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「         」【完結】
登場人物 陛下、夕鈴
カップリング 陛下x夕鈴

・なんだか急ぎ足ですが完結でございます
・正直本誌がいろいろアレなので
みなさん、こんなもの読んでる場合じゃないですよ!
結局この選択肢か。
黎翔が夕鈴との未来を真剣に考えると、
最終的にはいつも行き着く先は同じで、
離れるしかない。
あまりにも明白な答えすぎて、
それ以外はどうしたって現実味がないのだ。
ただ問題はいつにするかということだ。
今までずっとまだ大丈夫、もう少しと引き伸ばしてきて、
この夢はその中途半端な立場を終わらせろという警告か。
夕鈴には夕鈴の人生があるから、
先のない立場で縛り付けるのはよくない。
でも自分以外の人間と幸せになってほしくない。
とはいってもいつまでも幸せでいてくれなくては嫌だ。
自分の傍においてそれを叶えることはできない。

こんなに他人に執着してどうしたんだろうと思う。
ひたすら前を見て、
判断を鈍らせるようなものは全部捨て置いてきたはずなのだ。
立ち止まって考えて、
答えを見送らせて欲しいなんて今更、いえるものか。







政務室での夕鈴はそわそわと落ち着かない様子だった。
先に夕鈴が戻っていって、
その夜遅くに後宮を訪ねた黎翔はさっそく聞いた。
「なにか気になることがあったの?」
「へ?」
双六のコマを進めようとしていた夕鈴は手を止めた。
「なんの話ですか」
「政務室にいたとき、
集中力がなさそうな顔してたから」
言われて思い出したかのような顔をする。
「あれは、
陛下がぼんやりしてたからですよ」
「僕?」
思い当たる節がない。
「そうですよ。
陛下、時々私のほうを見て、
ぼんやりしてたじゃないですか。
なにかやっちゃったのかな~と思って…
「見てたかな」
それほど夕鈴に視線をやっていたつもりはなかった。
「…私の、勘違いですね」
夕鈴の顔が赤くなる。
顔を隠して小さくなった夕鈴から、
恥ずかしい…と聞こえた。
「見てたかも」
黎翔は、
顔を覆っている夕鈴の両手を手にとった。
じっと目を見る。
「なにも考えなくても、
夕鈴のこと見ちゃうときがあるからね」
「…!またそんなこと言って!」
「本当だよ~」
自分でも不思議だと思う。
知らぬ間に目が追ってしまうくらい、
夕鈴は見てて飽きない。
どうしてだろう。
なぜ夕鈴と一緒にいると、
なにもしなくても安らぐのだろう。
身体が温かく緊張がほぐれて、
この心地よい時間がずっと変わらなければいいと思う。






「おめでとう」
「ありがとうございます、陛下」
夜だった。
雲のむこうで霞んではいるが、満月の夜だ。
「陛下、私ずっと言いたかったことがあって…」
「なに?」
夕鈴は黎翔をしばらく見つめて、
それから微笑んだ。
「あの……
ありがとうございました。
後宮にいた時間は夢のようで、
いろいろあったけど、
楽しかったです」
楽しかったというわりに、
表情はどこか悲しそうだ。
黎翔は夕鈴の手をとった。
空気は寒いが、手は温かい。
優しく伝わってくる熱は、
後宮で夕鈴と話しているときに似ている。
「夕鈴、」
「覚えていてくださいね。
私はどこにいても、陛下の味方です」
もう下町では婚礼の儀の準備はほとんど終わっているらしい。
夕鈴の衣装の刺繍は、
明玉が手がけたのだと嬉しそうに教えてくれた。
商家に嫁ぐのは大変だが、
体力勝負なら負けません、と楽しそうだった。
本人は険悪な仲だといっていたけれど、
下町の人間が几鍔と夕鈴の仲を取り持とうとしているのは傍から見て明らかだった。
好きなことを言い合って、
黎翔から見ても、
2人の仲はうらやましかった。
「さようなら」
王宮の外であまり長居をするのは好ましくない。
下町の人間が国王と一緒にいるところを見られたら、
妙に勘ぐられる可能性がある。
それは分かっているが、
あまりに別れの時間が短いと感じる。
他にもたくさん言いたいことがあったのだ。

君がいてくれてよかった。
お礼を言わなくちゃいけないのは僕のほうだよ。
傍にいてくれて
すごく嬉しかった。
もっと一緒に見たいものがたくさんある。
聞いて欲しい話もある。
まだ時間が足りない。
これまでの時間なんて、
ほんの一瞬だったじゃないか。
もう少しだけ、待ってほしい。

「夕鈴」
呼び止めるが、
夕鈴はどんどん歩いていってしまう。
もう少し、と思ったがそれでも足りない。
一生かかったって足りないくらいだ。
やっぱりだれにもあげられない
僕の隣で幸せになってくれなきゃいやだ。

「夕鈴!」

だれかに聞かれるかなんて構わない。
大声で叫ぶが振り向いてくれない。
走って奪わなければ。
なのに足が動かない。
身体が石のように重たい。
呼吸も苦しくなってくる。

「夕鈴、行くな!
ずっと傍にいてよ、
愛してるんだ!」






「え?」
目が覚めて、
黎翔は夢の中の出来事をゆっくり思い出した。
頭が痛くなってきた。
頭を押さえるがよくならない。
いったい何を口走って…
「陛下?」
夕鈴の声に過剰に反応してしまい、
飛び上がった。
その反応に驚いて今度は夕鈴がビクッと身体を強張らせる。
「す、すみません…
もう起きている頃だと思って、
朝餉をご用意したんですが」
「あー…そうだったね」
滋養強壮に良い卵が手に入ったと聞いて、
夕鈴が朝ごはんの雑炊とか良いですねと言っていた。
それを聞いて作って欲しいと言い出したのは黎翔のほうだ。
「ありがとう」
「まだ起きたばかりですか」
「ううん、
着替えるのが面倒だっただけ」
「そうですか」
分かりやすい嘘だっただろうか。
夕鈴はあまり気にする様子もなく準備をしているからいいか。
椅子に座ると食欲をそそる香りがする。
「三つ葉をいれたので、
後味もすっきりすると思います。
卵がすっごくいい色なんですよ!」
嬉しそうに夕鈴が解説する。
「陛下?」
「え?」
「どうしたんですか、ぼーっとしてますけど」
夕鈴がじっと顔を見てくる。
なんとなく顔が熱くなってくる。
「ちょっと顔も赤いし…熱ですか?」
「そんなことないよ」
下を向いて雑炊を口にいれる。
味がしない。
香りがするし味付けはしてあるのだろうが、
なにも感じない。
動悸がする。
急いで食べる。
仕事をしよう。仕事をすれば何事もなくなる。
無心で書類を処理したい。
黎翔は勢いよく雑炊を食べて、
お茶を飲み、
夕鈴にお礼を言ってすぐに部屋を移動した。
着替えた記憶がないが李順が何も言わないから着替えはしたらしい。







薄々勘付いてはいたか。
むしろとっくに気付いていたのかもしれない。
気に入っているとかおもしろいとかいうのは自分への言い訳だったのだろうか。
一度認めてしまえばとても単純なことだ。
分かりやすい。
好きだから一緒にいたいと思い、
傍にいると安心する。
理由なんてない。
愛しているという感情に説明なんてつけられないから、
理屈で納得できなかったのも仕方ない。
しかしそれは困る。
自分で管理できないような感情なんていらない。
そんなものあっても困る。
「うーん…」
「なんですか、陛下。
さっきから唸ってばかりで。
そんなに大変な案件ありますか」
「いや、違う…
もっと大変な問題だ」
「……?」






庭を歩いたからって気分転換にはならないが、
夕鈴に誘われると悪い気はしない。
ちょっと様子が気になったので、
もしよかったら…
とそんな気遣うような顔をされたら断れない。
原因は夕鈴だと言ってやりたいがその欲求は抑えて、
時々後ろを伺いながらゆっくり歩く夕鈴を見ていた。
上下に揺れる結った髪や、
小さく手が動くだけでそれを見てしまうのは病気か。
思わず横に目を逸らす。
「あ」
前を行く夕鈴の足が止まる。
すぐ前には桂花の木がある。
「流石にもう香りはないですね」
「香り袋のほうが本物より持ったね」
夕鈴が黎翔や李順や果てや侍女のみなにまで、
香り袋を作って配っていたのはもうずっと前に思える。
あまり持ち歩かなければ、
本物が全て落ちてなくなってしまった後でも、
しばらく楽しめるくらいに香りは残っていた。
「李順さんに、あちこち同じ香りで趣がないって言われたんですよ」
夕鈴が苦笑いする。
「僕は好きだったけど」
「ほんとですか?
じゃあまた作ります!」
次の年の桂花が咲くとき、
夕鈴はまだ後宮にいるだろうか。
少なくとも今は、
夕鈴にとって来年一緒にいることが、
そう非現実的ではないのだと
それだけは言えそうだから喜んでもいいだろうか。
庭が橙色でいっぱいになるころ、
後宮も同じ香りであふれているのを想像する。
「あちこち配るとまた怒られちゃうし、
今度は陛下だけにしますね」
「…うん」

夕鈴と一緒にいると、
心臓が一回止まるのではないかと思うときが何度もある。
それくらい驚く。
夕鈴のいうことがあまりに知っている常識と違うものだから、
頭が真っ白になる。
胸がきゅっと締められる感覚は今はもうお馴染みで、
嫌ではない。

『特別』というのはなんて重苦しいんだろうと思っていた。
人と違うこと、
唯一の存在であること、
そういうことに付随する責任や必要な覚悟に、
窒息しそうになるときがあった。
『特別』でいることがとても嬉しいことだと、
夕鈴に会わなかったら知らずにいたんだろう。
このまま変わらなければ良いなんて嘘なのだ。
本当はもっとずっと未来の話をしたいし、
分からなくなるくらいたくさん約束をしたい。
自分にとって夕鈴が特別なように、
自分も夕鈴の特別になれたらいいと思っている。

一緒にいる未来を選びたいと思った。
隣で、同じものを見たい。
新しい気持ちを教えて欲しい。

僕の手からも、
たくさんのものを与えてあげたい。

「ねえ夕鈴」

踏み出してしまえばきっと怖くない。
怖いという気持ちを教えてくれたのが君なら、
それを踏み越えたいと思わせてくれるのも、同じ。

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うりうりさんへ
こんばんは。
遊びに来て下さってありがとうございます。

結構思いつくままに書いておりましたが、
矛盾なかったでしょうか。よかったです…
恐れ多いお言葉ありがとうございます。

李順さんはちゃんと陛下を尊敬してるし、
陛下の意思を尊重して、悪くないようにいろいろセッティングしてくれているのでしょうけれども、
それを色々ぶち壊す陛下と夕鈴がいて何もかもバカバカしくてしょうがないんじゃないでしょうか。
とてもかわいそうです。

李順さんは、
陛下が夕鈴を傍においておきたくて、他に手段がなかったら別に構わないと思うんですけれども、
どうなんでしょうね。
妻を選ぶときに好き嫌いで選ぶ人じゃないでしょうしね~~
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secret


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