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77777の企画
「童話テーマの原作沿いSS」
更新したらこちらに書き足していきます。
一応7つ目指します。

1.李順と夕鈴(シンデレラ)「分かっているけど拾いになんかいかないしましてや探し出したりしたくない」
2.浩大と夕鈴(人魚姫)「キヅカレナイト」
3.克右と夕鈴(マッチ売りの少女)「夢を楽しむ」(51話ネタバレ
4.水月と夕鈴(白雪姫)「したいあいこうか」

克右さんの口調が迷子です…
1.李順と夕鈴(シンデレラ)
「分かっているけど拾いになんかいかないしましてや探し出したりしたくない」


李順は不機嫌だった。
仕事が終わらないことに対してではなく、
やけに寒い室温に対してでもなく、
机から体を離した瞬間にふわりと柔らかく舞って、
音も立てずに落ちた布に対して腹が立っていた。
こんなものを机に突っ伏して寝ている李順の肩にかけるような愚か者は、
この王宮で1人しか思い浮かばなかった。
しかし彼女は1人で用もなしに李順の部屋には来ないだろう。
なにか大切な話で、
人払いが必要なことで、
緊急の話題といえば思いつくことは李順の主である黎翔のことか、
給与のからむことだろうか。
どちらにしろ彼女が騒ぐことは李順にとっては大した問題ではないので、
いちいち部屋になど来なくて良いと睨みたくなる。
「まったく…」
李順は見かけの薄さよりもずっと柔らかい羽織を几帳面に畳み、、
眼鏡を正して後宮に向かった。



後宮の廊下は少し肌寒く、おのずと早足になる。
「お妃様」
「李順さん」
大きい声で話さなければ聞こえない距離まで侍女を下がらせた。
完全に人を払うとよからぬ噂を立てられそうだから、
李順と夕鈴は完全に2人きりになることはない。
「何か用ですか」
「あ…はい」
短く尋ねると、夕鈴は慌てた様子で奥から手紙を持ってきた。
古い木簡に短く書かれたものだ。
「あの、今月のお給料もらいすぎではないかと思いまして」
「は?」
言って良いものか悪いものか、と遠慮する口調だった。
夕鈴は恐る恐る李順の顔色を伺う。
李順が手紙を受け取ると、
それは夕鈴の弟の青慎からだった。
なんでも、いつもより渡された額が大きすぎるため、
使えなくて半分は取っておいてあるそうだ。
何かの間違いではないかと確認してほしいとのことだった。
「こういうわけなんですけれど」
李順は鼻で笑うと、
その手紙を夕鈴に返した。
「それは賞与です。いらないなら返してください」
「え?!」
「夏もあげたでしょう」
「な、夏…?」
「まあ、夏は下っ端妃見習いの全くのひよっこでしたから、
あまり弟君も気に止めなかったのかもしれませんが、
一応不定期ながら昇進や昇給も考慮しております」
夕鈴は開いた口がふさがらない様子だった。
「私が、バイトの給与もまともに計算できない能無しだと、
思っていたのですか」
「めめめっそうもないです!」
夕鈴は慌てて否定した。
「…でも、最近疲れていらっしゃるようだったから」
付け足すと、李順は顔をしかめた。
「貴女に心配されるようではおしまいですね。
余計なお世話です。寝るときは寝ています」
「すみません」
「これを」
しょぼくれて下を向いてしまった夕鈴に、
羽織を返す。
「これも余計です。
誤解されたらどうしてくれるんですか」
「はい」
夕鈴は頷いて受け取った。
「…次からは、
あのような場所で寝ないように気をつけますよ。
貴女に心配されないように」
少し補っただけて、
夕鈴の表情はぱっと明るくなった。
調子がくるうから、その顔はやめてほしいのだ。




2.浩大と夕鈴(人魚姫)「キヅカレナイト」

決して油断したわけではない。
黎翔の命令で夕鈴を護衛していた浩大は、
いつものように空気を読まず夕鈴に近づいてくる侵入者を片付けていた。
もちろん夕鈴に気付かれるようなヘマはしない。
しかし、最後の最後で侵入者の1人が夕鈴の前に飛び出して、
何かを投げつけた。
もちろん浩大はすぐその間に入ったし、
投げつけられたものは浩大が受け止めた。
夕鈴には何も当たっていないはずだったが、
その何かは浩大にぶつかると弾けて、
中から出てきたのは気体だった。
毒に慣れている浩大でも少し不快に感じるものだ。
即効の致死性があったらまずい、と夕鈴のほうを振り返ったのが遅かったのか、
その舞い散る毒がきらきらと光って、
それが夕鈴の髪に絡む様子が少しでも綺麗だと思ったせいで遅れたのか、
今となってはどちらか分からないけれどとにかく、
浩大は夕鈴を遠ざけるのが遅かった。
「お妃ちゃん!」
侵入者には頚椎に針を投げておいたから動かないだろう。
夕鈴の体は支える力を失ってがくんと倒れた。
頭を打たないようにとっさに支える。
割れた玉の中に残った毒を小指の先にとって観察し、
なんとなく検討をつけると少し舐めた。
舌の先が痺れる。
後に障害が残らない程度の応急処置はできそうな処方だ。
素早く懐から解毒剤を用意して、
いくつかを混ぜて夕鈴に飲ませた。
解毒剤を飲ませると、
夕鈴の顔を少し穏やかになる。
それを見て安心したころ、
後ろから人の近づく音が聞こえてきた。
複数人いるから、黎翔のほかにも何人か連れてきたのだろう。
姿は見られないほうがいいか、と浩大はゆっくり夕鈴の頭を降ろしてやって、
自分は屋根の上に登る。
黎翔と、側近の李順、王宮付きの医師が1人に護衛に5人ほど。
後ろの護衛はいらないとして、
まあまあ腕の良い医師が来たから自分の役割はもうないだろう。
ふう、と一息ついたところで浩大は意識を失った。



「うーん」
やっぱ舐めたらまずかっただろうか。
味が分かったほうが早く判断できると思ったが、
手足が動かないのはよろしくない。
そこまでの効果があるものには見えなかった。
ぼんやりと目を開けると、張老師の顔が目の前にあった。
「バカじゃのう」
「危ないかと思ってサ」
「確かに危なかったが、それで自分が寝たきりとはのう。
いくら解毒は時間と勝負とは言っても…」
「寝たきりじゃナイって」
何度か手を握って開いてもう大丈夫だと思い、
浩大は勢い良く立ち上がった。
「おっと」
しかし足は思ったように動かず、少しふらつく。
これはしくじった、と舌打ちする。
その背中を誰かに支えられた。
「大丈夫?」
「え、お妃ちゃん?こんなところで何してんの」
流石に驚いて、普通に尋ねてしまった。
夕鈴だって毒を吸って治療中だったはずだ。
しかもなぜ自分のいる場所がばれているのか。
「お見舞いにきたの。浩大が助けてくれたんでしょ」
「どーも。…陛下に聞いた?」
「違うわ。後姿だけ見えたから」
「……」
「お饅頭でお礼になるかしら」
「うん、サンキュ」
受け取ってひとつ一口でほおばる。
もう体は自由だった。
しかしなぜだかぴりぴりと、痺れる感覚が残っているのが疑問だった。




3.克右と夕鈴(マッチ売りの少女)
「夢を楽しむ」(51話ネタバレ)


「傍には行かんのか」
ぼんやりと夕鈴の見つめる先に、
誰がいるのか分かっているから尋ねる。
夕鈴は少しだけ顔を傾けた。
「…?」
恋人だということは否定するけれど、
この2人が想い合っているのは傍から見ていれば明らかで、
李順だって気付いてはいるのものの、
認めることが無意識に許せなくて否定するのではないかなどと思ってしまう。
あの男が、こんな分かりやすい事実に気がつかないなんてあるものか。
か、もしくはあの方の出方を探れず、
今一歩踏み込んだ意見が言えていないのか。
克右にはまだ状況が完全に明らかになっていないが、
この健気な少女を応援するのは別に構わないという気持ちでいる。
なぜか気持ちを肯定しないが、
時々黎翔を見つめる表情は、
全てを物語っているように見える。
「あの方を見てたんだろ?」
夕鈴の顔がぽっと赤くなる。
「そ、そんなことは…ありますけど!」
一度話してしまえば、
夕鈴の反応はなかなか素直だった。
好きだ、とは認めないが、
否定もしない。
「おっと、この前みたいに泣かないでくれよ」
「泣いたことなんかないです!」
「そうか」
今日はじわりと涙も浮かばず、
克右はほっと肩の力を抜いた。
直接の原因は黎翔であるとはいえ、
二度も自分の前で涙を流させては、
そろそろ頭と胴体が離せてしまうかもしれない。
気分によっては。
「私はそんな立場じゃないですし、
見るのは、自由だから」
だんだんと、夕鈴の視線が遠くなる。
その瞳に映っているのは黎翔だが、
焦点はもっと遠くにあるように思えた。

「夢は、見たっていいじゃない。
現実とは区別してるわ」

ずいぶんと真っ直ぐ言う。
最初から混じることのないことのように。

そこまで線を引くほど、
2人の距離が遠いとは思えないのだが、
それを自分が口にするのは野暮だろうと克右は口を閉じた。




3.水月と夕鈴(白雪姫)「したいあいこうか」

一歩動くと、彼女の顔を影が覆う。
眩しそうだった表情が穏やかになった。

なぜ一国の妃がこんな土の上で寝ているのか、
とは水月は思わない。
理由には特に興味がなかった。
背の低い雑草の中に似合わない質の着物を身にまとっているが、
地面に広がる淡い栗色の髪と満足そうな寝顔は、
その場所にいるのが当然かのようだった。
きっと誰にも見つからないと思ってこの場所を選んだのだろうか。
王宮の庭でも特に地味で、
手入れも他の手のかかる場所より頻度が落ちる。
人もあまり歩いてこないし、
少し1人になりたいときにはもってこいの場所だった。
もちろん水月は1人になりたくなったら王宮になんてとどまらず、
好きなときに帰ってしまうのだが、
ふらりと足を運んだときに見つけたこの場所は嫌いではない。
少し湿っぽい香りがすることを除けば、
日当りも広さも丁度良い。

水月は夕鈴の頭のところでしゃがみこんで、
顔を覗き込む。
水月の髪が前に流れた。

「……」

これだけ近づいても音がないのだからしょうがないのか、
夕鈴はぴくりとも動かなかった。

「こんなに無防備では困りますよ」

呟くが、やはり反応はない。
しかしそれ以上は水月は近づかなかったし音も立てなかった。
そのまましばらくその顔を見つめていたが、
遠くにかすかな音を聞いて、
ふぅ、と小さく息をつくと立ち上がった。
お役御免か、と
そもそも役が最初から割り当てられていないのか。
少しずつ近づいてくる足音の主に気付かれないように、
そっとその場をはなれた。

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