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止められない想い
登場人物 陛下、夕鈴
カップリング 陛下x夕鈴

・24話はすぎていますが本編ネタはなし
・『+++ Aqua Proof +++』様の『玉砕覚悟の恋で10題』をお借りしています
・夕鈴は陛下が大好き。という話ですが暗い

続きからどうぞ!


――――――


夕餉を一緒に、と黎翔に呼ばれていた夕鈴は、食事が机の上に並べられているにもかかわらず、
その人が見つからないことを疑問に思っていた。
もう食事が用意されているということは、一度はここにいたのかもしれない。
「陛下どこに行ったのかしら?急に仕事かな・・・ここで待ってればいいの?」
広すぎる部屋に1人いるのも落ち着かず、
椅子に座ったり窓から外を見たり、
装飾品を眺めてみたり。
そんなことをしている間に夕鈴のお腹から空腹をつげる小さな音がした。
「うわっ」
静かな部屋ではそんな些細な音さえ響く気がして、
急いで左右を見渡しだれも聞いていないことを確認する。
「だれもいないわよね?うーん、陛下がいないのに勝手に食べるわけにもいかないし・・・」
それ以上鳴らないようにお腹を押さえながら、
夕鈴はせめておいしそうなにおいのないところへ非難しようと行き先を探す。
「こっちとか…勝手に変な部屋に入ったら怒られるかも」
扉では区切られていないから、と薄暗い部屋に足を踏み入れた。
灯台ひとつのみのぼんやりとした明るさの中に、夕鈴は人影を見つけた。
「あ、陛下!」
それは椅子によりかかって眠っている黎翔で、耳を澄ますと小さく寝息も聞こえた。
「こんなところで寝ちゃったら風邪引きますよ」
近づくと机の上に書管がつみあげられていることが分かった。
筆も墨も片付けられておらず、まだ途中だったことが分かる。
「もしかして、一緒にごはん食べるために無理してたのかしら」
最近は2人でゆっくりすごすことがほとんどないから、せめて食事だけ一緒にとろうと黎翔が言い出したのだ。
たとえそれが、偽者の妃が寵を受けていると回りに信じ込ませるためだったとしても。
―――それでもこんなところを見たら、嬉しくなっちゃうじゃない。ずるい。
自分とすごす時間をとるために、無理なんてしてほしくない。
でも、理由がなんであっても、一緒に時間をすごそうと言ってくれたのは嬉しくて。
―――身の程しらずめ。
夕鈴は自らに向かって悪態を吐く。
本当に身の程知らず。これで少しでも喜んでしまうなんて。
自室にまで仕事を持ち込んで、疲れて食事前に寝てしまうとは、
自分の体を大事にしない黎翔に一言言わなくてはと思うが、
ぐっすりと眠り込むその人を起こすことができない。
「なんでこの人は、自分のことは後回しなの」
もっと言えたら良いのに。
休んで。
寝てください。
ちゃんと食べてるんですか。
周りの人も使うんですよ。
全部自分でやらないで。

辛いことがあったら、大変なんだったら、私にもなにかさせて。

ああ、言えない。
こんなとき自分の立場が憎く、自分の生い立ちを悔やむ。
どうして、この人を助けられる立場にいられない。能力もない。
なにもできないから頼ってもくれなくて、こうしてあなたが1人でがんばるところを見てるだけ。

夕鈴は灯台の橙の明かりに照らされた黎翔の顔をじっと見る。
普段は少し遠くからしか見つめることはできない。
もしすぐ近くで見ていたら黎翔に気づかれて、
顔を見つめ返され照れて顔をそらしてしまう。
「きれいな顔」
形自体も整っているが、明かりと影を纏った端麗な顔立ちはまるで彫刻のように生気がなく、
それだけに人ではないほど美しかった。
艶やかな黒髪がその頬にかかっている。
顔にかかってうっとうしそうな前髪だけ、夕鈴は指で黎翔の耳にかけた。
触れた髪がゆれるのにも目が奪われて、めまいがしそうになる。

それくらい、この人が好きなんだ。

隠しても隠しても
どこからか溢れて
ばれてしまうんじゃないか。
それを恐れてもっと奥まで埋めて、ふたをして、
この気持ちになにか違う名前をつけてしまいたい。
手に入らないものに手を伸ばしたくなってしまう、そんな思いはいらない。
手を伸ばして
触れることができたら
手に入れることができたら。
どれだけ願っても意味がないのに。
―――私は、欲しいと口にすることもできない。
黎翔は深く眠りについていて、呼吸は規則正しい。
―――あなたが聞いていなければ、なにを言っても許されますよね。
夕鈴は黎翔の耳をその手で軽くふさいだ。
「好きです、好き。あなたが欲しい」
音にして出してしまった言葉は戻すことができない。
自分の声が、夕鈴の耳に入ってくる。
もう分かっていたはずの自分の気持ちが痛い。
「・・・っ」
夕鈴は黎翔から手を離し、一歩さがった。
このままこの人を見ていたら呼吸が止まってしまう気がする。
これほど自分の中にはっきりと感じられる衝動を、
いつまで無視していられるのか分からない。
ふと目が合った瞬間に、手が触れたときに、声を聞いたときに、
その姿を目にするたびに口から言葉がこぼれそうになるのに、
いつまで隠していなければならないんだろう。
それならいっそ、今呼吸が止まってしまったらいいのに。
ずっと苦しいならそれでもいい。
自分の目からこぼれてくる涙を拭うことができない。
拭っても意味なんかない。
次から次へとばかみたいに出てきて。なんの役にも立たない涙が。
「・・・ばか」
泣いているせいで頭が痛くなってくる。
それもこれも目の前にいるこの男の人のせいだ。
「陛下のばかー」
さらに涙がこぼれてくる。一度泣き出すと、止めるのが難しい。
なんのために泣いているのかもよく分からないのに、
夕鈴はなにもできずに流れてくる涙を頬に感じていた。
「こんな、好きにさせて・・・演技のくせに、ばか!ばか。お腹すいたし、寝てるし・・・」
鼻水も出そうになってきて、あまった袖口で涙を拭くと、
自分の頬を叩いて喝を入れた。
全部はじめから分かっていたんだから、受け入れられないなら自分が悪い。
「しっかりしなさい、汀夕鈴!」
最後に一粒こぼれてきた涙が唇に入ってきて、塩っぽい味がした。
「はー・・・泣いたせいでもっとお腹すいた」
ぐぎゅる、と奇妙な音が聞こえてくる。
憎たらしい黎翔に近づき、夕鈴はその顔をまた見つめる。
せっかくまたとない機会なのだから、一生分見ておけばいいと思った。
長い前髪が少しゆれる。
かすかに空いた口から空気がもれる。その規則正しさが心地いい。
―――私はこの人が好きだわ。
見つめていることに飽きる気がしない。
日が昇ってから寝るまで、この人ことを考えていても足りないくらい、
それぐらい好きで、
それは一生口からだせないから、どんどん心の中にたまっていく。
こうしてその姿を見つめることで、それが溢れて、
少しだけいっぱいになりそうな心に余裕が生まれるかもしれない。
でもそれも、次々生まれてくる『好き』のせいで埋まっていってしまうから、
だから私はずっとあなたを見ていなくちゃならない。
好きなんだって視線を送る。
心の中に収まりきらなくなったものが溢れていく。
溢れて溢れて、でもあなたにばれないように隠す。それが苦しい。
やっかいなこと!
「夕、鈴?」
小さな声で名前を呼ばれた。
寝言かと思ったが、閉じていた黎翔の瞳がゆっくり開いた。
紅の中に、灯台の橙が揺れている。
「起こしちゃいました?」
「ううん、ごめん。僕寝ちゃったみたいだね。ご飯できたとこまでは起きてたはずなんだけどな」
「まだ温かいと思いますよ。召し上がりますか?目覚めたばかりで食欲がないかもしれませんけど」
「いや、食べるよ」
黎翔は椅子から背を離して、指を組んで腕を上に伸ばした。
「はー、椅子で寝ると体が痛い・・・」
「よく眠ってましたね」
「うん、夢も見たかも・・・夕鈴、僕のこと見てたの?」
「え?」
「さっき目を開けたとき、一番はじめに夕鈴が見えて、こっち見てたね」
「あ、ごめんなさい。よく寝てるなって思っただけなんです。
そんなに見てたら気持ち悪いですよね」
夕鈴が慌てて謝ると、黎翔はくす、と小さく笑った。
「違うよ。すごくこっちを見てるから、なんだ夢かなって思ったんだ。
夕鈴はあまり、僕の顔は見ないでしょ」
黎翔の手が夕鈴の手を捉えた。
軽く引くだけで、夕鈴の体も引っ張られて近づく。
「普段も・・・もっと見ててほしいな。だめ?」
「え!だ、だめじゃないです」
どうしてもこの顔に弱い。
首を少しかしげるのがかわいくて。
負けた気がして悔しい。
もう!好きだから、負けるのはしょうがないんだけれど。
「陛下、私・・・」
ぐるる
となにかがうなるような低い音がした。
「!!!」
「あ、待たせてごめんね。ご飯にしようか」

優しい陛下の笑顔がまぶしくて、
嬉しそうに笑ってくれたのが私も嬉しくて、
恥ずかしすぎて、よくわからなくて涙が出ててくるわ。



――――――

(10.23.2011)

いつも陛下x夕鈴カテゴリにいれていいのか迷います。
ラブラブで甘々で、堂々と陛下x夕鈴と書ける作品もいつか書きたいです。

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Re: コメント・イブママさまへ
イブママさま、こんばんは!
またお越しくださって嬉しいです。コメントもありがとうございます^^

なんだか夕鈴をかわいそうにしてしまって罪悪感がありますが、好きな人とすぐに顔を合わせられる距離にいて、気持ちだけ伝えられないのはどうなんだろうと考えたらやっぱり暗めになってしまいました(^^;
伝えるだけ伝えられるのはすごく勇敢でいらっしゃるんですね><
私が夕鈴だったらちらっと見て視線を送るのが限界な気がします。
夕鈴が気持ちを自覚してどうするのか、これから本誌が楽しみですね!!

夕鈴と兎が戯れていたら、かわいいコンビでくらくらしそうです・・・!陛下は動物に懐柔されるタイプなんでしょうか。にこにこ見てる陛下もやきもちを焼く陛下もおいしいです。どっちも見たいです。
かわいいやきもち・・・になるかは分かりませんが、やきもちネタはいつか書いてみたいです。どんなときに陛下がやきもちをやくのかいろいろ妄想してみようと思います、が陛下はなんにでもやきもち焼きそうですね(笑

感想も気持ちも嬉しいです。ありがとうございました。またお待ちしております^^
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