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夏の夜と嘘
登場人物 夕鈴、陛下
カップリング 陛下x夕鈴

・2つブロックにわかれていて、同じ話です。2つめが陛下視点
・暗いです。陛下がぐだぐだしているだけ。

続きからどうぞ
窓から流れてくる風の音に、静かに足音が混じった。
月の光が規則正しく寝息を立てる妃を照らしている。

ふと顔のあたりにくすぐったさを感じ、
夢と現実がはっきりしないまま夕鈴は目を薄くあけた。
だれかが自分の寝台に座って、こちらを見ているのが分かった。
まだはっきりと目の覚めていない夕鈴はすぐに判断ができず、
焦点が合うまでぼんやりとその人物を見つめていた。
しばらくすると暗闇にも目がなれ、頭もすこしすっきりしてくる。
そしてこんな時間に隣にいるのは、白陽国の王、珀 黎翔だと気づいた。
「陛下?」
「…起こしてしまったか」
黎翔は、夕鈴が目を覚ましたことに今気づいたかのように答えた。
「いえ」
夕鈴はゆっくり体を立ち上げ、黎翔の顔をじっと見た。
月のひかりだけでははっきりは見えないが、無表情な紅い瞳がまっすぐ夕鈴をとらえていた。
「どうしたんですか、こんな時間に」
「君の顔が見たくなった」
黎翔は夕鈴の頬をなでた。さきほどのくすぐったさはこれだったようだ。
月明かりで深く影の落ちた顔からは表情も感情も読み取れない。
静かな声だけでは判断しづらいが、少し沈んでいるように聞こえる。
「それだけですか・・・?」
「どういう意味だ?」
「なんか、様子が少し・・・」
おかしい。
人の寝ているところにいきなりやってきて、起こしもせずに座っていたなんて。
「疲れてるだけですか?寝れないんですか?嫌なことありました?」
質問を浴びせながら夕鈴は無自覚に黎翔に押し迫っていた。
2人の顔がぐっと近づく。
「陛下?」
「ああ、寝れない。ずっとここにいてはだめか?このまま君の寝った顔を見ていたい」
思いがけない甘い声が耳元でささやいた。
なぜ人もいないのにずっと狼陛下のままなのか、夕鈴はわけの分からないまま体が熱くなるのを感じた。
「だ、だだだめですよ!」
そして反射的に黎翔を押しのけた。
「陛下はちゃんと寝ないとだめです!ここにいるとしても、
せめて逆にしてください。陛下がここで寝て、そしたら私が見張ってます」
「見張り?」
予想外の切り替えしに思わず笑ってしまう。
「それじゃ夕鈴が寝れなくなっちゃうよ」
「そんなの大丈夫です!弟が風邪を引いたときも、ずっとそばで見てたんですよ」
いつもの子犬陛下に安心し、夕鈴が力強くこぶしを握って宣言する。
黎翔は微笑んで立ち上がった。
「夜にごめんね。本当にただ夕鈴に会いたくなっただけなんだ。もう戻るね」
「え?いいんですか」
「うん。君がここにいるって分かっただけでいいから」
その言葉に夕鈴の頭に疑問符が浮かぶ。
「私はいつもここにいますよ」
「―――うん。おやすみ」
これ以上説明はしてもらえなさそうだ。
黎翔はいつもと同じやわらかい笑顔で別れを告げ、足音を立てずに背をむけた。
「あの!」
「ん?」
黎翔の姿が見えなくなる寸前で、夕鈴が引き止めた。
「私、いつでも陛下のためにここにいますからね」
自分の言葉ひとつで一国の王を安心させられるとは思わなかったが、
なにか辛いことがあってもなにも言ってくれない黎翔に、
自分は味方であると伝えたかった。
返事はなくて、また微笑みを返されただけだった。
なにもできない歯がゆさと、なにも知らないことへの苛立ちを感じながら、
夕鈴は寝台に座ったまま動くことができなかった。





――――――――――――




君がいなくなる夢を見た。
今覚えばあまり現実的なものではなく、ぼんやりとした視界の中で君は泣いているのだけが見えて、
僕は手をのばそうとしたのに体を動かすことができなかった。
どうして泣いているのか聞こうとしても声もだせなくて、
ただ君の涙が溢れてくるのを見つめることしかできなかった。
そして君は突然僕に背を向けて行ってしまう。
別れ際になにかを告げる君の声は雑音のせいで聞こえず、
唇の動きを読むには視界が不明瞭すぎて、君からの最後の言葉さえ理解できずに僕はそこにいただけだった。
「―――っ待て!」
目が覚めて一番に君がもうこの王宮のどこにもいないのではないかという不安が僕を襲った。
君はあまりにも明るく眩しくて、こんないつでも曇り空のような王宮からいなくなるのがとても自然に思えた。
はやく確かめないと。
今すぐ夕鈴を探さないと、もう戻ってこれないくらい遠くに行ってしまうかもしれない。
そのときの僕はあの夢が夢だったことを理解していなくて、本当に君が消えてしまったと信じ込んでいた。
夜の冷えた空気の中を走って後宮に向かううちに頭が冷えてきて、
途中で足をとめる。
あれは夢だった。
あの空間は現実ではなかった。
声が出せなくなることなんてないし、体が動かなくなることもない。
本当に君がないていたら、僕はすぐにそばに行って抱きしめることができる。
バイトとして雇われている夕鈴が僕の知らないところでいなくなるわけがない。
でも本当にそうなのだろうか。
夕鈴がここにいることを望まなくなったとき、
僕の傍にいることが嫌になったとき、
引き止めることはできるのか。
王宮の暗闇で君が泣いているのを見て、自分のためだけに夕鈴を悲しませていたいのか。
本当はすべてのものから守ってあげたい。
一番安全な場所に閉じ込めて、だれにも見つからないように。
でもそんなことを君が望むわけないし、その結果君の拒絶に向き合う勇気は僕にはなかった。
だけどそれ以外にどんな方法で君をここに引き止められるのだろうか。
こんなところに、君はいつまでいてくれるんだろうか。
どれだけ夕鈴の目をおおっても、耳をふさいでも、この王宮の影を取り払うことなんてできない。
ましてその中心にいる僕が、この暗さから君を守ることや遠ざけることなどできるわけがない。
ただ誤魔化して、願うしかない。

誰もいない廊下を通って、夕鈴の寝室へ足を踏み入れた。
窓が少しあいていて風が通っている。
暗闇に慣れた目には外からの月明かりだけで十分だった。
僕は夕鈴の寝台に近づいていった。
そこにいるんだと分かっていながらも、もし夢が現実だったらという不安を完全に拭い取ることができなくて、
足が一歩進むごとに心音が早まっていくのがわかった。
―――いた。
穏やかな顔を見てすぐに頬が緩む。
君の顔を見るだけで体中を支配していた苦しさも痛みも消えてしまう。
「夕鈴」
返事がないのは分かっているが、愛しい名前を呼んで横に座った。
月の光を浴びて静かに輝く髪に指をとおすと、軽やかな手触りがした。
「夕鈴」
また名前を呼んで、軽く笑みを浮かべている頬に触れた。白い肌は見た目どおりに柔らかくて、指でなでるとなめらかなで気持ちがいい。
しばらく頬を触っていると、今までまったく反応がなかったのに、夕鈴の表情が少し変化した。
うっとおしがっているようだ。
薄っすらと目があいて、大きな瞳がぼんやりと自分を見つめている。
まだはっきりと焦点があっていないようだが、無防備な顔がかわいくて見とれてしまう。
「陛下?」
小さな声で我に返った。
「…起こしてしまったか」
「いえ」
実際夕鈴を起こしたのは僕だけど。
起きたばかりで体に力が入らないのか、夕鈴は不安定にゆっくりと体を起こした。
起きてもらうつもりはなかったから悪い気がしてしまう。明日もきっと朝から働こうとするだろうに。
「どうしたんですか、こんな時間に」
「君の顔が見たくなった」
正直に答えて、また夕鈴の頬をなでる。
「それだけですか・・・?」
夕鈴は疑わしそうにこちらを見ている。
君の顔を見たくて、君がここにいると知りたくて。
「どういう意味だ?」
「なんか、様子が少し・・・」
僕の答えに納得していないようだが、夕鈴自身も自分がなにを言いたいのかよくわからなさそうだった。
「疲れてるだけですか?寝れないんですか?嫌なことありました?」
うーん・・・と考え込んだかと思うと、突然質問の雨が降ってきた。
ぐいっと顔が近づいてきた。きっと夕鈴はなにも意識もしていなくて、この距離に気づいたら大慌てするんじゃないだろうか。
「陛下?」
僕が黙っていると、すぐ近くにあった夕鈴の顔が不満げになった。
「ああ、寝れない。ずっとここにいてはだめか?このまま君の寝った顔を見ていたい」
耳元でささやくと、夕鈴の体がはねるように反応した。
「だ、だだだめですよ!」
胸のところに力強く抵抗がある。押しのけられたが、夕鈴の力では僕はほとんど動かなくて、どちらかといえば夕鈴が下がったようになった。
「陛下はちゃんと寝ないとだめです!ここにいるとしても、
せめて逆にしてください。陛下がここで寝て、そしたら私が見張ってます」
「見張り?」
予想もしていなかった提案をされて、思わず笑ってしまった。
「それじゃ夕鈴が寝れなくなっちゃうよ」
「そんなの大丈夫です!弟が風邪を引いたときも、ずっとそばで見てたんですよ」
夕鈴が一緒にいてくれるといってくれたのは嬉しかったけど、今日は起こすつもりできたわけじゃないんだ。
僕は立ち上がって、自分の部屋に戻ることにした。
夕鈴はいつもどおりにここにいてくれるし、それだけで僕は満足していた。
「夜にごめんね。本当にただ夕鈴に会いたくなっただけなんだ。もう戻るね」
「え?いいんですか」
拍子抜けしたように、夕鈴はぽかんとしている。
「うん。君がここにいるって分かっただけでいいから」
僕の答えに納得できないようで、夕鈴は首をかしげた。
「私はいつもここにいますよ」
「―――うん。おやすみ」
これ以上君のことを見ていると、君のまっすぐな言葉を聞いていると、思わずすべてを投げ出して2人でどこかへいってもいいんじゃないかと思ってしまう。
僕がこの王宮の中で君を守れないなら、僕がここから出てしまったらいいのかもしれない。
毎日君のことだけ考えていられたらどれだけ幸せなんだろう。
だけどそれは選べない。
僕は幸せな暮らし方を知らない。僕ができるのはこの囲まれた空間で、王として生きることだけだ。
人の信じ方も知らない。だれかを笑顔にする方法もわからない。
なにかのためにだれかを傷つけるような、そんな手段ばかりを見てきたことを、
君が気づかないといい。
ずっとなにも気づかずに、僕を疑わない君でいてほしい。
なにも知らなくていい、なにもしなくていいから、どこにも行かないでほしい。
「あの!」
「ん?」
明かりのほとんどない廊下に足を伸ばしたところで、夕鈴の声に引き止められた。
「私、いつでも陛下のためにここにいますからね」
なにかを必死にうったえようとしている夕鈴が愛しかった。
今の言葉が嘘でもいいから、ずっとそうだと信じたい。
夕鈴、何度も嘘を言って、僕を安心させて。





――――――――――

2010/10/8

陛下は夕鈴がずっとここにいてくれるわけがないと本当は思っていて、
でもずっと傍においておきたくて、
いい出せなくて、
せめて少しでも長く一緒にいてくれるように、自分の本当も王宮の本当も見せないように、
境を作って隠そうとしているイメージです。

夕鈴は陛下がなにか隠していると変だな?とは思うけど、
仮という身分がネックになって踏み込めなくて、
これ以上前にいかないように自分からボーダーを作っている感じ。

どちらも相手から距離をとってしまっているから、いつまでも相手を遠くに感じている関係。

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