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登場人物 陛下、夕鈴、李順、水月、方淵
カップリング 陛下x夕鈴

・秋にまつわる短い話の集合体

ふにふにと夕鈴の手を触っているのは、この国の王である。
「夕鈴の手ってやわらかいね」
「…そうですか?」
「うん」
訳もわからずなされるがままになっていた夕鈴だが、
ふと固まった。
(…ん?それってプニプニして脂肪まんさいってこと?
そんなにうれしそうに言うことかー?!
確かに太ったけど…
太ったけどそれはここのお食事のせいではないでしょうか?!
そして貴方が夜に来て一緒にお茶とかお菓子とか食べるせいでしょー!)




「李順さん!」
うう、とうめき声とともに李順に話しかけると、
王の側近は面倒そうに返事をくれた。
「なんですか」
「私痩せたほうがいいでしょうか」
「は?」
あまりに唐突な発言に李順は眼鏡をあげて考えをまとめることにした。
「陛下に太ったって言われたんですけど」
「はぁ…?」
上から下まで夕鈴を眺める。
太った?
「まあ、当初よりふくよかになった気がしなくもないですが…
標準でしょう。
貴女は体型を変える前に歩き方を変えなさい。
なんですかさきほどの廊下を歩くときのガサツな足音!」



「陛下」
「なんだ李順」
自室で簡単な書簡に目を通しつつ、
筆に墨をつける黎翔に話しかける。
「夕鈴殿に太ったとおっしゃったそうではないですか」
「は?」
黎翔はその文章を理解するのに数秒必要とした。
なんの話をしている?
「いえ、彼女の勘違いだとは思いますがね。
一応年頃ですからあまり体型について言及するものではありませんよ。
太って醜くなったら私がなんとかしますから」
李順のあまりのいいように黎翔も思わず反論した。
「ええええ?!僕そんなこと言ってないよ!絶対言ってない!」
「でも夕鈴殿は言われたと思っているみたいですから。
女性には何を言ったかが問題ではないのですよ。
彼女たちが言葉をどうとらえるかが問題なのです」
「はあ…(李順はどこでそんなこと学んだんだろう)」



「はぁ…」
夕鈴は王宮の庭で、橋の上で池を見つめていた。
自分の顔が池に移っている。
プカプカと浮かんでいるのは風で散った紅葉だ。
見事な赤色である。
下を向いたときの顔は五年後の顔をいうから、
ずいぶんむくんで見えた。
「何をしているんだ貴女は!」
後ろから怒鳴るように声をかけられ、
夕鈴は振り向いた。
「へ?」
「また池に落ちたいのか」
立腹した様子の柳方淵が走って向かってくる。
手に書物を抱えているので書庫にでも向かう途中だろうか。
「あ、いえ…池を見ていたのではなくて紅葉を見ていたんですけど…」
「紅葉だと?
そんなくだらないものを見るために
女官もつけずに庭を一人で歩かないでいただきたい」
「まあ、くだらなくなんてありませんわ。
だって、あの方の瞳と同じ色だもの」
そして私のプニプニの手と同じ形だわよ…!と付け足したが、
笑顔がくずれると危ないと思って夕鈴は急いで顔に力をいれた。
「…」
「綺麗だと思いませんか」
少し困惑した顔の方淵が、
最後まで何か言わないと気がすまないかのように口を開いた。
「結構だが、日が沈む前に後宮に戻るように」
「わかってますわ」



「あれ?方淵こんなところで君も休み?」
夕鈴が後宮へ去った後の庭に、別に会いたくもない男が来た。
「貴様と一緒にするな」
ピシャリと答えると、水月の視線が方淵の手元に移る。
方淵は急いで手を後ろへやったが逆に怪しかったかもしれない。
池に入って少し濡れた沓も後ろに下げた。
「えー…。ん、それは何?」
「…貴様には関係ない」
方淵の発言は無視するように、水月は言葉を続ける。
「綺麗な色だね。
この秋の澄んだ風の中で笛を吹けたらどんなにいいことか…。
しかし音は出せないから笛の変わりにその紅葉について詠おうかな」
「くだらないことを言っていないでさっさと戻るぞ」




「ゆーりん?」
「はい?」
夕餉の傍に一緒に座る。
夕鈴は箸をおいた。
「ごはん食べないの?」
「食べてますよ」
「でもあんまり食べてないし…おいしくなかった?」
夕鈴は急いで首を横に振った。
「まさか!すっごくおいしいですよ!
ほらもう一口でこんなに食べちゃうし!」
おいしいのは本当なので、
夕鈴は一番近くにある皿を急いで片付けた。
「あのね夕鈴」
「はひ?」
口をいっぱいのまま返事をしたので、まともにしゃべれなかった。
「僕、昨日夕鈴の手柔らかいって言ったでしょ」
口の中を空にした。
「え、はい」
「あれはね、
僕の手と違って、
暖かくて、柔らかくて、握ってると安心するから好きだなって意味だよ」
「え?」
「夕鈴の手」
紅葉色の瞳が夕鈴を捉える。
心臓がはねた。
(…手、か。そうよね…ちょっとびっくりした)
落ち着こうとして息をつく。
休むまもなく黎翔に手をとられた。
そしてそのまま手の甲に唇を落とされる。
「ふえ」
「君は、自分にもっと自信を持ったほうがいい。
いつだって私の瞳に映る君は何より美しい」
「ちょ、陛下…ごはん食べてるときは他のことしないっ!」
「えー」
慌てすぎて、下町にいるときと同じように怒鳴ってしまった。
しゅん、となった黎翔が、
最後にもう一言加える。
「でもホントだよ」

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