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知るか
登場人物 方淵、夕鈴
カップリング 方淵x夕鈴

・2人が恋人同士なので、それは無理という方は続きを読まれませんようご注意ください
・短い

続きからどうぞ

―――――――――

書庫に使い終えた書物を戻しにきたところだった。
机に顔を伏せて寝ている彼女を見つけた。
方淵は音を立てないように近づいて、その姿をしばらく見ていた。
幸せそうな寝顔は、きっと良い夢でも見ているからだろう。
机の上に広がる髪を少しすくって、手を離す。
さらさらと落ちていく様子が綺麗だった。
「夕鈴」
めったに口にしない名前が、狭い部屋に響く。
本物の鈴のように舌の上で転がる名前はくすぐったい。
ほほに触れると滑らかで、少し指で押すと弾力がありすぐに戻った。
目を覚ましているときの彼女には、
じっと見つめられると気まずくて、なかなか手を伸ばすことができない。
親指で唇に触れた。
柔らかい感触と、息の熱さが指から伝わってくる。
少し体を屈めれば、お互いの唇が触れるくらいまで近くなる。
そこで、方淵は体を止めた。
一人こうしていることに恥ずかしさもあるが、寝ている人間に手を出すなど、
普段に不満があるようで品のないことだ。
方淵はその場を離れることにした。
最後にもう一度夕鈴の髪に触れる。
書物の戻し忘れがないことを確認して、足を出口に向ける。
彼女に近づいたときと同じように足音は立てない。
「いくじなし」
後ろから聞こえたつぶやきで方淵は足を止めた。
無言で振り返る。夕鈴はまだ机に突っ伏している。
しかし腕の位置が先ほどと違う。
見ていても、夕鈴は動かない。
「・・・・・・」
「ぎゃっ!」
夕鈴が頭を預けていた机が、大きな音とともに揺れた。
その拍子に頭を机にぶつけてしまう。
「痛い・・・」
顔を少しあげると、上から覆いかぶさるように覗き込む恋人がいた。
表情は、険しい。
先ほどの音と揺れは、彼が机に手をおいたときのものだったらしい。
「狸寝入りとはな」
額に青筋が浮かんでいるような気がした。
「・・・」
夕鈴の口から乾いた笑いが漏れる。
「意気地なしとは心外だな。疲れているようだから、気を使ってやっただけだ」
めったに見ない笑みは、こういうときにしか拝めないらしい。
男の影が降りてくる。
「あ、えっと、人が来ますわよ方淵殿」
「知るか」
苦し紛れに口を出た言葉は意味もなく埃っぽい空気の中に消える。
もう逃げられないと分かっていたから、黙って乾いた唇を受け止めた。


―――――――

(11.16.2011)

一応続くはずのやつを書いていたら、いくじなし、という夕鈴のセリフが心に浮かんで、勢いで。
私の中では方淵はすごくへたれなので、あまり手を出せないイメージです。
あと相手の名前も呼べないとか、手をつなげないとか、中学生みたいだと楽しい。
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