スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
とおりゃんせ 3
登場人物 陛下、夕鈴
カップリング 陛下→(←)夕鈴

・当初のあれと違ってしまいましたが勢いで終わった
・ひとつにまとめたら長すぎるかなとちょっと悩み中

――――――

さようなら、

とまともに自分の口から言葉が出たかは分からない。

王宮で働くのは、借金を返済し終えるまでの期間限定だった。
それを忘れた日なんて一日だってなかった。
なのに実際、家に帰れると分かったときの、
私の返事はきっと間抜けなものだったと思う。
陛下に最後に見せた顔はどんなだったかな。

最後に見た陛下は、どんな表情をしていたっけ?

隠そう隠そうと必死に誤魔化し続けた私の気持ちが、
結局陛下にばれてしまっていたかどうか、
今では確かめる術もない。
陛下は最後まで、私には優しかった。
ただ優しくて優しくて、
偽者のように優しくて。

夫婦としては偽者だったけれど、
私達の関係も、最後までその上に成り立った薄っぺらなものでしかなかったんだろうか。
私が抱いた気持ちさえも、偽ものだっていうんだろうか。

いつまでも王宮に残っているのは怖かった。
どこまで行ったら引き返せなくなるのか答えはだれもくれなかった。
陛下と一緒にいることに、
どれだけの覚悟が私にあったかだって分からない。
私がただ、好きな人の隣にいたいと思ったことと、
それが『妃』としてどれだけふさわしくないかなんて、
私は比べたことがない。

私は、妃じゃない。
妃にはなれない。
王の隣には並べない。

それは変えようのない事実であったし、
私がそれを知っていながらもあの人を好きになったのは本当だった。

どれだけ、だれに否定されても、
陛下に惹かれる気持ちは偽ものではなかったんだ、って、
それだけは絶対。


だから、忘れるのにこんなに時間がかかるんでしょう?







・・・寝れない。
夜の冷たい風に起こされるように、夕鈴は目を覚ました。
嫌な夢を見たと思う。
あの人が出てきた。
早く忘れてしまいたいのに、どうして夢になんか出てくるんだろう。
私のことを突き放したのは、貴方だったでしょう。
そんな恨み言が届くわけもないのに、思わず声に出しそうになる。
人は忘れられなくても、
王宮の空気は、音は、体が忘れていく。
一瞬だけ奇妙に感じた故郷の空気が今は自然に体に流れていく。
まるで違うものなんて一度も知ったことがないかのように。
自分が知っているのは、ここだけなんだと、そう言っているようだった。
餞別にもらった簪は、捨てられなくて卓の上においてあった。
似合わない。
部屋にも似合わないし、
平凡な自分の顔と、服にも似合わない。
シャラシャラと軽やかな音と、自分の歩く音や町の声はそぐわない。
まるで簪だけが違う世界からやってきたかのようだ。
その輝くが恨めしい。
戻ってきたのに、
どうしてそれを邪魔するのよ、
月の光を浴びる金属にそう呟いても、
部屋に自分の声が響いて居心地が悪くなるだけだった。
今日は、月の光がやけにまぶしい。
忌々しい。
夜に見たいものなどなにもない。
この簪だって、目に入れたくなんてない。

寝台から起きて、簪の上に近くにあった衣をかぶせた。
窓も閉めてやろうと手を伸ばす。
月明かりと闇に慣れた瞳が、夜の町をくっきりと夕鈴の前に映し出す。

なんで
どうして
なんで

「陛下!」

声は届かなかった。
その人は振り向かなかった。
夕鈴は、床に転がっている沓を走りながら足にはめ込んで、
階段を下りる。

「陛下!!」

後ろを向いて過ぎ去ろうとした人に呼びかける。
今度は届いた。







待ち望んだ声はその声だったのに、
すぐには反応できなかった。
声よりも、大きな音に反応して黎翔は振り向いた。
月の青白い光の中で、寝衣の白は目立った。
「ゆーり・・・」
瞳がその姿を確認するよりも、
唇がその名前を発するよりも速く、
黎翔は手を伸ばしていた。
手首を引いて、腕の中に小さな姿を抱きいれる。
髪に指がからむ。
覚えていたよりも固い感触だった。
「ごめん」
「え?」
「ごめん」
「陛下」
「好きになってごめん。愛してる」
手を離せなくて、ごめん。
幸せにできないと知っている。
それでもこの手を離せないのは、なぜなんだろう。
何度謝っても許されるとは思わないけどそれでもどこにも行かせられない。
「陛下、謝らないでください」
黎翔の腕の中で、息継ぎをしながら夕鈴が言う。
「また会えて嬉しいです」


この笑顔が悪いんだと思う。
こういう顔をしなければ、君が君の幸せだけ追いかけられるように、
僕だってここになんて来なかった。


「夕鈴・・・」

「はい」

君の声は、明るい。

「ずっと、そばにいてね」







――――――――

(12.17.2011)

中途半端すぎるけど、
セリフしか書きなぐってないとこんなものなのか。

スポンサーサイト
 
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
りっか様
素敵な画像紹介ありがとうございますううう!
わー増えてたのか、狼陛下タグ作品!嬉しすぎる。

私の小説を続きと考えてくださったとは恐れ入ります!
この曲、陛下っぽいですね。
切ないですね。
いいですね・・・!

切ないお話は大好きなのですが、自分でかくとじめっとして終わるだけなので、
もっとがんばります。
どうもありがとうございました!
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
遅くなってしまってすみません!
ずっとお返事していなくて申し訳ありません;

『とおりゃんせ』は、
陛下は夕鈴のこと好きだけど、自分のそばにいたら幸せになれないと思ったから手放して、
そしたら自分が思いのほか夕鈴の依存していることに気づいて、
隣にいて幸せにできるかわからないけど、それでも傍にいてほしい!という話でした。
だから謝るのは結構自分勝手だとは思うのですが、
陛下が夕鈴を隣におくとしたら、『どこかで他にも道はあったのにごめんね』と思っているのかもしれません。
原作の陛下からは、あまり夕鈴と共に歩こう!という勢いが見当たりませんよね。。。
陛下が安心して夕鈴に気持ちを伝えられる日はくるのか、どきどきものです。
夕鈴の笑顔でなにかが変わってくれたらほんとにいいですね。

『夕鈴が転んだ!』のような、いろいろな人とからませられる話は書いていても楽しいです。
楽しんで頂けてよかったです^^
几鍔は王宮の人たちとは全然違う立場で、
夕鈴の普段の表情を引き出してくれる貴重な存在ですよね。またでてくれないでしょうか、兄貴!

どうもありがとうございました!
とおりゃんせ:匿名の方
拍手ありがとうございます!
2年前に書いたものなのであちこち修正したいですが…楽しんでいただけて嬉しいです。
本誌の陛下の行動にも、この頃から見るとだいぶ変化が出てきて、心情として現在の本誌の陛下との乖離が大きくなってきて、パラレルワールドな域に入ってますね。本誌では、陛下は「好きになってごめん」ではなく、「一緒にいてくれてありがとう」っていう気持ちになってほしいなーと思います。
コメントの投稿
secret


トラックバック URL
http://osakanaya3.blog.fc2.com/tb.php/47-148ad4c7

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。