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となりのつづき3
登場人物 几鍔、夕鈴
カップリング 几鍔x夕鈴

・つづきです。久しぶりです。
・一応終わったような・・・かんじです。

拍手でつづき読みたいとコメント下さった方、
ありがとうございました。
遅くなりましたが終わりましたよー!

華さん、拍手ありがとうございました。
続きは考えてなかったのですが、
ぼんやりなにか浮かんだらフツーの日常の話でもかけたらいいなと思います!
ーーーーーーーー

「わっ、姉さん!
どうしたの!」

逃げるようにして実家の門をくぐり、
そのまま駆け足で自分の部屋だったところに入る。
台所からふわりと夕飯の残りの香りがした。
途中でぶつかりそうになった青慎には、
なんでもない!と叫んでおいた。
なんでもなくないことは一目見たら分かることだが、
優しい青慎は黙ってなにもなかったことにしてくれるだろう。
夕鈴の部屋はそのままだった。
もともと物の少ない家だから、
部屋が1つ空いても置くものがない。
夕鈴が引越ししてから余計寂しくなった部屋は寝台もそのままで、
夕鈴はその場に倒れた。
明日はこのまま職場に行くとしよう。
下着も全て運んでしまったのは失敗だっただろうか。
だってどうせ目と鼻の先だから、
なにかあればすぐに取りに行けばいいと思っていた。

拒否された。

優しく抱きしめてくれても、
頭を撫でてくれても、
最後は拒絶だった。
几鍔は泣いている人がいたら、
だれにだって声をかけるのだろう。
この下町で有力な商家の長男だから、
町の人間にはだれだって優しい。
その中の1人でしかない。
幼いころからたまたま傍にいただけで、
もしそうじゃなければ几鍔の隣にいたのは別の人。
優しさ以上のものを求めたら、
多分困った顔をする。
「好きって言ったのに」
夕鈴だって几鍔のことが好きだ。
でも青慎のことも好き。
父である岩圭だって、頼りないけれど好きだし、
明玉も好き。
陛下のことも好き。
好きという言葉には色々ありすぎて、
少しのきっかけてその意味が変わってしまう。
にじんでいた涙を振り払うように目をこする。
手が荒れている。
もっときれいにしていればよかった。
少し奮発して良い香油を買って、
髪も綺麗に梳いていればよかった。
王宮で教わった歩き方をきちんとやって、
話し方も丁寧にして、
お淑やかに微笑んで、
瑠霞姫に教わった誘い方を少しでも試せばよかった。
ちゃんと几鍔の隣で女でいられるように、
がんばればよかった。
変な顔をして怒鳴る自分でいいのだと、
弟馬鹿で、色気のないガキで、
それでもいいというその言葉に甘えていたのがいけなかった。
「姉さん?」
びく、と夕鈴は反応する。
夕鈴が1人で泣いているとき、
青慎が部屋に入ってきたことなんて今までなかった。
「ごめん」
青慎はゆっくり歩いてきて、
うつぶせになっている夕鈴の傍で止まった。
寝台に投げ出された手を握る。
「姉さん、几鍔さんが来てるよ。
もし会いたくないのなら、大丈夫。
いないって言って、帰ってもらうよ」
夕鈴は顔を見上げた。
暗くて青慎の顔はあまり見えないが、
とても落ち着いた声だった。
いないなんて嘘はすぐバレる。
それでも帰ってもらう、と口にした青慎の声に、
迷いや戸惑いは感じられない。
黙って几鍔を追い返さないのは、
夕鈴が本当は追いかけてほしかったのを知っているからなのか。
ほとんど無表情な青慎が何を考えているのかは、
夕鈴には分からなかった。
「ううん、大丈夫。
いつもの喧嘩なの。
いきなり来てごめんね」
「ならいいけど…
部屋に来てもらっていいの?」
「うん」
ゆっくり起き上がる。
青慎は部屋から出るときにもちらりと夕鈴のことを見たが、
夕鈴が頷いたのでそのまま外へ向かった。



しばらくして、
足音が聞こえる。
青慎とは違うから几鍔だろう。
夕鈴は少し身構えるようにして、
姿勢を正して立っていた。
手は前で軽く重ねて、
顎を引いてきりっと前を見る。
なにがあっても泣いたり、取り乱したり、
逃げたりしないで、
きちんと向き合うことをずっと学んでいたじゃないの。
「…夕鈴」
「几鍔」









いきなり駆け出した夕鈴の行く先は、
ひとつしかない。
追いかけて飛び出して、
数は少ないがまだ通りに出ている人々に尋ねれば、
やはり間違いない、夕鈴は実家に向かっていったようだった。
灯りのまだある家にゆっくりと踏み込んでいけば、
青慎が片付けをしているところだった。
少し待っていてください、
と言われてそれはお願いというよりは命令のようだ。
勝手に押し入りたい気持ちを抑えて、
分かったといってその場で立っていた。
しばらくして降りてきた青慎は何か言いたげに几鍔のことを見たけれど、
いつものように微笑んで「どうぞ」と道を示しただけだった。
夕鈴は部屋の中央に立っていた。
背筋をきちんと伸ばして、
前をじっと見ている。
一瞬たじろいでしまうくらいに迫力があった。
机の上に、
あのときの簪がそのまま置かれていた。
それを今手にとって、夕鈴に挿してやったらきっとすごく似合う。
けれど、
その場所に戻してやりたいという気持ちはなかった。
「…夕鈴」








「几鍔」
名前を呼ばれるととたんに覚悟がゆらぐ。
何を言われても動揺せずに、
全て受け入れなくてはと思うのに、
それでも、
名前を呼ばれなくなるかもと思うと泣きそうになる。
離婚なんてしたら世間体が悪くなってしまうから、
せめて夕鈴がこの町から出ないとならないだろう。
もう会えないかもしれない。
縋ってでも別れたくないと思うのに、
次に拒絶されたら絶対立ち直れないのが分かっていて、
夕鈴は自分から口を開くことができなかった。
「夕鈴、」
几鍔が一歩近づいてくる。
夕鈴はその場から動かなかった。
少しでも身体のどこかが動いたら、
とたんに全部崩れてしまいそうだった。
夕鈴は重なった手に力を込めた。
その手を几鍔が上から握る。
「…っ!」
几鍔がちら、と机のほうに目を向ける。
なにかあったかしら、と考えるが夕鈴には分からなかった。
「俺は、
お前が、いつでも帰ってこれる場所でありたかった」
几鍔の声は小さかったが、
静かな部屋に響いてよく聞こえた。
「昔から、
面倒なことに首つっこんで、
ビービー泣いてるくせに意地っ張りで、
だれにも助けてって言えないお前が、
本当に困ったときに、俺がいるだろって言ってやりたかった」
几鍔の手に力が篭ったのが分かった。
「けど、今は…」
夕鈴はその先が聞きたくなくて、
とっさに逃げようとしてしまった。
几鍔の手を振り払って、
廊下へ出ようとするが几鍔に腕を掴まれる。
抵抗しても敵うはずがなく、
そのまま2人で寝台に倒れこんだ。
「最後まで聞け!」
「聞きたくない!」
「んなこと分かってっけど、いいから聞けよ!」
「いやよっ!
聞いたら終わりだもん!」
夕鈴の目から涙が溢れてくる。
別れようといわれて、
夕鈴にはそれを拒否する権利がない。
几鍔は否定していたけれど、
同情するみたいに結婚してもらって、
それを破棄されても夕鈴はなにもいえない。
だったら最後まで足掻いて、
それでこの面倒見がよくて、優しくて、
お人よしの几鍔が少しでも夕鈴のことを哀れに思って、
あと1日でも結論を先延ばしにしてくれたらいい。
「言わないまま終わりになんかできるか」
低い声で言われると、
夕鈴はそれ以上言い返せなくて黙ってしまった。
もう夕鈴が何をしようと、
几鍔の中では答えが出ていると分かってしまった。
もっと涙が溢れてくる。
「悪かったよ、乱暴にして。
けど、本当に、今余裕がねーから」
バツが悪そうに几鍔が目を逸らした。
「待ってるとか言ったけど、
あの簪が似合うお前が嫌だ」
几鍔が机の上に目をやる。
夕鈴もちら、と目線を向けて、なんのことを言っているのかようやく理解した。
「ずっと、お前に負担にならないようにしなくちゃと思ってたし、
細けえこと気にするべきじゃないって分かってんだけど、
俺は、お前が思ってるより、
お前が好きで、
結構自分でも引くくらい、独占欲もあるんだ。
お前がまだ李翔のこと引きずってんのに、
無理やり嫁に来させたのも悪いと思ってるし、
好きでもない男の傍にいるのは苦痛かもしれねえけど、
傍にいると、どうしても、自分のものにしたくなる」
几鍔は長く息を吐いて、
夕鈴の目をまっすぐに見た。
「ほんとに、お前のことを思うなら、
もう1回あの男に会わせてやれるように、
動くべきだと思ったよ。
でも無理だ。
もう誰にもやりたくないし、
お前がちょっと嫌がっても、
何も言わないうちは、ここにいてくれんじゃねぇかって、
期待してて…
なあ、本当に、俺じゃダメなのか?
お前が俺を好きになる可能性はないのかよ」
夕鈴は自分を見下ろしている几鍔のことをじっと見つめていた。
今何を言われているのかよく理解ができなくて、
しばらく瞬きを繰り返しているだけだ。
夕鈴は几鍔のことをダメだなんて言ったことは一度もないし、
もうとっくに好きだ。
なんと答えを発して良いか分からない。
夕鈴は恐る恐る几鍔の頬に手を伸ばした。
「……」
意味を図りかねているのか、几鍔の瞳は揺れるだけで何も言わない。
ずっと不安にさせてきたんだ。
夕鈴は自分が自分のことだけでいっぱいいっぱいで、
几鍔がどんな思いで自分と結婚したのかきちんと考えてもいなかった。
後宮から失恋して戻ってきたとき、
どんな思いで気にかけてくれていたのかも知らなかった。
「…っ!おい、なんも言わないで泣くのはマジでやめろ」
「だっ…て、う…」
なんて自分は馬鹿なんだろう。
大事な人を不安にして、
自分ばっかり勝手に検討違いな勘違いをして逃げ出して。
「きがく…」
「なんだよ」
「すき」
「は?」
「わたし、几鍔のこと、とっくにすきになってたのに、
いってなくて、
ごめんなさい。
いつも、迷惑かけてばっかり…」
「馬鹿、だから泣くんじゃねぇって」
几鍔があやすように頭を撫でる。
それに安心するともっと涙が出てくる。
「うっ、なんかっ、最近、全然目合わせてくれないし、
触ってくれないし、
結婚してから1回しか抱いてくれないし、
私、かわいくないから、嫌われたのかと思ってて…
すごく勘違いして、ほんとに、恥ずかしい」
ぐずぐず泣いていると、
視界がぼやけて何も見えない。
唇に温かいものがあたったのはちゃんと分かった。
「いいのか?」
なんのことを聞いているのかは目をみると分かる。
瞳の中に欲が見えるのが嬉しいなんて馬鹿みたい。
頷きそうになるのを、
隅っこに追いやられていた理性が戻ってきて抑止した。
「いや」
だってすぐ傍に青慎がいるんだもの。




「いやなのかよっ」
こんだけ煽っておいて…
と几鍔は横から頭を殴られたような気持ちだった。
「あとで」
「お前ほんとに…」
「なによ」
「なんでもねーよ」
青慎に見送られて、
几鍔と夕鈴は並んで歩いていた。
もうすっかり暗くなって、
ほとんど人通りもない。
夕鈴は隣を歩く几鍔の手をとって、
ぎゅっと握り締めた。

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下町の悪女
夕鈴、これだけ几鍔のことを煽っておきながら「嫌」ですかw
いや、本当、無自覚だけど、すごい悪女ですね(笑)

普段は黎翔様×夕鈴のお話が大好きなんです(2次作でも)。でも、こちらのお話は几鍔×夕鈴でも大好きです。

お互いを思いあっているのに、幼馴染として、一緒にいた時間が長すぎた故の素直になれない二人のやりとりと、すれ違いに、不覚にもちょっと涙ぐんでしまいました。

ごちそうさまでした(^^)
Norahさん
Norahさんこんにちは。

夕鈴はほんと煽るだけ煽って最後はサラッと逃げるので悪女だと思いますよ(笑)

最近は夕鈴が陛下のこと好きすぎて、
なかなか黎翔x夕鈴以外を書きにくいところではあるんですが、
几鍔と夕鈴はとてもお似合いだから原作でくっつくことはなくても、
ずっと大事な存在でいてくれたらいいなあと思ってます。
陛下がいつまでもヤキモチをやくくらい。

とにかく幼馴染いいですよね!
ありがとうございました。
このお話大好きですー!

初めましてなのにスミマセン。素敵すぎて叫んでしまいました…
これからも頑張ってください。
yu-さんへ
こんにちは!

ありがとうございますー!
最近更新のんびりめですががんばります!
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