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花占い
登場人物 夕鈴、水月
カップリング? 陛下x夕鈴

・26話あたり
・陛下でてきません。どちらかというと夕鈴→陛下気味
・夕鈴がもんもんしているだけ

続きからどうぞ!
政務室から後宮へ戻る途中、ふと中庭に目をむけた夕鈴は、1人佇む水月を見つけて足をとめた。
その手には一輪の小さな花が握られている。
どこともつかない場所へ視線は向けられ、まるで水月にだけ違う空間が見えているかのようだ。
そしていつしかそこへ消えてしまうのではないかと思われるほど、彼の姿は儚く美しく見えた。
「水月さん、立ってるだけで絵になるなぁ」
春の宴のために水月がまた出仕をするようになって、そのマイペースさに翻弄されることもある夕鈴だが、
水月の奏でる音楽や、その美しい所作、宴に関しても次々と出てくる余興のアイディアなどにはつい惹きこまれてしまう。
遠慮もなく水月のことをじっと見つめていると、視線に気づいたのか水月が振り向いた。
「お妃様」
「あ、こ、こんにちは」
にっこり微笑んでくれた水月に対して、夕鈴もあわてて特訓したお妃スマイルを見せた。
―――華やかさで完全に負けてるわ・・・
「なにをなさっているんですか」
本人に見つかってしまったので、夕鈴も中庭に下りることにした。
「花占いです」
「花占い?」
男であってもこの可憐な響きが似合うところが水月らしい。
屈んで足元に咲く花をつみ、花びらを一枚ずつ引いていった。
「たとえば・・・明日は仕事を休む、早退、休む、早退、休む・・・早退、ですね。
何度やっても早退になってしまうんです」
端麗な顔に悲しげな表情を浮かべ、水月はため息をついた。
「そこでがっかりしないでください!」
夕鈴はうっかり同情してしまいそうになったが、そこは気を取り直した。
―――それにその選択肢!
出仕をしても仕事に対するやる気はなかなかでないらしい。
今はせめて毎日王宮に足を運んでいるだけでもよしとするべきなのかもしれない。
口のふさがらない夕鈴とは反して、水月は落ち着いた様子でまた少し腰を落として花をつんだ。
「お妃様も、なにか気になること、心に迷いや疑問のあることを占ってみてはいかがですか。このような簡単なものでも、なにか心を決めるきっかけになることもございます」
水月のやわらかな微笑みに見とれた夕鈴は、花占いで明日の出仕の有無を決めていることにコメントもできず、渡された花を黙って受け取った。
「そのまま御髪の飾りにしてもお似合いでしょう」
「あ、ありがとうございます」
「いえ。それでは私は今日は疲れたのでこれで・・・」
「え?水月さん!!疲れたからって帰っちゃだめですよー!!」
夕鈴の叫びは聞こえなかったのか、水月は優雅な動作で中庭を後にしてしまった。
「ちょ・・・水月さん・・・!」
1人中庭に取り残された夕鈴はがっくりと肩を落とした。
先ほど受け取った花を見る。
「占いかあ」
花占いといえば、好き、嫌い、と想う人の好意を占うのが王道である。
「陛下、は、私のことが」
好き、と口から出る前に、夕鈴の手はとまった。
「・・・陛下が私のこと好きなわけ、ないじゃない」
自分は借金返済のためにバイトとして雇われているだけの一般庶民で、
もともと一国の王と顔見知りになることさえ不可能だったはずなのだ。
それなのに好きになってしまった。
思いを寄せているだけで、夕鈴にとっては抱えきれないほど苦しい秘密なのに、
相手が自分を想ってくれているかどうかなんて、願ってはいけないことだ。
「私は陛下のことが好き、嫌い・・・」
自分の気持ちの整理をつけようと、小さい花に緊張した面持ちで向き合う。
しかし嫌い、と一言口にしたところで違和感に気づいた。
「嫌い・・・じゃないよね」
嫌いなわけがない。狼陛下の冷たい視線に思わずひるんでしまうことはあっても、
それを嫌っているわけじゃない。
「えーと、私は陛下が、好きじゃない、好き、好きじゃない・・・」
この占いの結果が『好きじゃない』で終わってくれたら、
きっとあきらめられるのではないか、そんな期待をしながら一枚ずつ花弁を抜いた。
花占いであっても、この気持ちを否定してくれたら、少しは気が楽になりそうな気がしていた。
気づいてから日に日に強くなっていく気持ちを、いつまで隠しとおせるだろう。
いつまであの人の隣で、なにもないかのように笑っていられるだろう。
2人での会話や、黎翔の顔や声を心に浮かべては、これが全部幻なんだと悲しくなる。
偽者の妃に向けられた嘘の言葉、演技の笑顔。
いつかは『本物』に向けられるはずのもの。今度は嘘ではなくて、心も一緒に。
それを思っただけで、涙がでるのを止められなくなるときがある。
気持ちがばれたら、即刻立ち退きを言い渡されるのは分かっていた。
自分が臨時であることを、絶対忘れてはいけない。
「何っ回やっても『好き』になるのはなんでー!!」
夕鈴の足元には、花弁を抜かれた花が散らばっていた。
「うう・・・ごめんね」
足元の花を拾って小さな束をつくった。
「やっぱり、好きなんだよね」
言葉に出して、その音を聞いて顔が熱くなった。
好き、という単語が頭の中を離れない。消そうとしても消えてくれない。
「陛下・・・」

いつも優しい子犬陛下も、冷たくて甘い狼陛下も、傍にいたい。支えたい。笑ってほしい。幸せになってほしい。
自分がなにかできるなんていうのは傲慢で、
一緒にいたいなんてわがままで、
ずっと傍においてくれるなんて思っちゃいけない。
それでも隣にいさせてくれる間だけ、
あなたのためになにかしたい。

「よーし、がんばる!まずは宴を成功させなきゃね!!」
夕鈴は深く深呼吸をし、1人気合を入れた。
―――私の気持ちは、私だけが知っていればいい。
あとで部屋においておこうと思った花弁のない花の花束は、
木の陰に隠しておくことにした。
この気持ちさえ抑えておけば、大切な人のそばにいられるのだから。
「陛下、待っててくださいね!」
大きすぎる独り言で、目にたまりはじめていた涙は引っ込めた。
来た道を戻って、もう一度政務室へと足を向けた。




―――――――――――

(10.06.2011)

夕鈴は暗い気持ちになっても、
1人で気合を入れなおしてがんばっていそうだと思いました。

拍手うれしいです。ありがとうございます!!
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