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夕鈴との結婚式の準備を進める黎翔さんと、 黎翔さんに婚約者がいると知って失恋自棄カラオケする夕鈴の話
登場人物 黎翔、夕鈴、青慎
カップリング 黎翔、夕鈴

・タイトルのとおり、またも黎翔さんがかわいそうな話です
・一応前回の現パロのつづきなんですが、読まなくても大丈夫だと思います。




「…え?」

黎翔はスマートフォンの液晶をじっと見つめた。
そこには間違いなく自分の婚約者の名前が表示されている。
間違いなく『夕鈴』に電話をかけているのに、
どういうことだろう。
もう一度耳をあててみると、
ツーツーという機械音のあとに自動的にブチッと無常にも通話は切れた。
動揺しつつも今度は着信履歴を開いて、
数日前に夕鈴からの着信があったことを示していること、
番号が正しいことを確認してもう一度かける。





いったいどういうことだろう。
結婚式の3ヶ月前だ。
両親の、といっても黎翔の親は他界しているため夕鈴の両親に挨拶をして、
式場もドレスも決まり、
そろそろゲストをリストアップしたほうがいいと思って電話したところだった。
夕鈴の携帯電話から聞こえてきたアナウンスは、
黎翔の耳が悪くなければ、
着信拒否を示すアナウンスだった。
いったいどういうことなんだ。
黎翔と夕鈴は、付き合い始めてそろそろ3年になる。
黎翔が代表取締役を務める白陽コーポレーションの社員食堂で、
夕鈴は働いていた。
何度か会話をするうちに黎翔から夕鈴へアプローチするようになった。
プロポーズは夕鈴の誕生日にグループ会社の経営するレストランで、
コース料理を楽しみながらいかにも、という雰囲気の中で行った。
過去に夕鈴は黎翔からの告白に気付かなかったという前科があるため、
今回はとことん分かりやすくした。
婚約指輪はテンプレート的に、ダイヤのソリティアリングにした。
夕鈴が引かないようにダイヤは1ctにとどめて、メレもないシンプルなものだ。
夕鈴の左手薬指には、
付き合い始めて半年のときに黎翔が贈った指輪がまだはまっていたが、
それと交換するようにして着けた。
受け取ってくれる?と聞いたとき、
夕鈴はもう戸惑ったり唖然としたりはせず、
少し顔を赤くして、大きく頷いてくれたのだ。
短大を卒業して、希望通り幼稚園の先生として働き始めた夕鈴。
本当は卒業したらすぐ結婚と思っていたが、
勤務先のことを気にする夕鈴を気遣って2年待った。
今まで大きな喧嘩もしたことないし、
夕鈴1人にずっと愛情を向けてきた。
夕鈴も黎翔のことだけを愛していると自信がある。
それがなぜ、式の直前になって…?
マリッジブルーだとしても、着信拒否はやりすぎではないか。
メールもラインも送れなかった。
黎翔は公衆電話や会社の携帯から夕鈴に連絡することも考えたが、
理由も知らずにむやみに電話をかけても相手にしてもらえない不安があった。
夕鈴はかなり頑固なのだ。
まずはこうなった訳をきちんと確認しなくてはならない。
黎翔は緊張した面持ちでスマートフォンと向き合った。





「はい?」
青慎はその日、カラオケに来ていた。
携帯に表示された名前を見てすぐにボックスを飛び出して、
通話ボタンを押す。
一緒に来ている夕鈴は横目で青慎を見たが、
それどころではないようで激しく歌っていた。
「もしもし」
「あ、青慎君?」
義兄になるはずだった黎翔の声だ。
電話越しに聞く黎翔の声は、
夕鈴の実家に結婚の挨拶をしに来たときより低く聞こえた。
全く色恋沙汰と疎遠だった夕鈴が、
初めてできたと教えてくれた彼氏が大企業の社長で、
しかもイケメンで背が高かったことには本当に驚いたが、
青慎は夕鈴が選んだのなら、と温かく2人のことを見守っていた。
なので、
今の状況には正直戸惑っている。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな」
「はい、なんでしょうか」
「最近夕鈴と連絡取ってるかな」
「あ、はい」
今一緒にいることは言わないほうがいいだろうか。
黎翔さんにフラれて、
死人のような顔をして実家に戻ってきた姉は、
しばらくベッドに顔をうずめて倒れていたと思ったら、
突然僕を引き連れてカラオケにやってきて、
大粒の涙を流しながらロックンロールを歌っていますが。
いったい何の用事なんだろう。
でもあまりこの人は無駄な話はしないからなあ…と青慎は推測しようとするが分からない。
頭の回転は遅くないが、
この人の考えていることはいつも理解できない。
「そうなんだ…最近何か変わったことは言ってたかな。
忙しいとか、なにか」
「うーん、忙しくは、ないと思いますけど」
夕鈴は短大を卒業して1人暮らしをはじめて、
その後はほとんど実家に帰ってこない。
仕事の準備もかなりたくさんあるらしくて、
電車で2時間近くかかるところにわざわざ来るのは大変らしかった。
だからこの家に戻ってきているということは、
それほどの繁忙期ではないのだ。
もしくは、仕事どころではない、とか。
「そうなんだ…」
「なんの用ですか」
少し冷たい声が出てしまい、
青慎は誤魔化すように咳払いをした。
「あ、えっと、
式の参加者リストをそろそろ作りたいんだけど、
連絡がつきにくくて」
「え?なんの式ですか?」
一瞬無音になった。
「なんの式って、夕鈴と僕の結婚式だよ。
日付伝えてなかったっけ?あと3ヶ月だからさ。
場所は夕鈴が一番食事が気に入ったレストランにしたよ。
ドリンクもノンアルコール充実させたから、楽しみにしていて。
あんまり仰々しいのは好きじゃないし、
身内と、夕鈴の友人と、僕がお世話になった人だけ呼ぼうかと思ってるんだけど」
「あの、すいません。
ちょっとすぐかけなおして良いですか」
「え?あ、うん」
青慎は携帯を閉じて、
すぐに夕鈴のもとに戻った。
「姉さん!」
「ウルトラソウッ…なに?」
ジャンプして着地した夕鈴が青慎を見る。
さっきまで涙に溢れていた瞳はもう乾いていたが、
目は赤くてはれぼったい。
青慎は演奏中止ボタンを押して、夕鈴の手にあるマイクを奪った。
「姉さん、黎翔さんにフられたって言ってなかった?」
「言ったけど…」
「それ、どういうふうに振られたのか聞いていい?
直接言われたの?」
夕鈴はゆっくり首を横にふった。
そしてその瞳にまた涙が溢れ始める。
「…これっ!!」
夕鈴は自分の鞄から雑誌を取り出して、
ぼろぼろになったページを指差した。
若い経営者の特集で、黎翔が笑顔で写っていた。
インタビュー記事の質問を、夕鈴が読む。
「休日は何をしていますかって…とこ」
青慎はその回答を見て、首をかしげた。
「えーと、結婚式の準備?」
当たり前じゃないか。
結婚式が近くなっているんだから、
黎翔の休日はほとんど準備でつぶれている。
なんでもおまかせの夕鈴のために、
あちこち連れまわして大変そうだった。
楽しいからいい、と笑顔で答えてくれてほっとしたのだ。
「れ、黎翔さんっ…婚約者がいたなんて、
教えてくれなかった…!」
「え?」
「社長さんだから、お見合いとかも時々あったし、
いろいろ縁談とかきてて、綺麗な人もまわりにいっぱいいて、
でも夕鈴がいいとか言ってたくせに…
内緒で結婚しようとしてたなんて…」
青慎はしばらく瞬きして、
めそめそ泣き続ける夕鈴を放置して電話をかけた。
あまりにも黎翔に申し訳なくて、
青慎のほうが泣きたくなってしまった。





「夕鈴、いいかげんにしてよ!」
黎翔はちょっと怒っていた。
いや、かなり。
さすがに今回はない。
常識の範囲を逸脱している。
黎翔に怒られたのは初めてで、夕鈴はびっくりして体を震わせた。
「僕プロポーズしたよね?」
「……してないと思います」
「したよ!」
またこのやりとりか!
付き合ってたときも全く同じやりとりがあった。
それにしたって、
プロポーズして、
指輪を送って、
両親に挨拶をして、
結婚式会場を決めて、
ドレスを選んで、
ここまできて気付いてないって何者なんだ。
「夕鈴の誕生日にレストランで食事したね」
「はい」
「指輪あげたよね。ダイヤのやつ」
「もらいました」
「来年の誕生日も一緒にお祝いしようって言ったよね?」
「はい」
「来年も、その次もずっと一緒にいたいって言った」
「そうでした」
「だから、お嫁さんになってって言ったよ、僕。
絶対に言った」
「…?」
夕鈴の反応を見て、黎翔は近くにあった机をひっくり返したくなった。
「なんでいつも一番大事なところは聞き逃すんだ」
「す、すいません。
なにか頼まれたのは分かったんですけど、
なにか分からなくてとりあえず『はい』って言ってしまって」
「いや、おかしいでしょ!すっごくおかしいよ!
夕鈴自分がおかしいことを自覚したほうがいいよ!」
夕鈴はしゅんとしてうつむいてしまった。
結局黎翔はこの顔に弱くて、謝りそうになってしまう。
「じゃあなんであの夜、ホテルに泊まったの?」
夕鈴はかなり保守的で、
結婚もしていない男女が同じベッドで寝ることを嫌悪している節があった。
黎翔がそれとなく誘ったときも毎回断っていた。
なのに、その日はそのまま一緒に宿泊して、
一線も越えた。
「あ、あれは…」
夕鈴の顔がパッと赤くなる。
「黎翔さんになら、何をされてもいいって思ってしまって…」
かあああ、とさらに赤くなって夕鈴はいよいようつむいた。
黎翔のほうが唖然としている。
どうしてこんな反応ができるのに、
プロポーズされたことには気付かないし、
雑誌のインタビューの婚約者が自分だと思えないんだろう。
なにも言わずに、身を引こうとしてしまうんだ。
「会場決めとか、ドレスの試着は?」
「あれは、なにか仕事なのかと思って…
提携先とか、次のプロジェクトがなんとかって言ってたから」
忙しい黎翔は気遣ってなのか、
夕鈴は頻繁に、黎翔に対して仕事は大丈夫なのかと尋ねてきた。
だからそんなことを気にしなくて良いといって、
仕事にも役に立つから、などと説明したことはあったかもしれない。
「ドレスだって、広告に使うとかなんとかって言ったじゃないですか」
「確かに言ったかもしれないけど」
あまりにも似合っていたので、
次のカタログのモデルにいいかもね、などとは口ばしったかもしれない。
でもそれは本意ではない。
夕鈴の綺麗な花嫁姿を、そのへんの男になんか見せるつもりはない。
「ご家族に挨拶に行ったことに対しては?
その後なにか式について会話はなかったの?」
「私は黎翔さんが父さんと話しているところは聞いてないですし、
それに忙しくてほとんど実家に顔出してなくて…」
話せば話すほど、
夕鈴は泣きそうな顔になってうつむいてしまう。
「ねえ夕鈴」
黎翔は夕鈴の頬に手を添えた。
「僕に他に婚約者がいたと思って、
弟君連れ出してカラオケで泣きながら歌うぐらい、
僕のこと好きなんでしょ?
なんで何も言わないで、行っちゃうの。
暴言くらい吐いてよ」
「そんなのできませんよっ」
「どうして?
騙されてたと思ったんじゃないの?」
夕鈴の瞳をじっと見つめる。
夕鈴も黎翔のことを見返している。
「だって、黎翔さんは社長だし、かっこいいし、
大人で、私なんか、つりあわなくて…
夢を見させてもらってたみたい。
やっぱり最後は、傍にいるの、私じゃなかったんだって、
悲しいけど、なんか納得しちゃって…」
話している間にも、
夕鈴の目から涙が溢れてきた。
「私より、もっと相応しい人がいるんだろうなって、
ずっと不安だったんです。
だからそれが、現実になったら、
もう頭真っ白で、悲しいけど、しょうがないんだって、
諦めちゃって、」
黎翔は夕鈴の唇を塞いだ。
逃げようとする夕鈴の顔を固定する。
「そんなの許さないよ」
呼吸のうまくできなかった夕鈴は肩を上下させている。
「夕鈴が僕に相応しくないだなんて、
そんなこと言うのは許さないし、
勝手に判断していなくなるのはもっと許さない」
「だって…」
「伝わらないの?
僕は、夕鈴に始めてあったときからずっと好きだよ。
夕鈴の笑顔に癒されるし、
時々困るけど鈍いところもかわいいと思ってる。
一生傍にいてほしいって、
毎日思ってるし、惜しまずに伝えているつもりだよ。
僕のことは信じられないの?
夕鈴のこと愛してるって、こんなにずっと訴えているのに、
なにも伝わってないってこと?」
「…伝わってます」
ぐず、と鼻水をたらしながら夕鈴が答える。
「だからどうしたらいいか分からなかったんです。
好きだって言ってくれたの、嘘じゃないと思ってました。
でも立場とかがあるから、
結婚は仕方ないのかなって思って、
もし愛人にならないかって言われたら、
断れないから連絡できなかったんです。
家族は家族で、幸せにならないといけないから」
「政略結婚しなきゃいけないほど、
うちの会社は危なくないよ。
うまくやってるんだから。
愛人なんていらない。お嫁さんになって。
夕鈴以外はいらないよ」
「…ごめんなさい」
「え?」
まさかここで断られると思わず、
黎翔は思わず真顔になった。
「変な勘違いばっかりして、ごめんなさい。
結婚してください」
「…今、すごく焦ったよ」
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こんばんはー。
♪ウ、ル、ト、ラ、ソウルッ!
が地味に来ました(笑)夕鈴、あの世代なんだ(笑)

最後までヒヤヒヤさせられる気の毒な黎翔さん。
でも立場的に青慎もかなり焦ったでしょうね。
>頭の回転は遅くないが、この人の考えていることはいつも理解できない
たぶん、青慎の陛下(李翔さん)に対する印象ってまさにこんな感じなんでしょうね。
うりうりさんへ
ウルトラソウルな世代は私ですすいませんwww
叫んでジャンプというと他に思いつきませんでした★

夕鈴は黎翔さんがあまりにもすごい存在なので、
プロポーズとかありえなさすぎて自分に当てはめることができなかったんです!多分!
今回の被害者は青慎な気がします。
黎翔さんは常に青慎君の常識を逸脱しており色々大変なこともあるかと思いますが、
いいお兄さんと弟になれそうですねー
原作でも早くお兄さんになってほしいです。
7月22日コメントの匿名の方
こんにちは!
お返事が一ヶ月遅れで申し訳ありませんorz

楽しんでいただけてよかったです。
黎翔さんは陛下よりも素直で、
ちゃんと行動しているのに、
なぜか夕鈴が勘違いして可哀想なことになってしまいました。
結婚したらもう安全なので幸せになれると思います!
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secret


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