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とおりゃんせ 2
登場人物 陛下、浩大
カップリング 陛下→(←)夕鈴

・つづき
・短いですが、陛下視点、浩大視点で、視点変わりすぎなので切りました






分かっていたことじゃないか。
音にしてみると、その言葉はより説得力を持つ。
分かっていたことだ。
君の居場所はここじゃない。
君の居場所はここじゃない。

彼女の居場所は僕の隣じゃない。

隣で笑っていた彼女のことを思い出す。
少し離れた彼女の隣で、微笑んでいただれかを思い出す。
知らない町で、だれかの隣で、幸せそうだった彼女を思い出す。

君は僕がいなくても幸せになれる。
僕以外の人間を幸せにして、
だれの隣でも笑っていられる。
彼女はだれの太陽でもある。だれの花でもある。
だれにとっても、特別になれる。

「そんなの、はじめから分かっていただろ、黎翔」

だれもいない広い部屋に響いた声は、他人のもののようだった。
でもそれが、自分のものだとは明白だ。
僕の名前を使うのは、僕だけだから。
誰にも名前を呼んでもらえない人間の、
称号だけが膨らんで、本物がどちらかも分からなくなる。
他人にはきっとどうでもいいことだろう。
今なにを考えているのが、『僕』なのか、『王』なのか。
あの椅子に座ってから、
自分の名前はただの記号になった。
意味を持たないただの記号だ。このまま消える意味のない記号。
僕自身がまた、僕の名前を押しつぶしたこの忌々しい称号に消されないように、あがく。

それをいつだか彼女に話した。
もちろん、冗談のように。彼女が好みそうな話ではないと知っていたから。
彼女は泣いた。

彼女の涙は温かかった。
だれかを思って流す彼女の涙は。

もうその熱さえよくおもいだせない。





―――あーあ

天井からその様子は見ていた。
いつものように朝起きて、突然机に座ったかと思うと陛下がいきなり筆に墨をつけて、
部屋にかさばっていた紙に次々なにかを書いていった。
詳しくは中身も知らないし、知りたいとも思っていないけれど、
おもしろくないっていうのは分かる。
そしたら次にどこかから似たような紙をまた持ってきて、
それもあっという間に黒い字で埋まった。
乱暴にそれらをまとめて、
陛下は黒い外衣をかぶって出て行った。
もちろんオレは追いかける。
今は陛下以外に見なきゃいけない人もいないし、
陛下が一番危ないからだ。
陛下は馬に乗って下町まで走った。
ごちゃごちゃうるさい町を、横も見ないで歩いていって、
まあ何をしようとしてるかはだいたい分かったけど、
なにも言わずに付いていった。
口出したらなにが飛んでくるか分からないしネ。


そしたらこれだよ。
せっかく朝がんばって書いたのに、
紙も筆も墨も文鎮も、書物も壺も蝋燭も、
炒めたごはんみたいに混じって転がっている。
陛下は無言で自分の部屋をめちゃめちゃにして、
窓に向かって独り言。

ああ陛下、教えてやりたいなあ。
それは悲しいって気持ちだよ。
アンタは知らないかもしれないけどね。
オレの言うことに聞き耳持つとは思えないけどさ、聞いて。

知ってたほうがいいよ。
自分の心がなんて言ってるかくらいは、知ってたほうがいいよ。
そんなの陛下にはいらなかったのかもしれないけど、
お妃ちゃんに会っちゃったから、
もう一回思い出さなきゃ。

だれかを想ってしまうのなら、
涙の流し方くらい、知っていたほうがいいんだよ。
全部自分の中になんて閉じ込めておけないだろうから。

それは教えていってくれないんだから、
お妃ちゃんも、残酷なところあるよね。








――――――――

(12.17.2011)
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