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登場人物 夕鈴、紅珠、陛下、方淵
カップリング 陛下x夕鈴 (みかたによっては 方淵→夕鈴?)

・時間軸的に紅珠とはすでに仲良くなっているころです
・おちが方淵なのでご注意


続きからどうぞ



夕鈴は、外の椅子で暖かい太陽を楽しんでいた。
今日は訪問客があるのだ。天気は暑すぎない晴れで、外でおしゃべりをするにはうってつけだ。


「お妃様、こちらご覧になってくださいな」
久しぶりに後宮を訪ねにきた氾 紅珠は、挨拶をする時間も惜しいというように夕鈴をせかし、
自分の手の中にあるものを見せた。
白っぽい石のように見える。
夕鈴には、その石がなぜ紅珠をこれほど興奮させているのか分からなかった。
「石?」
正直な感想をつぶやいてみると、やはり不正解だった。紅珠は妃に一緒に喜んでもらえないことがはがゆいようで、少し拗ねたような表情をしたが、気を取り直して持参した陶器を取り出した。
「これは乳香ですわ。こうやって使うんですの」
「にゅう・・・?」
見慣れない単語と夕鈴が戦っている間に、紅珠は慣れた手つきでその石にしか見えない白いものを器にいれ、火をつけた。
「わっ」
しばらくすると煙がでてきた。
「甘い・・・香り?」
紅珠の表情があかるくなる。
「父が西からきた商人に取り寄せさせたのですわ。甘くて爽やかな不思議な香りがします」
「そうね」
今まで夕鈴が嗅いだことのない香りだが、心が休まる気がした。
「素敵ね」
夕鈴が微笑むと、紅珠も嬉しそうに微笑み返す。
―――本当に、紅珠といるとなごむなぁ・・・
紅珠のやわらかい雰囲気と、甘い香りにつつまれて、ついつい表情がほころんでしまう。
午前中はそのまま2人で他愛もないことを話して、夕鈴は室内に戻った。







問題が起こったのは午後だ。
昼食をすませた夕鈴は、黎翔、つまり陛下に政務室に来るよう言われているため、食べ過ぎて少しふくれたお腹を押さえて立ち上がった。
「ちょっと苦しい・・・ん?」
ふと気になって、自分の袖を口元に近づける。
ふわりと甘いにおいがした。
「あら」
もう片方の袖もかいでみると、先ほどの煙と同じにおいがする。
そこまで強い香りではないが、普段香などまったく焚かない夕鈴からすると、自分から甘いにおいが漂っているのは落ち着かなかった。
また、普段と違うことをして政務室に赴くと、陛下になにかつっこまれてまたからかわれるかもしれない。
「・・・しょうがないか。着替えたら洗濯物増えるし」
貧乏性の夕鈴に、汚れてもいない服を着替えるなんてことは許せない。
自分が歩くたびにふわりふわりと甘い空気も一緒についてきて戸惑いつつも政務室に向かった。






政務室に入ると、なぜか陛下の姿がない。
きょろきょろと探しつつ前に足を踏み出したが、なにかにぶつかった。
「きゃっ」
転びそうになったところを、さっと伸びた手が救ってくれた。
「あ、」
お礼を言おうと顔をあげると、口からでかかっていた『ありがとう』の言葉を思わず引っ込めたくなる人物がいた。
「げ」
「突然人にぶつかったらその顔でそうおっしゃるようご教育を受けられたのか」
眉間に皺をよせた柳 方淵が、夕鈴をにらみつけた。
「方淵殿・・・失礼いたしましたわ。私、陛下を探してて・・・」
助けてくれたのが方淵だと分かると、急いで自分の足で立ちなおし、距離をとった。
言い負かされないよう気合をいれようと足を少し広げ、戦闘準備を整える。
「陛下なら会議が長引いて別室にいらっしゃる」
「あらそう」
「すぐにお戻りになる、が・・・貴女はその前にせめて着替えをなさったほうがよろしいのでは。もしくは後宮に引きこもるか」
袖口を口元においた方淵が一歩下がった。
「え?」
最後のついでに言われた文章に反撃するのは我慢して、夕鈴は自分でも心配していたことをつぶやいた。
「これ・・・まずいかしら」
自分にだけ分かる程度ならいいが、他人にも分かるほどの香りをまとって政務室にいるとなると、
失礼なのではないか。しかも方淵の様子からすると、あまり万人に好ましい香りではないらしい。
やはり戻って着替えたほうがいいのか。
「貴女は自分の立場ばかりか政務室の役割も理解していないようだな。それなものを政務室にまで・・・陛下の気でも引くおつもりか」
「なっ!・・・まぁ、ご提案いただいて嬉しいわ。今度実践してみようかしら。でもこれは違います。これは紅珠が今日持ってきてくれた・・・」
「相変わらず氾家贔屓とはな」
怒鳴りそうになるところを、周りにほかにも官吏がいることを思い出して押さえ込んだが、バカにさたような笑いに、夕鈴も頭に血が上る。
「どういう意味ですか?紅珠は私の友達なのですから、友達と仲良くして貴方に文句を言われる筋合いはありませんのよ」
「ふん、陛下の妃ともあろう方が考えもなしにひとつの臣下の家と親しくするなど浅はかだと申し上げているんだ」
「貴方こそ相変わらず・・・」
バチバチと火花の飛ぶ夕鈴と方淵の間に入り込める官吏はだれもおらず、みなはらはらと遠目に見ているだけだ。
「夕鈴」
歯軋りをしそうなほど顔をこわばらせていた夕鈴は、ぐいと後ろからひかれ、突然のことに抵抗もできずに引かれるままに後ろの人物に体重をあずけた。
「陛下」
「遅くなったな、我が妃よ。しかし君が待っていてくれると思うと、政務室へ運ぶ足も軽くなるな」
狼陛下の笑みに、夕鈴の顔が一気に赤くなった。
「・・・はっ!!」
―――くさいって思われる!!
いつもならこのまま固まってしまう夕鈴だが、さきほどの言い争いのタネを思い出して急いで黎翔から身を離した。
「どうした?」
あまりにも勢いよく離れたため、黎翔を突き放すようになってしまった。
「君は・・・私の腕の中にいるより、ほかの男と口喧嘩をするほうがいいのか?」
「え?いえ、そんな・・・」
急いで首を降った。
「君の視線はどんなものでも私だけのものだ」
黎翔の手が夕鈴のほほに触れた。朱の瞳にじっと見つめられ、心臓がはねる。
「へ、陛下、わ…私用事があったので後宮に戻りますね!大変!」
あまりにも近い距離。
香りのこともあるが、耐えられずにその場から走り去ってしまった。
取り残された黎翔は夕鈴の後姿を見届けた後、低い声でそばに立つ臣下に告げる。
「方淵・・・時間に余裕があるようだな。昨日頼んだ資料は今日中に用意してもらおう」
ほかのものなら凍り付いて動けなくなるほど凄みのある声だが、方淵はいつもとおりに返答をした。






後宮に戻った夕鈴は、急いで服を脱ぐとそれを広げ、風に通してにおいを飛ばすことにした。
「いいにおいだと思うんだけどな」
部屋中に香っていた甘さと爽やかさはいつしか風に混じってうすれていったが、まだかすかに感じることができる。
いくつか紅珠が残していってくれたが、夕鈴には使いこなせそうになかった。
「陛下って犬みたいだから、鼻もいいのかしら」
冗談のつもりでつぶやくが、なんだか本当な気がしてきた。
「髪の毛にもついてるし・・・」
自分の髪の束をとって鼻に近づけると、同じ香りだ。
「ゆーりん!」
名前を呼ばれて振り向くと、息をきらした黎翔がいた。
「陛下!」
「もー、なんで先に行っちゃうの?用事ってこれ?なにしてるの」
拗ねた表情で夕鈴と着物を見比べた。
「えーと・・・これは」
「あれ?なんか甘いにおいがするね。いいにおい」
「ほんとですか?」
「うん」
空気のにおいをかぎながら、黎翔は夕鈴に近づき、夕鈴の肩に頭を預けた。
「君が一番甘い」
急に声が一段低くなる。
―――こんなときに狼陛下!
黎翔の息が首元に感じられ、夕鈴の心臓はいっそう早く鼓動する。
「ちょ、ちょっと陛下、近いですよ!」
体を離そうとすると抱きしめられ動けなくなった。
「もう少し・・・」
「陛下、におい移っちゃいます!!」
あまりにも強く夕鈴が抵抗するので、しかたなく離すことにした。
「これどうしたの?」
「紅珠が持ってきてくれた乳、香っていうんです」
やっと覚えた単語をたどたどしく説明した。
「まだ結構残ってるんですけど、もし陛下がお好きならもっと焚きましょうか?」
とりあえずくさいと思われていなかったことに安心した。
「いや」
黎翔は夕鈴の髪をすくうと、口元に近づけた。
「君はいつでも甘く香っている。そのままで十分だ」
本日何度目の狼陛下か知れず、夕鈴は自分の顔が熱くなるのを感じた。
きっと顔も真っ赤なんだろう。恥ずかしい。
「陛下・・・って、あーーー!」
「わっ夕鈴」
せっかくの甘い空気を壊す叫び声とともに、夕鈴は黎翔の服をつかむと顔を近づけた。
「あ、夕鈴からこんなに近くにきてくれるなんて嬉しいな」
よくかがなくてもわかるが、黎翔の服から先ほどの香の香りがする。
「服ににおいついちゃってるじゃないですかー!」
「え?いいよ」
「よくないですよ!官吏の人がよく思いませんよ。さっき方淵殿にもくさいって言われたし」
「そうなの?でも僕は、夕鈴とおそろいでうれしいな」
花を飛ばすような笑顔で、夕鈴はそれ以上なにもいえなくなった。








政務室に戻った黎翔に、方淵は先ほど締め切りが早まったばかりの資料を差し出した。
「これは早いな」
「は」
黎翔からいつもとは違う甘い香りがするのに気づき、方淵の眉が少し動いた。
先ほどの妃を思い出して不愉快な気分になる。
―――陛下から甘い香りだなど!
「・・・お前はこの香りを好かないらしいな」
顔にはなにも出さないようにしている方淵を笑うかのように、黎翔が言った。
「好みを申し上げたつもりはございません。ただこのような空間にはそぐわないとは存じますが」
「そうか」
別に悪臭だとは言ってない。
―――あの妃め、これでは自分が陛下のものに文句をつけたようではないか。
方淵の不満はだれにも届かず、香と一緒に風にながれていってしまった。










――――――――――――――――――――――――――――――――
2010年10月3日

ご覧いただきましてありがとうございました。初『狼陛下の花嫁』小説です。
まだ口調とキャラがかっちりつかめていない気がします;

中国の香水系の歴史を調べようとしましたがいい資料がなく適当です。

夕鈴はきっと花の香り!
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