあろうが、安全を確認する。
返事がないので後ろを見ると、扉が開いたところだった。
「社長?!」
黎翔はぶつかった車には見向きもせず、
道路の端で口をぽかんと開けている女子高生に目を向けた。
淡い栗色の髪はぼさぼさで、息が切れている様子からすると寝坊したのだろうか。
「すみません!」
『君、大丈夫?』と黎翔が口を開けるまえに、
その女子高生が叫ぶ。
その顔は蒼白で、ちらちらと黎翔の車を見ている。
事故の原因は明らかにこちらの速度超過だから、
彼女が謝る理由はどこにもない。
それにも関わらず頭を下げる彼女はなんだかおかしかった。
「えっと、あの、その…弟にお弁当を届けようと思って、
その、全然わざとではなくて…」
しどろもどろになりながら、黎翔の顔を見て謝る顔がおもしろく、
思わず黎翔の頬がほころぶ。

彼女でも、いいかもしれない。

その笑顔に計算するような様子が一瞬浮かんだが、
すぐに人の良さそうな顔に戻った。
「…じゃあそのお弁当僕に預けて、一緒に来てくれたらなかったことにするよ」
「え?」
すぐに言葉の意味が飲み込めず、
夕鈴はぽかんとしてしまった。
気づいたときには、強い力で腕を引かれて、車の中に引き入れられていた。
「え?!」
バタン、と扉が閉まる音がする。
引っ張られたはずみで鞄は落ちてしまった。
スーツの男は運転席に座っていた人物を追い出して、
慣れた動作でシートベルトを着用する。
夕鈴の持っていたお弁当は、窓越しに眼鏡の人物に渡された。
夕鈴が何もできず、一言も言葉を発せないうつに、
車は発進してしまった。







「あ、あの…」
ちら、と横目で左に座る男性を見る。
左ハンドルということは外車だろうが、
夕鈴にはどこの車なのか全く検討がつかなかった。
ただ背もたれの素材がふわふわとしてすわり心地がよく、
全く揺れもないから、高そうだな、としか思えなかった。
先ほどライトは完全に割れてしまっていたし、外装もへこんで傷もついてしまったようだが、
これからいったい自分はどうなるのだろうか。
「何?」
「わ、私はこれからどこに…」
「実は一つ頼みがあって」
「なんでしょうか」
車の中身を見ると、
ライト一つを直すのにいったいいくらかかるのだろう、と計算したくなってしまう。
外車は部品を日本で製造していない場合、
取り寄せから始まるからかなり高額になると聞いたことがある。
しかしその高額がいったいどれくらいなのか、
夕鈴には全く分からない。
事故の責任は自分にはなくて、
弁償もなにもしなくてはいいということも、
夕鈴は全く知らなかった。
「僕の婚約者になってほしいんだ」
「…は?」
「実はねー、お見合いの申し込みをされているんだけど、
僕はその気が全くなくてね。
一人じゃ怖いから断るの手伝ってくれないかな」
にこ、と笑顔を向けられ、夕鈴も思わず笑顔を返した。
この人の話は全く意味が分からないから、
もしかしたら外国語を話しているのかもしれない。
なにしろ見たこともない外車に乗っている。
そうだ、そうに違いない。
と夕鈴は一人で結論付けた。
「今から行くんだけどね」
「今からですか?!」
あ、返事をしてしまったから外国語ではない。
夕鈴は現実に引き戻されてあせった。
「うん。付き合ってくれる?」
「え、で、でも…私、いきなり言われても…」
「お願い。困ってるんだ。
ここで出会ったのも縁だと思って助けて」
赤信号で車が止まったところで、
黎翔は夕鈴の瞳をじっと見つめた。
夕鈴の体が固まる。
こんなにだれかに見られることなんてあまりない。
しかも相手は超美形だ。
気が弱そうに八の字になった眉が、
夕鈴の心をきゅっと締め付ける。
放っておけない気がした。
こんな怪しい話、信じてはいけないはずなのに。
「今日だけでいいから」
「今日だけですか?」
「うん。今日の相手がとても手ごわくてね、
それだけ手伝ってくれたら今後は迷惑かけないよ。
2時間くらいで終わるから、自給5千円で1万円出すよ。どうかな」
「1万円??!!」
「うん。不満ならもっと出すけど。きちんと縁談をなしにしてくれたらボーナスもつける」
たった2時間で1万円…
本当に怪しすぎる。
夕鈴は目を細くして隣で運転する人物の横顔をながめた。
ずいぶん綺麗な顔をしている。
夕鈴よりは年上だが、中年というわけでもない。
せいぜい二十歳すぎか、二十五にもなっていないように見える。
着ているスーツは夕鈴には全くブランドなどは分からないが、高そう、とはいえる。
時計もキラキラしていて、
ネクタイも父親がつけている安物とは刺繍の糸が違って見えた。
ネクタイピンもよく磨かれていて、
とにかく彼の身に着けているものが全て高そうだった。
なにもかもが怪しい。
「あ、もしかして僕のこと疑ってる?
僕のこと知らないのかな?」
「え?どこかでお会いしましたか」
記憶を探ってみるが、全く見覚えがない。
夕鈴はバイトをいろいろ掛け持ちしているが、
そこのどの客も黎翔ほど身なりのいい客はいない。
「直接話はしてないけど、雇い主の顔くらいは知っていてほしいなあ」
黎翔は少しすねたような顔をした。
「は?」
「とは言っても、実際は僕が直接雇ってるわけじゃないから、
ちょっと理不尽かな」
また車が赤信号で止まる。
少し急になったので、夕鈴は前に倒れそうになった。
腕で体を押さえた。
「え?あの…それはどういう…」
「君のバイト先、白陽グループ本社ビルの食堂でしょ?」
「な、なんで知ってるんですか!!」
「そこうちだから」
「は?」
「うちのグループだから、知ってるだけ」
「うちの…グループ…」
「この前社長交代したんだけど、知らなかった?」
「は、珀…社長…?」
「大正解」
ふにゃり、と笑った顔はとてもとても嬉しそうだった。
「一応これ見ておく?」
黎翔が取り出したのは運転免許証で、
そこに記された名前は間違いなく『珀 黎翔』だった。
「あ、貴方が…冷酷無情、代替わりに伴って役員の半分以上を解雇、
もしくは関連会社にいわゆる左遷、
その他にも従業員の就労環境の大幅改善や業務の見直しをこの1年で魔法のように進め、
株主からは絶大な支持を集めつつも従業員には恐れられ、
睨まれたら3日は出社できないという鬼社長の珀黎翔社長?!」
夕鈴が一気に言い切ると、
黎翔はしばらく唖然としていたが、
そのうち堰を切ったように大笑いした。
「はははっ、さすが食堂のおばちゃんの噂話だね」
明るく笑った顔は、夕鈴が話で聞いていイメージしていた珀社長とはあまりにかけ離れていた。
一瞬だけ黎翔が夕鈴のほうを見て、視線が合う。
気まずいような恥ずかしいような妙な気分で、夕鈴はすぐに顔を逸らした。
とにかく目を合わせてはいけない、と言われていたけれど、
食堂ではたらくおばちゃんたちが意味していたのは、
きっとこういう意味ではなかったはずだ。
一度見てしまったら逃げられない。
あまりに印象的な瞳。
―――はっ、ていうか雇い主の頼みなんて断れないわよね?!
白陽グループ本社の食堂は、
昼休みはもちろん営業しているが、ディナーの時間は雰囲気も変わり立派なレストランになる。
夕鈴は学校が終わってからラストまで週5でシフトに入っている。
学校が近いことや、適当な飲食店よりも自給が高いこともあり、いろいろ便利なのだ。
これをクビになったら、相当痛かった。
そして何より、断って車の修理費を要求されたらたまらない。
一応身分がはっきりしている人ならば、
法外なことはさせられないだろう。
「…わ、分かりました」
「そう、よかった」
黎翔はふっ、と短く笑った。
その顔がなんだか満足げで、
夕鈴はもしかして騙されているのかと思いながら、
頭の中で自分の安全とお金を天秤にかけてうんうん唸った。
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