スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
雪の中で重なる手は
登場人物 方淵、紅珠
カップリング ※注意 方淵→←紅珠

・原作で会話もしていない(※27話時点)2人がなぜか両片想い。自分が好きなだけですすいません。
全 て が 捏 造
・方淵側、紅珠側の順で
・あとテンション低いし幸せではない

暇だからもうなんでもいいよという方がいらっしゃいましたら
続きからどうぞ!


――――――――


柳家の彼が、その宿敵ともいえる氾家の人間を見つけたのは、
雪の降った午後だった。
たまたま後宮の庭が見える廊下を通って、見慣れない色が白い庭に指しているのを目にした。
屋根があるとはいえ、そこに冷えた空気を防ぐものはなにもないというのに動かずにいる。
認めたくないが遠目からでもだれだと分かってしまう。
その姿を見ることは稀だというのに。
手にした書類は、急ぐものではない。
自分に言い聞かせ、方淵は外の雪の中に足を踏み入れた。
積もった雪が音を消す。
人の話す声も、風の音もない。
低い階段をあがって、遠くからも目が離せずにいた紅珠を見る。
机に顔を伏せて、目を閉じている。
息がないのではないかと、
この綺麗な人形のような顔をしたままこの世を去ってしまったのではないかと思う。
そのほうが似合う気さえするのだ。
あまりにも、冷たく動かない姿が様になりすぎている。
「紅珠」
本人の前では、一度も呼んだことのない名を口にする。
口の中で軽く弾けるような音のつながりはくすぐったい気がする。
机の上に控えめに置かれた手に触れた。
冷たい。
伝わってきたあまりの冷たさに体が震える。
この小さな冷たい手が、もし自分の手を取るのなら、
自分は名前を捨てることができるだろうか。
尋ねてみれば、できる、とどこからか答えがする。
しかしどれだけ自身の力だけで生きようとしても、
どこかで『家』に縛られているのではないか。
その疑問は頭から離れない。
それは名前なのか、血なのか、もっと違うなにかなのかもしれない。
そしてこの、小さな手の持ち主は?
彼女もまた縛られている。
彼女は、彼女の『家』をなくして生きていけるのか。
守ったらいい。
その単純な解決方法に、踏み込むことができない。
重ねた手を離した。
まだ十分に温まっていないことが心に残るが、
これ以上触れていることができない。
そんなことをしたら、二度と離さないように、固く握り締めたくなってしまう。
紅珠の睫毛が震えた。
ゆっくりと瞳が開く。
空気の冷たさに凍えて、体を小さくした。
「方、淵様」
そこにいるはずのない姿を捉えて、彼女の瞳は夢を見ているようにぼんやりとする。
しかしすぐに冬の風に目を覚まさせる。
「こんなところで風邪を引いたら迷惑だ。王宮の人間に移ったらどうする」
「申し訳ありません。お妃様と、雪を見たくて・・」
「せめて上衣くらい持ってきてはどうだ」
方淵は自分の上衣を彼女の頭からかぶせた。
耳も、鼻も、手も赤くなっていて、どこを覆ってやったらいいの分からない。
「あ、・・・私、ご返却できるかどうか」
ああそうだ。
もう二度と会うことはない。
名前が変われば、彼女に話しかけることも許されなくなるだろう。
新しい家は王宮から遠い。
彼女がこうして妃に会いにくることももうないのかもしれない。
これから彼女を守るものはその名前だけか。
「そんなものは返却されずとも結構だ」
顔も知らない男の元へ行く彼女の手に、自分のものを残そうなどとは、
なんと身勝手なことだろう。
目が離れた瞬間に捨てられても良い。
捨てるところを見なければ、彼女がまた自分を思い出すことがあるのではと、愚かな希望を持てるから。
紅珠の大きな瞳が方淵を映す。
雪で覆われた空は暗く、光のない冷たい空気の中でその瞳は真っ黒に見えた。
静かな動作で紅珠はその衣を握り締める。
「・・・それでは、また手の凍えるような日には、こうして」
紅珠が目を瞑った。
その先の言葉を聞くことはできなかった。
紅珠はそれ以上口を開かない。
少しだけ微笑みを描く表情に、なにも尋ねることができない。
なににためらっているんだ。
今すぐ手をとれば、もしかしたら間に合うかもしれないのに。
そんな笑い方をしてほしくない。
自分の知っている彼女の笑顔は、もっと明るかった。
しかし方淵は、冷たくなった自分の手で拳を作ることしかしない。
きっと怖くてできない。
この目の前の人の儚い笑顔は、
ここでしか咲けないのではないかと恐れている。
手にとって摘んだ瞬間に崩れてしまいそうで、
こちらに引き寄せることさえできない。
「戻る」
「はい」
引き止めることができない自分が、悲しむ権利もない。
「幸せに、なれ」
小さくかすれた声が雪で無音になった空間に響いた。






――――――――――――


お妃様と雪を見たい、と言ったのは嘘ではない。
庭一面が白いのはとても綺麗だからと誘われていた。
ただ外で待っていようと思ったのは、一瞬でも廊下を通るあの人を見たかったから。
だからこの日を選んだ。
明日は、もうこの都にはいないから。
自分の気持ちに従うこともできず、
父の言われるがままに嫁いでいく自分が未練がましいことをして。
それはとても卑しいことで、本当なら王宮にさえ近づくべきではないのに、
諦めきれない。
ただ一目後姿が見えたらいい。
いつもそうしてきたのだから、それでいい。



目を覚まして、夢だと思った。
そこにいるはずのない人物がいる。
「方、淵様」
しかし冷たい風が紅珠の目を覚ました。
これは夢ではない。ぼんやりとした視界も頭も、雪の冷たさに現実に戻される。
凍えるような空気の中で紅珠は薄着すぎた。
体が芯から震えるようだ。
でも右の手だけが暖かい。
目の前の人物に視線を移す。
この人の、体温が残っていて?
そんなわけがない。でもそう思っていたい。
一度だけ、手を握られたことを思い出す。
階段を降りる紅珠にふと差し出された手のひらに、控えめに自分のものを重ねた。
あれはいつのことだったろう。
そのときの乾いた手のひらは、今と同じだっただろうか。
もう分からない。
「こんなところで風邪を引いたら迷惑だ。王宮の人間に移ったらどうする」
「申し訳ありません。お妃様と、雪を見たくて・・・」
「せめて上衣くらい持ってきてはどうだ」
重たい冬の衣が紅珠を頭から覆った。
温かい。
一度も触れたことのないその人に、抱きしめられたら今のように温かいのだろうか。
立ち上がってそうできたらよかった。
衣を脱いだこの人の体が冷えてしまう前に、抱きしめることができたらよかった。
「あ、・・・私、ご返却できるかどうか」
そうだ。
もうきっとここへ戻ってくることは許されない。
使いをやって届けさせることはできるけれど、そんなことをすれば周りの人間にどう思われるか分からない。
こんなときにさえ、自分の身を守ることばかりを考えてしまう自分に嫌気がさす。
けれどそうなのだ。
いつだって、自分のことばかり守ってきた。
そういう生き方しか知らないから、これからもそうしていくしかない。
今目の前にいる人の手を取ることもできない。
臆病だから、なにもできない。
「そんなものは返却されずとも結構だ」
方淵の声には感情がこもっておらず、何を意図しているのか分からなかった。
―――私を責めないのですか。
婚約を断れなかったのは、流されるままに結婚するのも、そして明日旅立つのも、自分だ。
貴方と手が触れたときに、きっともう気持ちは伝わってしまっていたのに。
しかし責められる、と思ったこと自体がうぬぼれだったかもしれない。
この人にとって自分が特別であったと思ってしまったことは思い上がり。
言葉にしたこともないのに。
「・・・それでは、また手の凍えるような日には、こうして」
―――貴方を想います。
その言葉は言えない。
紅珠はまだ少し温かい衣を抱える。
この言葉を伝える権利がない。
自分の身を守るために、自分の気持ちからも貴方からも目をそらしてしまった。
この日のことも、きっと忘れる。
忘れたふりをするのでしょう。
思わず笑ってしまう。
こうして全て見えないふりをして、忘れたふりをして、ずっと生きていくなんて馬鹿らしい。
馬鹿らしくて、卑しくて汚いと思うのに、それしか選べない。
「戻る」
「はい」
方淵の短い言葉に、紅珠も短く返答する。
方淵が背中を向ける。
これが最後の機会なのに、口を開くことができない。
出せるのは言葉ではなく白い息だけだ。
「幸せに、なれ」
ああ、全身から力が抜けるよう。
貴方はなんて残酷なことを言うのだろう。
貴方の口からだけは、そんなことは聞きたくなかったのに。
振り向かずに去ってしまった方淵を見ながら、紅珠の目には涙が溢れる。
涙を拭ってくれる温かい手はない。





―――――――――
(11.04.2011)

両想いなんだけど、2人とも相手に伝えてなくて、でも多分好かれているだろうなと気づきつつ、最後まで確認できず、結局一緒になれない。

1回書いて、もう考えはじめたらいろいろ止まらない方淵x紅珠が大変です。
まだネタがあるし、きっともっとネタでてくるし・・・恐ろしい2人。


スポンサーサイト
 
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
こんばんは(^^)
なんて、なんて切ないのですか~
氾家と柳家ってお家柄的には釣り合うけれど、相容れないその確執が2人を…
最近この2人ってロミオとジュリエットみたいだな~とか妄想をちょろっとしていて…
あぁ切ないです。
でも切ないの好きです。。。

なんと!他にもステキ話があるのですか!?ぜひぜひ拝見したいです♪

バニーガールさんへ
こんばんは!
どこにコメントを返すのが一番読みやすいのか分からないのですが…
せっかくあるのでこちらの機能を使わせてください(笑)

そうなんですよね!
お家柄的にはつりあっているから、身分違いの恋ではなくて、
そこが逆に惹かれるポイントになってます!
ロミオとジュリエットはそうですねー
境遇は似てるのでそれで妄想もしたのですが、
二人とも結構したたかなのと、
多分お互いが一番大事になることはないのかなと思って、
そうすると自殺は選らばなそうだと思いました。
方淵はやっぱり陛下のために働きたいだろうし、紅珠も氾家の女性としては誇りがあって、
自分の家のことでお互いを選べなかったとき、
それでも二人とも結局家も今の立場も捨てられないんじゃないだろうか。
と思ってしまいます。
しかしロミジェルにあわせるのは萌えますね!萌えと理屈は別ですね。バルコニーならぬ、窓越しとかに会話してほしいです。
コメントの投稿
secret


トラックバック URL
http://osakanaya3.blog.fc2.com/tb.php/23-7638c183

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。