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となりのつづき2
登場人物 几鍔、夕鈴
カップリング 几鍔x夕鈴

となりのつづき2です。
※几鍔と夕鈴が夫婦です。
※1は年齢制限つけておりましたが、今回は健全です。すれ違い几夕。

つづきからどうぞ


うちに戻ると夕鈴の姿はなかった。
そういえば、
昨日着替えを取りに行かなくてはと言っていたし、
片付けもするのだった。
几鍔が自分の部屋に入ると、
汚れていた寝具は全部交換されていたし、
全て整理整頓されていた。
窓の外に白い寝具が干してある。
洗濯するときに何を思っていたんだろう、
と考えをめぐらせるが、
今の夕鈴が何を考えているのか分からない。
昔はもっと単純で、
顔を見ればだいたい何を思っているか分かったのだが。
はあ、と息を吐いて、
少し落ち着いたところで夕鈴の家に向かうことにした。





「夕鈴、いるか?」
玄関先には誰もいないので勝手に中まで進む。
台所に顔を出すと、そこには夕鈴はいなくて、
代わりに青慎が昼ごはんを作っているところだった。
汀家に女がいなくなるから、
青慎は家事も以前よりさらに積極的にやるようにしている。
岩圭は青慎を勉強に集中させるため、
手伝いを雇うつもりではいるのでそれまでの間になるが、
料理は好きだから自分でするかもと言っていた。
「几鍔さん。
姉さんだったら、夕飯の買い物に出かけました。
とりあえず片付けは一通りすんで、
後残ってる荷物を運ぶだけです。
後で手伝ってもらえたら助かるんですけど…」
「ああ」
「ありがとうございます。
あ、あとごはん食べていきますよね」
「いいのか?二人分だろ」
「大丈夫です。
姉さんに几鍔さんが来るかもって聞いて、
ちょっと多めに作っておいたので」
「分かった。
荷物は夕鈴の部屋か?」
「はい」
「玄関の方に移動しとく」
「ありがとうございます」
夕鈴の部屋に入ると、
引越しの用意にしては控えめが箱が2つ置いてあるだけだった。
持ち上げてみるとまあまあ重かったので、
二つ同時に1人で運ぶのは難しそうだ。
後で青慎と2人で運べば問題ないか。
持って行くのは服くらいで、
他に夕鈴が必要とするのは料理道具や掃除道具だから、
もう家にあるものを使えばいい。
本も読まないし、
身支度をするものは結婚祝いに几家から全て送られている。
本来ならは嫁入り道具として花嫁の実家から用意するようなものも、
几家の女主人が自分の好みに合わせて買ってしまっていた。
部屋の中にはほとんどなにも残っていないが、
机の上になにか光を反射して光っていた。
いったん箱は床に戻した。
「簪?」
銀細工で繊細な花を象ってある。
花の中心には宝石が付いている。
金庫に入れて保管するようなものではないが、
夕鈴の持ち物にしては随分金のかかりそうな装飾品だ。
婚礼の儀で使ったものと同じくらいはするだろうと予測する。
夕鈴が自分で選んだものではない。
下町でこんなものを付けて歩いていたら、
すぐに盗難にあうか、
運が悪ければどこかに連れ込まれて身包みをはがされるだろう。
持ち上げると、シャラシャラと金属のぶつかり合う音が涼しげだった。
夕鈴は王宮で掃除婦をしていたというけれど、
彼女の所作や、愛想笑いをするときの微笑み方、
ふとしたときの表情を見ていると、
それは嘘ではないかと疑ってしまう。
もともとお淑やかという言葉から程遠い夕鈴は、
どちらかというと大雑把で、
家事をやらせてみると意外と丁寧で細かいのだが、
その動きはがさつだったはずだ。
水周りを磨いていれば必ず荒れるはずの手は白く滑らかになっていたし、
髪だって誰かに香油をつけて手入れされているかのような…
几鍔がたまに見る、取引先の貴族の令嬢のようだった。
それも下町で過ごす時間が長ければもとの荒さに戻ってはいったのだが、
時折、驚くくらい気品のある顔をする。

夕鈴とともに時々下町にやってきていた李翔を思い出す。
胡散臭い男と思いながらも、
あの男が夕鈴に何かしら特別な感情を抱いていたのも分かっていて、
最後は待っていることにした。
騙されて泣いて帰ってきて欲しいとは思っておらず、
あの男と2人で幸せになるのなら、
それはそれで祝福してやらなければならないし、
幼馴染として見守るのが自分の役目だと信じていた。
夕鈴のことを信じている。
どこでも、だれと一緒でも幸せだと笑ってくれる、
そういうところが夕鈴にはある。
あの男が夕鈴のそんな性格に惹かれたかどうかは知らないし、
そもそも夕鈴を女性として好いていたのかも今となっては確認しようもない。
ただ夕鈴が、
李翔のことを異性として、
今までにない形に特別に想っていたのだけは間違いなかったと確信がある。
どこにいたって笑っていられるのなら、
それでいいと。
辛くて仕方なくなったら下町に戻ってくれば良い。
そのとき下町で夕鈴を困らせることがあれば、
なんとかしてやろうと思っていた。
いつでも帰ってこれる場所を作っておくのが、
几鍔のできる最大限のことだった。
面倒ごとにばかり首をつっこんで、
損な役回りを引き受けるお人よしで馬鹿な幼馴染が、
好き勝手に暴れまわって、
最後に安心して戻ってこれる場所でありたいと思っていた。
なのに今は、
その反対に夕鈴のことを一生縛り付けてしまったようで、
それがどこかに引っかかっている。
結局几鍔も、
夕鈴の人の良いところに付け入って今の状態にある、
という考えが時折とても重たく感じられる。
「几鍔?」
名前を呼ばれて現実に戻ってきた。
後ろに夕鈴が立っている。
「もうお昼ご飯できたわよ。
青慎ったら、料理も上手なの。
ほんっとになんでもできて良い子だわ!
…どうしたの?」
机の前で棒立ちにたっている几鍔に近寄った。
「ああ、その簪。
退職のお祝いにもらったの。
似合わないでしょう?」
夕鈴はふっ、と笑って、几鍔の手から簪を取り、
自分の耳の上のところにあててみる。
シャラシャラと綺麗な音がする。
1人でこの簪を見ていると、
色々思い出してどうしても暗い気持ちになってしまうのだが、
几鍔の隣にいるとなんでもないものに見えてきた。
とても綺麗な思い出として、
いいところだけ覚えていればいいのだ。
めったにできる経験ではないし、
陛下のことは本当に好きだった。
失恋の痛みも含めて自分の成長のきっかけになってくれた。
この失恋がなかったら、
喧嘩ばかりしていた幼馴染の優しさを認められなかっただろうし、
こうして今夫婦になって、
幸せだと感じることもなかっただろう。
「いや、似合ってるぜ」
「…?」
几鍔は夕鈴の頬に手をやった。
下町に戻ってからはまた日焼けして少し乾燥している。
化粧もしてないし、
髪も櫛で梳いてはいるがぼさぼさだし、
服も一級品ではない。
それでも簪は夕鈴のために作ってもらったものなのだろう。
とても似合っていた。
夕鈴のことを一番ではなくてもよく知っていると思っていたのに、
いつのまにか知らない人間になってしまっていたようだった。
これから知っていくから、許して欲しい。
昔から変わってないと勝手に思って、
小さな変化に戸惑って傷つけてしまって、
それでも後悔しているか、と聞くことはできない。
首をかしげている夕鈴を抱きしめる。
「なに?どうしたの?」
「別に」
好きな男と一緒にならせてやれなかったことを、
謝らなくてはと思うのだが、
それも口にしたくなかった。
下町が夕鈴の本当の居場所だとずっと思っていたのに、
今は自信が持てない。










昼ごはんを食べて、夕鈴の荷物を几鍔の家に移動させた。
棚に入れる作業もすぐに済んでしまう。
そのあと几鍔は仕事に行ってしまった。
夕鈴はなにか家事をしようと思うのだが、
もう掃除は完璧だし、夕飯の下準備には早い。
仕事を1日休みじゃなくて、半休にすればよかったかも、
と思うがもう人手はいらない時間帯だろう。
少し外に出ることにした。
なんだか今日の几鍔は変だったなあ、と思い出す。
昨日の夜のことを考えると少し気まずいのは分かるので、
そこまで気にしてるわけでもないが、
なにか口に出すのを躊躇っている様子だったのが気になる。
夜のことを思い出すととたんにしゃがみこんで穴に入りたい気持ちに襲われる。
思ったよりも痛くはなかったのは、
感覚が麻痺するぐらい体が熱くてしびれていたからだろうか。
誰かと一緒に隣で眠りに落ちるのが、
とても幸せなことだと知れて良かった。
黎翔に恋をしていたときは、
些細なことで傷ついたり思い悩んだり、
一挙一動にいちいちドキドキして本当に落ち着かなかった。
今は人前では恥ずかしいという気持ちを除けば、
だれにも遠慮せずに几鍔の手を握ったり、
寄りかかって体温やにおいを感じたりするのも自由だ。
少し前までおせっかいを焼いてくる几鍔に、
甘えるなんて考えることもできなかったのに、
今はなにかあればすぐに頼ろうと思えるのも不思議だった。
そういえば、
一度も好きだと伝えてない。
几鍔に言うのは照れるが、たまには素直になってもいいかもしれない。
帰ってきたので一緒に夕飯を食べて、
片付けと残っている雑用をこなしたらもう夜になってしまう。
今日はもう何か言われる前に夕鈴は寝衣に着替えた。
明日からまた仕事が始まるから早めに床に入ってしまおうと寝台に座った。
几鍔はなにやら仕事関係の書類を抱えて机に向かっている。
「寝ないの?」
「もう少しかかるな…別の部屋にいく」
「いいわよ、別に。
明るくても寝れるし。おやすみ」
「おやすみ」
「…几鍔?」
「なんだ」
振り向いてくれない。
夕鈴は一度起き上がった。
「どうした?」
几鍔の横まで来るとさすがにこちらを向いてくれる。
「…顔見たかっただけ。
おやすみ」
なんだか急激に恥ずかしくなってきて、
逃げるように寝台にもぐりこんだ。
好きだと言うのは当分無理そうだ。
灯りが消えて真っ暗になる。
「仕事は?」
「明日にする。
だれかさんが1人じゃ寝れねえみたいだからな」
「そんなこといってないじゃない!」
「元気だな」
「なによっ」







「明玉、ちょっといい?」
「なに?」
仕事が終わって着替えたところで、
夕鈴は明玉を呼び止めた。
夕鈴より一足早く嫁いだ明玉は、
もうすっかり家に馴染んで女主人の貫禄だ。
「えーと」
「なによ、歯切れが悪いわね」
いくら親友といっても切り出しにくい。
なんて説明したらいいんだろう。
「言いにくくて」
「なに?几鍔さんのこと?」
すぐに言い当てられて、
夕鈴は少し顔が熱くなるのを感じつつ頷いた。
「喧嘩?
…はいつものことよね」
「喧嘩っていう喧嘩はしてないんだけど…
むしろ喧嘩になってないことが気になるというか」
「あら、珍しいじゃない」
「そうなのよ。
なんか最近あんまりブスとかガサツ女とか言ってこないの」
「几鍔さんも素直になったってことじゃない?
夕鈴のことかわいいのよ」
「それはないわ…それに、
なんだか距離を置かれてる気がして」
夕鈴は最近の出来事を少しずつ説明した。
こんな話を人にすることはないので照れるが、
自分の力ではどうしても解決できない。
婚礼の夜は一緒に寝て、
夫婦らしいこともあったけれど、
その後は一切几鍔が夕鈴に触れることはなかった。
抱きしめてくれたのも、
引越しで荷物を運んだときが最後だ。
話をするときも微妙に目を逸らされている気がする。
寝台が1つしかないので一緒に寝ることは寝るのだが、
夕鈴とは反対方向を向いてしまっている。
「私、なにかしたのかしら」
「うーん…夕鈴のせいじゃないと思うけど…
几鍔さんってあんまり考えてること顔に出ないから、
分かりづらいわよね」
「そうそう。
文句の1つでも言ってくれれば、
私も言いたいこと言えるんだけど、
本当に何も言ってこないのよ」
無視されているわけではないし、
一緒に生活する上で問題があるわけでもない。
それても最近の几鍔の態度は違和感がある。
「私もちょっと読めないわ。
本人に直接聞いてみるのがいいんじゃない?」
「…そうしようかな」
「几鍔さんと夕鈴なら、
気心も知れてるし、
色々考えて悩むより、真っ向から解決するほうがいいと思うわ」
「そうよね。
悩んでも答えでないし、聞いてみる」
「また何かあったら言いなさいよ。
でも、几鍔さんのこと、信じてあげなさい。
私ずっとあんたたち2人のこと見てたけど、
すごく大事に思ってるのは伝わってくるのよ」
「うん。ありがとう」
距離は置かれているけれど、
嫌われているわけではない。
それは夕鈴にも分かる。
何があってもこの下町に住む人間として、
困ったことがあったらいつでも助けてくれて、
大切にしてくれる。
ぴた、と夕鈴の足が止まった。
確かに几鍔は夕鈴のことを人として大切にしてくれて、
見守ってくれているけれど、
それが問題なんじゃないだろうか。
一応嫁にとってはくれたけれど、
一度抱いてみたらやっぱり女に見えなかったとか、
そういうことなんだろうか。
あの日も朝起きるといなくなってしまっていた。

でも好きだとは言ってくれたし、
その言葉が嘘だったとは思えない。
真剣な顔で思いを口にしてくれたとき、
信じられない気持ちと同時に、とても嬉しかった。
几鍔は人を傷つけるような嘘をつく人ではないから、
あれは本当だったと信じたい。
好きだったとしても、
結婚してみたら印象が違って愛想が尽きたという可能性はあるかもしれない。
だんだん不安になってきた。
そもそも夕鈴は、
自分に女性や妻としての魅力があるとは思えなくて、
自信がない。
家のことなら完璧に管理してみせるし、
質実剛健、質素倹約を心がけて慎ましやかに生活している。
生活するのはどんな環境でもうまくやってみせると豪語できるけれど、
女としてのレベルはとことん低い。
一緒に連れて歩きたくなるような外見でもなければ、
触りたくなるような柔らかい肌や髪もしていない。
顔もいたって普通で、
かわいげなんて今まで身につけたこともない。
かわいげがないと散々言われて来て気にしたこともなかったのに、
それが大問題な気がしてきた。
早足で家に帰る。
もう日も落ちてるから几鍔も家にいるはずだ。
「几鍔!」
「夕鈴?」
案の定部屋におり、座ってなにか書いていた。
「すげー顔してんぞ。
どうした」
「ちょっと聞きたいんだけど」
「なんだよ」
大またで几鍔のところまで歩いて、夕鈴は足を止めた。
なんと切り出せばいいだろうか。
私のこと、女としてどう思う?なんてあまりに直接すぎて言えない。
「どうした?」
夕鈴がいつまでも黙っていると、
几鍔が椅子を動かして夕鈴と向き合った。
「わ、私…」
「ん?」
「あんたの言うとおり、
ブスだし、ガサツだし、かわいげもないし」
「なんだよいきなり」
「ガキだし…色気もないしっ」
涙がにじんできた。
泣くのは久しぶりの気がする。
「泣くなって。
どうした?誰かになんか言われたのか」
几鍔が立ち上がって抱きしめてくれる。
とても久しぶりだ。
夕鈴も几鍔の背中に手を回して、
ぐっと力をこめた。
「急にどうした」
几鍔が、夕鈴の頭にぽん、と手をのせる。
ゆっくりと伝わってくる体温に、夕鈴は安心して目を閉じた。
「几鍔…」
やっと気持ちが落ち着いてきた。
夕鈴は顔をあげて、
几鍔の目を見る。
「あの」
「…っ」
話そうとした瞬間、急に身体を引き離された。
「…!悪ィ、」
慌てて謝るが、しかし几鍔は目を合わせようとしなかった。
「…大丈夫」
乾いた涙がまた戻ってくる。
「ごめんね」
情けない顔をしているだろう。
どうしたらいいか分からなくて、中途半端に笑って、
夕鈴は部屋を出た。
後ろで名前を呼ばれたが、
立ち止まる気にはなれなくて、
逃げるように実家に走った。
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