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夕鈴が李順さんの婚約者な話
登場人物 李順、夕鈴、陛下
カップリング 注意! 李順x夕鈴

・T様リクエストありがとうございました!
内容は(少し文を簡潔にさせていただきました)
『李順x夕鈴で2人は婚約している。いい臨時花嫁が見つからないので、
夕鈴なら結婚したら秘密は守れるしバイトならお金も貯まるという考えで一ヶ月だけの臨時の予定で王宮に。
陛下には2人のことは秘密。夕鈴のお母さんは貴族でお父さんと駆け落ち…お母さん関係で李順と婚約。
「陛下に手出されないように!」のセリフ』
だったのですがいろいろ守れてないです特に後半の2つ。す、すいません・・・。

※注意点※
・李順と夕鈴が婚約している
・原作の設定や流れと矛盾する部分がたくさんある

それでも大丈夫という方は続きからどうぞ!

―――――――


「李順さん!」

李順は突然手を引かれ、壁に押し付けられた。
狭い倉庫でこちらをにらんでいるのは、白陽国の若き王珀黎翔の唯一の妃である少女だ。
そして彼女は、自分の婚約者でもある。
李順は斜めにずれた眼鏡を整えた。
「どうしましたか。仕事中はなるべく2人にならないと約束していたはずですが」
突然夕鈴に婚約の話が舞い込んできたのは半年前のことだ。
亡くなった母の知り合いなる人物がたずねてきて、李順を紹介されたのだ。
仕事人間の李順には会えるのもまれではあったが、半年立ってようやくお互いのことを理解しあえてきたかと言うときに、なぜか夕鈴は、違う人の妻として王宮で暮らしている。
夕鈴が実家にいたときには、顔を見ることがまれで、手紙ももう来ないだろうと諦めかけたころに届いていた。
それが一応ここにいれば、ほとんど毎日顔を合わせることもできるし、
半年かけて恐る恐る歩み寄ろうとしたときよりも、ずっと相手を知れた気がする。
だが、こうして一目を避けて、隠れるように会うか、仕事の合間にお互いを盗み見るしか相手を知る方法もない。
「だって、私の寝所に男の人を送ってくるなんて・・・李順さんひどすぎます!」
「まさか、何かあったんですか」
ぐすり、と涙目になる夕鈴を見て焦るのは李順のほうである。
夕鈴の寝所に男を送った・・・などと聞こえの悪い言い方はしてほしくない。
ただ突然現れた陛下の妃に信憑性を持たせようと、夜に一緒にすごしていたという証言を取ろうとしただけだ。
黎翔にもきっちりと、遊ばないようにと釘をさしておいた。
利いていたかは分からないが。
李順が計画していたよりも黎翔が戻ってくるまでに時間がかかったことが気になったが、
まさか?
「なにもされてません。2人で長椅子に座って話をしただけです。
でもだからいいってわけじゃないです!
いきなり陛下がきたときは、そういうことなのかと思って、李順さんは私を抱きしめてくれたこともないのに・・・もう私と結婚するのが嫌で、一ヶ月の臨時花嫁だなんて嘘ついて」
「それは誤解です」
夕鈴の目にたまった涙がこぼれる前に、李順は口を挟んだ。
「私の気持ちは全く変わっていません。
貴女と将来をともにするという考えも、変更する予定は全くありません」
2人の間になにもなかったことに安堵し、息がもれる。

陛下のために偽の花嫁を、と計画したのは李順本人だが、この嫁探しが思ったとおりに行かなかった。
陛下の妻として恥ずかしくない程度に見目がよくなければならないが、そこに金と時間をかける頭の悪い貴族の娘などを使ったら、それこそ縁談よけの意味がない。
口が堅く、身分がすぐに明らかにならない者で、できれば刺客対策もかねて武術の心得があるとよい。
ただ専門職の人間を雇うほど財政に余裕があるわけでもない。
言い出したからには引くこともできず、必要にも迫られていたから、半年前にほとんど無理やり結び付けられた自分の婚約者を連れてきたのだ。
結婚すれば口止めにもなるし、バイトとして夕鈴に市井の飲食店などよりはよっぽどいい給料を与えることができる。
しかし問題は、自分の心が思ったよりもこの若い婚約者にとらわれてしまって、王宮で近くに顔を寄せる黎翔と彼女の2人を見て、常にイライラしながら視線を送ることしかできないということである。
そしてもう1つさらに都合の悪いことに、王はこの兎が気に入ってしまわれた。
臣下の婚約者と知れたら不快だろうと告げていないが、今は後悔している。
とても。

夕鈴が李順の袖をつかんだ。
「でも、・・・前よりは李順さんの顔を見れるから、それだけは嬉しいです」
ああ本当に、早く違う臨時花嫁を見つけなければいけない。
長く一緒にいればいるほど、この少女の愛らしさに心を奪われ、手放せなくなることは自分が一番よく知っている。
「今度は、地方の下級役人の娘をあたってみようかと思っています。
できるだけすぐに貴女をこの仕事から解放して、幸せにしますから、もう少し待っていてください」
すぐにといっても、あてがあるわけではない。
だが李順もこのような狭い場所でこそこそ会話をするのではなく、
いつでも思ったことを伝え、共有したいことがあればすぐに腕を引いて呼んで、
不安があるなら抱きしめてやりたかった。
今は常に人の目を気にして、一定以上の距離をとらなくてはならない。
それでも自分よりも、良く分からないまま、自分の言うままついてきた夕鈴のほうが辛いのだろうと思うと苦しい。
「・・・はい。信じてますから、いつまでも待ちます」
きっとなにか言い足りなくて、まだ不安なのだろうと、夕鈴がそういう顔をしているのが分かってしまって、
李順は顔をゆがめた。
それ以外に返答を許さないようなことを言ってしまったかもしれない。
この娘が人に気を使って、自分自身のことは後回しにしてしまう性格だとは知っているのに。
だが今は、他に選べる手段がない。
「では、」
李順は夕鈴の着物の襟元に手をあてた。
「前はきっちりしめて、肌を見せないように。それから帯はきつくしめすぎてはいけません。
腰と胸が強調されてしまいます。それから、陛下を誘惑しないように」
大真面目に言われて、夕鈴は一瞬言葉がでなくなる。
「しませんよ!どうやってしろって言うんですか」
「そういう顔です」
李順は、夕鈴の顎に手を当てくいと下に戻した。
「その上目遣いは禁止です。貴女は何があっても私の妻になる人ですから、それは忘れないように」
「はい。李順さん」
夕鈴はしばらく押し黙っていたが、やがて決心したかのように李順をじっと見つめた。
「私のこと好きですか?」
「どうしてそんなことを聞くのですか」
「言ってくれなきゃ不安になりますよ」
夕鈴は少し拗ねた表情をする。今まで一度も、言われたことがない。
偽者の夫の口からは、毎日のように愛の言葉が降ってくるのに。
不満気に婚約者の顔を仰ぎ見るが、表情が読めなかった。
少なくとも怒ってはいないだろうけれど。
李順は夕鈴の顔を少し見つめていたが、そのうち髪を手ですくい、そこに口付けを落とした。
「自明のことを、尋ねるものではありません。
今はここまでですが、貴女が家に帰ったあとで続きをしましょう」
手にとった髪を放して頬に手を当て親指で顎をなぞった。
手に吸い付くような肌を離れるのがおしいが、そろそろ戻らなくてはならない。
陛下の側近に、そして彼女はその陛下の妻に。
するりと手が離れる。
温かさのなくなった頬が、寂しく感じた。
と、そこに軽く柔らかいものがあたる。
「戻ります。しばらくしてから出てくださいね」
そんなことを言われなくても、夕鈴はそこから動けない。
ぽかんと口をあけたままの夕鈴の顔が、
李順の姿が消えてから一気に赤くなった。
「・・・ばか」




「しかし、昨晩の夕鈴はおもしろかったな。私が部屋に来たときの顔は忘れられないよ。
愛らしくて仕事の疲れも気にならない。今夜も楽しみだ」
「陛下、あとで面倒になりますから、からかうのは程々にお願いしますよ。・・・失礼します」
李順の足音が聞こえなくなって、黎翔1人になった部屋に小さなため息が響く。
「はぁ、まったくあの男は、いつになったら本当のことを言うつもりだ」




――――――――――

(11.10.2011)

李順さんと一緒の夕鈴は、ちょっとわがままだったり、拗ねたり、子どもっぽかったりすると可愛いなと思います。
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