スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
君がいてもいなくても何も変わらない話 1
登場人物 陛下、李順、方淵、水月、浩大
カップリング 陛下x夕鈴(多分

※夕鈴が死んでます
・真面目な雰囲気
・もう少し続くはず

大丈夫な気がする方は続きからどうぞ


陛下、待って。

ちょっと待ってって。
そんなに前に行ったら、オレの仕事なくなっちゃうでショ。
どこいくのさ。
むこうに行くつもりだったわけ。
無理だよ。
だから、待ってって。







それが、反乱軍と呼べるほどの規模であったとは到底言いがたい。
膨大な国民の中で、小さな数の謀反分子が王宮に侵入した。
人数は少ないが計画は長期で組まれていたらしく、
彼らの動きは滑らかだった。
詳しい動機は結局分からない。首謀者がその中にいたのかもさえ不明だ。
顔がつぶれて、四肢もそろわない死体からは、身元を明らかにするのも難しかった。





「ぐっ・・・」
目の前の光がうっとうしい。
そう思って黎翔は身をよじった。
そのとたんに、忘れていたかのように、体の奥から痛みがよみがえる。
どこが痛むかをあげることができない。
全身が焼けるような感覚がする。
薄っすらと目を明けると、見慣れた男が、青白い顔をして立っているのが見えた。
「李、順」
李順の薄く開かれた唇が、震えた。
「・・・陛下」
「まぶしいぞ」
「窓掛を閉じましょうか」
瞳に映る動揺を隠すように、李順は冷静な声を出す。
窓掛は自分で閉めた。
「体が痛い」
「そうでしょうね」
黎翔は自分の体に視線を落とす。
どこもかしこも、包帯で巻かれている。
ところどころに赤や黄色い染みができていた。
「気色悪いな・・・なんだこれは」
「傷が化膿しているようですから仕方ありません」
廊下の方から騒がしい足音が聞こえてきた。
「陛下!!」
黎翔は呼ばれて視線を向ける。
臨時補佐官の柳方淵と、その後ろを氾水月が走っている。
「なんだ、騒がしい」
黎翔が目を細めると、水月が声を出さずに頭を下げた。
「陛下、ただいま陛下が目を覚まされたと聞いて、
居ても立ってもいられず参上した次第でございます」
「私は毎日朝晩起きて寝ているぞ。なんだこの騒ぎは」
方淵と水月に続いて、大臣や宰相、他にも入り口近くで何人もが待機しているのが見えた。
騒がしい声と、足音で頭が痛くなる。
氾大臣が薄い笑顔を浮かべて一歩前に出る。
「恐れ入りますが、陛下は3日ほど一度も目を覚まさず眠っていらっしゃいました。
陛下の側近と医師を除いてはだれも面会も許されず、詳しいことも一切知らされておりませんでした。
そして今日始めて陛下が目を覚まされましたと聞き及んだ次第でございます。
慌しくなる宮中をどうかお許しください」
「・・・」
確認のために李順を一瞥すると、小さく頷かれた。
「それは苦労をかけたな。政務に滞りないか」
柳大臣が即座に答える。
「もちろんでございます。後は御名を頂くのみのものがほとんど」
「なるほど、早速机に向かうのが楽しみなところだ。
お前たちはもう下がれ。3日分の仕事を片付ける。忙しくなるから頼む」
言葉を言い足りないという顔をするものも何人かいたが、
李順に促されると人はいなくなった。
黎翔の全身を覆う包帯を変える医師と、李順だけだ。
「いったい何が起こったのだ」
「まあ、見ての通りですが・・・陛下は全身に矢と刀を受けて傷口が化膿、炎症を起こし、
それに伴う高熱で三日ほど昏睡状態にありました。
記憶にありませんか」
「侵入者があると聞いたところまでは覚えているぞ」
「ええ、王宮に侵入したのは計15人。
その中の6人が陛下のご即位前、宮中で権力を振るっていた家の関係者ですね。
辺境に飛ばされたのが不満だったのかもしれませんが、具体的な動機は不明です」
「捕まえなかったのか」
「・・・陛下、本当に覚えていらっしゃらないのですか」
「庭に出たところから覚えてないな」
「その15人の口を割れなくしたのは貴方です」
「む、それは悪いことをした。
しかし体がうまく動かんな。
署名が必要だと言っていた書簡はすべてこちらに持ってきてくれ」
黎翔が腕に力を入れようとすると、全身の筋肉が固まって抵抗される。
熱のせいか関節も感覚がおかしかった。
「不便だ」
不服そうに黎翔は眉をひそめる。
「その後は少し休め。お前も三日ほど寝ていないような顔をしている」
「・・・大丈夫です。今、書簡をお持ちします」
李順は一礼して、足を出口に向けた。
三日間黎翔の横につきっきりで、ほとんど睡眠も食事も取っていない。
足元がふらつくのは仕方のないことだろう。
頭もぼんやりして、自分が今何を頼まれたかさえ忘れてしまいそうだった。









黎翔は、一日寝台の上に留まることにしたものの、
次の日には政務室に戻ってきた。
もちろん速く歩くことはできないし、長時間の勤務は医師にも止められている。
筆を上げるたびに痛みが走ることにもそろそろ慣れたが、
不愉快なことにはかわりない。
「陛下、南部の塩の生産が減少した原因にについて分析した報告書です」
「そこに置いてくれ」
数々の報告書や法律の改善案、新しい法案、謁見の申し込み、
重罪人の処罰の許可などが山積みになっている。
「陛下、こちらに御名を」
差し出されたものに目を通し、内容を把握してから署名をして返す。
1人帰れば、また次が来る。
今日は筆を休める暇が全くない。
「そうだ。李順、午後の会議は西の運河建設の件だったな。同地区にて堰堤の建設案が出ていたはずだが資料がまとまっているなら連続して持ち出してくれ」
「畏まりました」
李順が返答をして、言葉を続けようと口を開きかけたところで、
違う官吏が陛下の前へ出てきた。
「陛下、北の辺境にて、遊牧民が不審な動きをしていると報告が入っております。詳しい調査を現地のものに任せてはありますが、中央からも人を送ったほうがよろしいかと存じます」
「そうだな。それが理想だが。
終盤にかかった企画から数人引き抜けないか各責任者に告げておけ」
「御意」
「・・・はぁ、全く、気の休まる隙がない」
目の前で慌しく横切っていく官吏たちを見ながら、黎翔はため息を漏らす。
「いつものことですけれど」
「それは分かっているが」
怒鳴り声が聞こえて、黎翔は政務室のすみに目をやった。
若い官吏が2人、向き合って巻物を広げている。
「柳方淵、氾水月。いつまで楽しく話しているつもりか。
結論は出たのか」
声をかけると、黒い髪が跳ねた。
「は、すぐに報告に参ります」
「意見がまとまってからにしてくれ」
頭を下げた柳方淵が、また氾水月に向かって眉間に皺を寄せながら意見を並べる。
水月も頷きながら、案を出しているようだから、しばらくすれば完成した企画案が出てくるだろう。
「あの2人、少しは協調性が身についたようだな」
「そうですね。陛下・・・」
李順が言葉を発するよりも、黎翔が先立った。
「李順、あの椅子は必要ないのではないか?片付けさせろ」
黎翔が指差す先には、政務室の片隅に置かれた小さな椅子がある。
その上には、今、薄い紅色の花が飾られていた。
「陛下、あの椅子は」
「花なども、この政務室には必要ないだろう」









なにかがおかしい、とは感づいていたはずだった。
黎翔は、目が覚めてからも、一度も妃のことを口に出さない。
そしてだれもそのことを話題にできない。
王宮に侵入者があったその日に、毒矢に射抜かれて命を落とした妃の名など、
もうだれの口からも出てこない。



「李順殿」
「はい」
後ろから声をかけられた。振り向くと、先ほど怒鳴りあっていた、
というよりは1人だけ怒鳴りながら会話をしていた方淵と、
それを聞いていた水月だ。
「なにか」
2人が聞きたいことは分かっているが、李順はそれを自らは言わない。
「政務室の椅子はどちらへ?」
なにも隠さず、方淵が尋ねる。
李順の眉が少しひそんだ。
この男が遠まわしにものを言えるとは思わないが、あまりにも直接的だろう。
「後宮です。必要ないと陛下がおっしゃられたからです。実際その通りです」
無表情のまま答えると、2人とも少し顔をゆがめた。
不愉快だっただろうか。
「・・・お妃様は、今どちらに?」
「それは貴方方には関係のないことですよ」
「葬儀も行われないとは異例です」
「そんなことはありません。あの方は正妃ではありませんでしたから」
正妃ではない、という言葉は李順自身にも突き刺さった。
彼女は正妃ではなかった。
だから、国の政治は、彼女がいてもいなくても同じように進んでいく。
彼女にはなんの影響力もないはずだから。
消えたところで、力の均衡も変わらない。なにも変わらないはずなのだ。
その変化で傷を負うのは、彼女を思い出す心だけ。
「しかし・・・」
「方淵殿、水月殿、貴方方はなんのためにここにいるのですか。
陛下の手となり足となり、国に安定と平穏をもたらすことが仕事では?」
今にも噛み付くような顔をした方淵と、
冷たい視線を向ける水月。
その2人を交互に見て、李順は自分の声が揺れないようにと願った。
「もういない1人の妃のことなど、お忘れなさい」









――――――――

(12.23.2011)

方淵と水月さんが李順さんのことをなんと呼んでいるかが分からない。
分かる人教えてください・・・。

李順さん、李順殿、李順様・・・どれだ。どれなんだ。
呼び捨てはないと思うんですが、
広辞苑で調べたら様>殿≧さん だと思われるので、中間とってみた。
スポンサーサイト
 
コメントの投稿
secret


トラックバック URL
http://osakanaya3.blog.fc2.com/tb.php/52-3d9b175e

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。