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桃夭
登場人物 方淵、紅珠、水月、氾大臣、オリキャラ1・2
カップリング 方淵x紅珠

・マイナーカプ祭りをするはずだったのに結局いつもの方淵x紅珠書いてるけど許して下さいすいません青慎どこいった
・紅珠が外国に嫁ぐことになった話
※注意※
・名前はないけどオリキャラが出てきます!
・名前はないけど捏造された国が出てきます!
・捏造した氾家の次男がちょっと出てきます!


以上が大丈夫そうな方だけ続きからどうぞ。
若干『LOVE★LETTER』のつづきのような感じですが読まなくても問題ありません。

ーー

桃の夭夭たる 灼灼たり其の華
之の子于き帰ぐ  其の室家に宜しからん
桃の夭夭たる  蕡たる有り其の実
之の子于き帰ぐ  其の家室に宜しからん
桃の夭夭たる  其の葉蓁蓁たり
之の子于き帰ぐ  其の家人に宜しからん

(詩経)
ーーー


仕度をしておきなさいと言われて、
はい、としか返事ができなかった。





見たことのない国へ向かう車に揺られて、
紅珠は小さく肩を震わせていた。
すぐ傍にいる兄に心配をかけないように、
泣くのは我慢しようと思っていたのに耐えられない。
声を出さないようにしていても、
頬をつたって涙が落ちる。
水月が肩を抱いてくれる。
温かくてまた涙が出てくる。

迎えに来てくれなかった。

最初に父から話を聞いたとき、
遠い国の皇子の生誕を祝うのだと言われた。
詳しく聞いていけばそれば、
そこは紅珠の嫁ぎ先になることが、
ほとんど決定しているようだった。
相手が紅珠のことを気に入れば、
紅珠はそのままその国に留まることになる。
わざと嫌われるようなことをする度胸も、
理由も、紅珠にはない。
不安を水月にぽろりともらすと、
いつでも戻ってきて良いと言われた。
直接そう口にしたわけではないけれど、
この年の離れた兄は、
紅珠が本気で拒否すれば、
なんとかするよ、と言う様な表情をしていた。
けれど、
紅珠は自分の役割を嫌というほど知っている。
育っていくうちにずっと意識してしまうのだ。
氾家の1人娘として生まれたからには、
それを最大限に活かして家の繁栄に貢献しなくてはならない。
父は表立ってそれを言う人ではなかったけれど、
紅珠だってきちんと教育を受けて、
聡明に育ってきた。
そして、なにより家族が好きだ。
じっと自分を見つめる兄に、
紅珠は何も言わないでいた。
ただ、次の日に手紙を頼んだ。
自分よりは会う機会が多いだろうから。
水月は何も問わずに受け取ってくれ、
その日のうちに渡して返事をもらってくると言ってくれた。






だれにも言わなかったが、
紅珠と方淵は恋仲だった。
最初のきっかけは、
時の国王珀黎翔の寵妃が、
紅珠のところに宿泊していたときだった。
国王から贈られたという花を持って、
臨時補佐官をしていた彼が紅珠のところにやってきた。
そのときはお互い、
もともと名前と顔はなんとなく知っていて、
形式ばかりの挨拶もほどほどに、
ほとんど目も合わさなかった。
その後は、兄が寒いからと出仕を控えめにしていたとき。
自分の家にいると柳方淵が遣いを送ってくるから、
と水月は紅珠のところへ逃げ込んでいた。
それを引っ張り出すために、
なんと本人自ら乗り込んできた。
紅珠にも、
自分の家の醜聞を承認するような行為は控えろ、
と睨んで文句を言って出て行った。
紅珠の書いた小説の、
陛下の描写が気に入らないと手紙をよこし、
それから少しだけ手紙のやりとりをした。
なにかの折に会えたときには、
一言二言だけ会話して、
話したりないときには手紙を書いた。
方淵からの贈り物は、
いつも後に残らない消耗品か、
菓子や花だ。
とても質のよい文具がほとんどで、
執筆活動に大いに役立った。
紹介してもらったものは、
今でも父に頼んで取り寄せてもらっている。
柳家の贔屓で手に入りづらい場合は、
方淵に頼んで注文してもらった。
だから、
髪飾りが贈られてきたときには心底驚いたものだ。
お返しはどうしたらよいかと散々迷って、
紐を組んで手紙を沿えた。
意味のないものは嫌いだと知っていたから、
なにかしらの役に立つものを、と選んだのだが、
後日それで髪を結んでくれていると知って嬉しかった。
身につけてくれると思っていなかった。
せいぜい帯剣するときに、
飾りにでもしてもらえれば、と。

紅珠の書く小説のように、
華やかな愛はそこにはなかったけれど、
とても静かで、心地のよいものだった。
お互い確認したことはなかったけれど、
何もなくても伝わってくるようで、
紙の上の文字を指でなぞれば分かるくらいに。
それが都合のよい勝手な解釈ではなくて、
事実なのだと分かったのは、
なにかの祝宴の席だった。

男と女では違う部屋に招かれていて、
紅珠と方淵が鉢合わせたのは本当に偶然だった。
方淵の顔は少し赤くなっていて、
無理に飲まされたのではないかと心配になった。
「お水をお持ちしましょうか」
ふら、と足元を崩した方淵に尋ねると、
すぐに、結構だ、と拒否された。
情けないところを見られたと思ったのか、
方淵はそれ以上その場にいたくないようですぐ部屋に戻ろうとした。
しかし、やはり身体は思うように動かなくて、
紅珠を壁に押し付けるように倒れ、
なんとか床にしゃがみこみそうなところを、
腕で支えてやりすごしたところだった。
「無理なさらないでくださいませ」
「すまない」
「いいえ、
やっぱりお水を…」
紅珠が上を見たのが合図だったのか、
しばらく無言で見詰め合って、
そのうち自然に方淵が身をかがめた。
紅珠もなにか考えるというわけでもなく、
ただそうするのが当たり前のように目を閉じて、
気付いたときには口付けをした。
現実だったかどうかも分からなくなるくらい軽いものだった。
方淵は自分が何をしたか信じられないというような顔をしていて、
紅珠もどうしたらいいか分からず黙っていた。
「…今のは、」
「ずいぶん飲んだのですね。
私もです」
誤魔化すつもりで笑った。
なかったことにもできるくらいに、
本当に一瞬だった。
「酒のせいではない」
方淵に腕を掴まれた、
少し痛いくらいだった。
「嫌なら、
拒否をしてくれ」
好きな相手に真剣な顔で言われたら、
紅珠が動けるはずがない。
もう一度目を閉じると、
今度は一瞬よりは少しだけ長かった。
「戻る」
「はい」
相手の体温を覚えられそうだと思ったのに、
離れるとすぐに寒くなる。
名残惜しそうにいつまでも見つめていると、
廊下を曲がる手前でこちらを向いてくれた。


その後もずっと手紙のやりとりは続いていた。
お互いの家族は気付いているのかいないのか分からない。
特に気をつけて隠しているわけでもなかったし、
本気で調べられたらすぐに見つかると分かっていた。
方淵の贈り物は髪飾り以来はまた消えてなくなるものに戻ったが、
手紙の内容に、
他愛のないものが混じることが増えて、
それだけで紅珠は思わず微笑んでしまうのだった。






手紙の返事は、わかった、と一言だった。
それなのに方淵は迎えにきてくれなかった。
父が嫁ぎ先を決めてしまったこと。
相手が気に入ればとは聞いていたけれど、
ほとんど決定事項だった。
とても遠くに行ってしまうこと。
貴方といられるならば、
どんなことがあってもかまわないのだ、と
離れるのがとても辛い、と。
出発する日時も書いた。
相手の国についたら、
すぐに段取りがついてしまうだろうから、
出発前に逃げてしまいたいということまで、
間接的に書いた。
そして、
わかった、と返事が来たのだ。
それなのに迎えに来なかった。

紅珠に連れ添うのは、
紅珠と一番仲の良い水月という情報も伝わっているはずだった。
水月なら邪魔をしないで、
むしろ協力してくれただろう。
1人で逃げる勇気はないけれど、
手をとってくれれば全力で走った。

自らの口で父親に逆らうことができないような、
そんな女は嫌いでしょうか。
貴方は、
自分で自分の道を切り開くことができるかもしれないけれど、
私にはそこまでできないのだ、と

何を考えても言い訳しか出てこない。
この車に乗り込む前に、
馬に跨って出て行けるような女だったら、
貴方と幸せになれたのかしら。





一晩寝て起きると、
周りの景色が変わっていた。
馬の休憩のために少し休みを取る。
平野が広がり、
空は青い。
遠くのほうには色とりどりの花が咲き乱れ、
町も見える。
とても豊かそうな場所だった。
「父上は紅珠を愛しているよ」
長旅で少し疲れた顔をした水月が、
苦笑いするように言った。
紅珠もそれは分かっている。
父はずっと紅珠を後宮に入れようとしていたが、
それができないとなって、
白陽国の国王の妃に負けない地位を用意してくれようとしている。
しかもこの国は、
明るく、豊かで、とても良い場所だ。
「分かってますわ」
いつまでも泣いてはいられない。
ぐずぐずになった目元では、
皇子に顔を合わせられない。
美しくして、
凛として立って、
誇りを持っていなくてはいけない。
化粧道具をどれほどそろえてきたか覚えていないが、
そのまま婚礼の儀を行えるくらいには豊富だろう。
「兄様、髪を結うのを手伝って。
きっと最後になってしまうから」
器用な兄は、
朝起きれれば時々紅珠の髪を結ってくれる。
使用人より綺麗にやってくれるから、
紅珠の付き人が嫉妬するほどだ。
「うん」
水月が寂しそうに笑った。







「紅珠!」
白陽国の王宮とは違い、
石を主に使った建築だった。
日の当たらない廊下はとてもひんやりしていた。
機嫌の良さそうな父が、
紅珠を見つけてパッと笑顔になる。
「よくきたね」
「こちらが紅珠殿ですか」
「ええ、私の1人娘です」
父の傍に立っている穏やかそうな青年が、
紅珠を見てとても驚いた顔をした。
「お目通り叶いまして光栄ですわ。
氾紅珠でございます。
このたびは真におめでとうございます」
事前にもらっていた肖像画で、
皇子の顔は知っていた。
「ありがとう。
事前に顔を知らなくて良かった。
会っていたら好きになってしまっていたよ」
屈託のない笑顔で笑う皇子は、
とても善良そうな人だった。
この人が紅珠の夫となるはずの人だったのでは?
父親のほうを伺うように見ると、
ただにこにこと笑っている。
「紅珠、仕度をして。
実はもう遅いくらいだよ」
父に手を引かれて、
別の部屋に連れて行かれる。
人形のように椅子に座らされ、
化粧を直され、
髪もせっかく水月がしてくれたのを解かれて、
見たことのない形に結いなおされた。
衣装は青い。
白陽国では婚礼の衣装といえば赤なのに、
この国では青色なのだろうか。
最後に紅をスッとのせられ、
やはり引っ張られるようにまた違う部屋に移動した。
天井の広い部屋の床は大理石で、
それが見えなくなるくらいに人であふれていた。
そこにいる人々は誰もが皆幸せそうで、
酒の入った器を持って騒いでいる。
紅珠と同じような色の、
見たことのない形の衣装を着た水月がたっていて、
人ごみに酔ったような青い顔をしていた。
「水月兄様、大丈夫ですか」
「あまり・・・
婚礼の式とはいえ、
ここまで人が多いと私は耐えられないよ。
もう外に出てしまおうかな」
「まあ、
末妹の晴れ舞台なのに、
そんな寂しいことをおっしゃらないでくださいませ」
ぷう、と頬を膨らませると、
水月は首をかしげた。
「紅珠!」
後ろから呼ばれて紅珠が振り返る。
二番目の兄だった。
金の刺繍でいっぱいの、
豪華な衣装に身を包んでいる。
その横にいる女性も同じように細やかな刺繍の衣装を着ており、
重そうな装飾品を身体中にまとっていた。
煌びやかな服を少しうっとうしそうにして、
兄と腕を組む女性はそれでも幸せそうだ。
「来てくれてありがとう。
今日からきょうだいが増えるが、よろしく頼む」
「はい?」
にこ、と微笑む女性に抱きしめられ、
両頬に口付けされた。
そういえば、
この国の挨拶はこれだったと思い出して、
紅珠も同じことをすると彼女は嬉しそうに笑ってくれた。
嵐のように兄と兄嫁は過ぎ去り、
会場を見渡して父を探す。
事情を説明してもらおうと目を凝らして姿を探すのだが、いない。
代わりに見つかったのはこんなところにいるはずのない自分の、
恋人なんだかなんだか分からない裏切り者の柳方淵だった。
「方淵様?」
方淵は紅珠を見ても特に驚いた様子もなく近づいてきて挨拶した。
なんだかもう訳が分からない。
説明してもらわなくては。



方淵の手をとって外に連れ出し、
適当な場所に腰掛ける。
「どういうことですの?」
「なにがだ?」
「なぜ私ではなく、
兄の婚礼の式が執り行われているのですか」
「・・・貴女は皇子との結婚を望んでいないと思っていたのだが、
違うのか?」
困惑した表情の方淵に、
紅珠はますます訳が分からなくなった。
「望んでおりませんでした」
「今は望んでいると?」
「そういうことではありません!」
どこまでも見当違いな返答に苛立ってくる。
「貴方、
私の手紙に分かったと返事をしてくださったじゃないですか」
「ああ。
だから貴女がこの国に嫁がなくて良いように、
貴女の兄とこの国の姫との縁を繋いで、
氾家と王家を結びつけただろう」
「はい?」
紅珠が素っ頓狂な声を出すと、
方淵は力強く頷いた。
「安心しろ。
向こうの国王には話をつけている。
あの姫は男勝りで嫁の貰い手がなかったから、
喜んでいたぞ」
「それはどういう・・・」
「氾家の次男が、
しおらしい女が嫌いだと教えてくれたのは貴女だろう」
「それはそうなのですが」
状況がよく読みこめない紅珠は、
入ってくる情報がうまく処理できなくて眩暈がしていた。
とりあえず分かっているのは、
自分がこの国に嫁ぐという話がなくなったということだ。
「貴方は、
私の手紙に分かったと返事をくれたのに、
迎えに来て下さらなかった」
「それは、」
方淵は泣きそうな顔の紅珠の手をとった。
「家に戻れなくなったら、
貴女は悲しくないのか?
家族と仲がいいだろう」
「はい」
「実は・・・氾大臣とは話をしてきて、
私が柳家の家督を継がないという条件で貴女と結婚してもよいと言われた。
受けてくれるか」
いよいよ容量オーバーだ。
紅珠の目からぼろぼろ涙がこぼれてきた。
とたんに方淵の仏頂面が崩れて、慌てる。
「い、嫌なのか?
なにが不満だ。
白陽国にいられるし、
親や兄弟との関係も問題ない。
私は確かにまだそこまで地位は高くないが、
将来は保証する。
貴女の気持ちを無視してここまで話を進めたのは悪かったが、
手紙では私と添い遂げるのもやぶさかではないと…」
「違いますわ!これは驚いて泣いてるの!」
「そうか…」
「それに、嬉しくてです」
紅珠が微笑むと、
方淵も緊張が解けたようで、
紅珠の手を握ったままぎこちなく微笑んだ。
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こんにちはー。
今朝、またしても出勤前にこちらのSSを発見いたしました。
でも今日は余裕があったので、電車乗り遅れの危機は免れましたよ(笑)
そしてこのSSの余韻で今日一日が乗り切れることを確信しました!

>迎えに来てくれなかった。
>紅珠の書く小説のように、華やかな愛はそこにはなかったけれど

紅珠もすっかり、物語と現実は違うということを理解する年齢になって
(もともとわかってはいたと思いますけど(^^;) )、
でも現実の愛も心地よいことに気づいて、
しかしそれでもどこかで夢見ているんだな、ということが感じられました。

その紅珠の期待に対する方淵の言葉足らずっぷりが!
もちろん彼はそうすることが最善と思っていたわけで、
実際それで良かったんですが、たぶん紅珠の期待が
どんなだったかということは全く想像つかなかったんでしょうね。
現状がこうである→それならこうするのが最善である
という図式に従って、その他の選択肢については
考えもしなかったんだろうなぁ。

お妃さまと一緒にいる紅珠はぶっ飛んだイメージがありますが、
水月さんとの会話とか見ているとわりと普通ですよね。
方淵もカタブツですけど、たぶん紅珠はほぼ彼の理想とする
「貴族のお姫様」なんじゃないかと思います。
やっぱりいいカプですね、うんうん(*^_^*)
おりざさん

こんばんは!
恐れいります~
方淵ばかじゃねーかと言われるかと思ってたので嬉しいです。
ありがとうございます。
うりうりさん
こんばんは~!
出勤前というところまで読んで、
また電車乗り遅れ…?!と焦りましたがよかったです。
セーフ!

紅珠はとても賢い子だと思うのですが、
恋愛をしたことがなくて、
今まですべてを与えられていたから唯一知らない男女間の愛というものにすごくいろんなイメージがついてしまったんじゃないかなーと想像しております。
最初は理想と現実のギャップに疑問を抱くかもしれませんが、
ちょっとずつ自分の中で調整しつつやっぱり時々なんか違う!と思ってて欲しいです。
方淵を相手に選んでしまったらコレジャナイ感が満載でしょうねw

方淵はなんでもかんでも仕事と同じように片付けようとしていそうです。
結婚式とか決まっても、
予算と期限と人員配備とか全部リストにして、
効率とか経費とか細かく計算して紅珠が唖然としそう。
彼の頭の中はいつも
課題:○○
解決策A:メリット1、2,3 デメリット1,2,3
解決策B:メリット・・・
とかになっていて、その中に気持ちとかいう文字にも数値にもできないものは入り込む余地がないんじゃないかと(笑)

紅珠は夕鈴の視点からすると不思議かもしれませんけど、
きちんと良識のある素敵なお嬢さんだと思います。
きっといいお嫁さんになってくれる。
素敵カップルですよねー!原作で絡んでないのが不思議なくらい妄想が広がりますw

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