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花の命は
登場人物 水月、夕鈴
カップリング 水月→夕鈴

・短めで水月さんの片想い

続きからどうぞ!
―――――――

「あ」
夕鈴は小さな悲鳴をあげた。
足元に、無残に折られた花が一輪。
「あー!」
しゃがみこんで茎を立て直そうとするのだが、もうだめらしい。
「せっかく咲いてたのに。ごめんね」
土に帰ることを願うしかない。
「いかがなさいました」
小さな命を手折ってしまったことに沈み込んでいると、後ろから声をかけられた。
そこには、にっこりと微笑む水月だ。
仕事中らしく手には書簡が抱えられている。
「水月さん・・・」
「はい?」
夕鈴が目線を下げるので、水月も夕鈴の足元に目を向けた。
地面にへたりと倒れた花だ。
その植物と、妃の元気のない顔を見比べて状況を察した。
「それでは、これはいかがでしょうか」
膝を曲げて、その花は土から離してしまう。
くにゃりと柔らかくなった茎を、指でつぶしてさらにしなやかにした。
そして夕鈴の手を静かに自分の方へと引いて、その細い手首をあらわにさせた。
「失礼します」
「何ですか?」
「見ていてください」
水月は、器用に茎を夕鈴の腕に結びつけた。
腕輪のように、手の甲側に花が向くように固定する。
「わあ」
夕鈴の表情が明るくなった。
「花の命はもともと短いのです。
こうして王の花の心に添うことができれば、幸せでしょう」
水月の言葉は、自分にはもったいない上質の音楽のようだ、と夕鈴は思う。
どんな失敗をしても、水月の手や言葉が魔法のように、
全てを美しく変えてしまう。
その口から出ただけで、自分には似合わない『王の花』などという言葉を聞いても、
悲しくはならない。
「ありがとうございます」
夕鈴が微笑むと、水月も同じように返してくれる。
「どうぞその笑顔のまま、お戻りください。王が貴女を探しておいでです」
「はい!」
優雅な礼に見送られて、夕鈴は後宮へと足を向けた。
腕についた花に片手を添える。





「貴金属は独占欲の象徴ではないか」
妃の姿が見えなくなって、水月も室内へと戻った。
王宮の重たい空気の中に体を戻した瞬間に、柳方淵に声をかけられる。
水月が妃に渡したものは、金属などではない。
しかし、方淵の意味するところは分かっている。
「ああ・・・知ってるよ」
一日も経たずに、あの花は枯れてしまって、捨てられる。
その程度のものになら、己の心を預けても、傷は浅いと思うのだ。
「知ってる」




後日、夕鈴は水月を見つけて軽快な足音で走ってやってきた。
「水月さん!」
「お妃様、お急ぎのご様子ですが、いかがなさいましたか」
「これ見てください」
夕鈴の手元には、薄い布に包まれた小さな花があった。
「これは?」
「この前もらった花を、押し花にしたんです。これでずっととっておけますから」
無邪気な笑顔は、水月の良心を傷つけない。
後ろめたい彼女への気持ちを、こんな形で返されるとは。
この人にはかなわない。
自分はこの人の明るい笑顔を傷つけることができないから、
この距離に甘んじる苦しさは、こうして耐えるしかないのだろう。


――――――

(12.11.2011)

水月さん。水月さん好きです。

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