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夕鈴が李順さんの婚約者な話 3
登場人物 李順、夕鈴
カップリング 李順x夕鈴

・タイトルのとおりです。
・「3」ですがつながっているようなつながっていないような。

つづきからどうぞ。
なかなか演技はうまくなってきていたと思うのに、
こればかりは夕鈴もぽかんと口をあけているしかなかった。
「君は、李順の恋人だろう」
「え?!」
いつものようにニセモノ夫婦の黎翔と夕鈴は一緒にお茶を飲んでいて、
ほっと一息ついたところでさらりと、
まるで明日の天気は曇りだとどうでもいいことを告げるように、
黎翔は言った。
尋ねた、というわけでもなく、
ただ単に、事実の確認というか、
分かりきったことを呟くように。
夕鈴はしばらく黎翔を凝視したあと、
その後に起こりそうないろいろを想像して青くなって、
震えて、泣きそうになったが、
その様子を見て黎翔はすぐに話を続けた。
「案ずるな。李順を罰するつもりはない」
「ほ、ほんとうですか?」
李順がどれだけ主の黎翔のことを思っているかは、
夕鈴はある程度は分かっているつもりだ。
大事な主人に、
まさか裏切り者だとでも思われて、
あまつさえ侮辱罪で処刑にでもなったら責任も取りきれない。
夕鈴は涙目になっていたところだったのだが、
黎翔のそんなつもりはなさそうな穏やかな顔を見て落ち着くことが出来た。
「ただ、君のことが心配なんだ」
「私ですか?」
「ああ。君は、自分の恋人にこのような仕事を頼まれて、
辛くはないのか」
尋ねられて、夕鈴はきょとんとした。
そして、笑った。
「最初は、ちょっと悲しくなったこともありましたけど…でも」
「でも?」
「でも私、李順さんを信じてますから」
「……そっか」
「陛下も優しいし、ごはんもおいしいし、
今は全然平気です」
明るく答えるが、黎翔はあまり聞いてはいなかった。
ただ、「そう」と短く呟いて、
その日はそのまま解散となった。





夕鈴は、その夜寝台に寝転がって、
黎翔の質問を反芻していた。
平気といえば平気だ。
もう王宮の仕事にはかなり慣れてきたし、
夫婦の演技の相手をする黎翔はとても優しい。
何不自由なくしてくれるし、
働きたいといえば掃除などもやらせてくれる。
何より今までは会いたくても、
相手からの連絡を待つことしができなかった婚約者と、
あまり堂々とではなくてもほとんど毎日顔を合わせることができる。
文句などは言っていられなかった。
しかしそれと同時に。
「平気とかいったけど、寂しいときはあるのよね」
独り言を呟く。
例えば、1人で廊下を歩いている李順を見かけたとき、
嬉しくなって近寄ると冷たく睨まれて距離を置かれる。
淡々と事務的な話しかできないまま一月がすぎてしまうときもある。
笑顔は本当に貴重で、
愛されているかよく分からなくなるときもある。
ただ信じている。
信じてはいるけれど、
それだけではどうしようもなく不安になるときもある。
なんの理由もなく触ったり、
抱きしめてほしいときだってあるのだ。
「こんなこと、言えないものね」




「李順」
翌朝机の上にどさどさっと豪快な音を立てて積まれた書簡を斜めに見て、
黎翔は隣に立っている側近に視線を移した。
「なんですか
「夕鈴はいい子だな」
それだけ言うと、それ以上は説明を加えず、
黎翔は仕事にとりかかった。
そうなってしまってはもう李順は仕事の話題しか出すことができず、
ひたすら資料の読み上げや分析などをしていった。

やっとの思いでキリの良いところまで片付けたときにはもう夜だった。
李順は机の整理整頓だけは几帳面にすますと、
すぐさま後宮に走った。
ぼんやりとした顔で座っている婚約者の腕をつかむ。
「夕鈴」
「李順さん!」
「ちょっと来なさい」
「え?」
ただならぬ雰囲気だ。
形だけの敬称をつけるのも忘れている。
夕鈴は何か失敗しただろうかとここ数日の出来事を思い返すが、
何も悪いことはした覚えがなかった。
ただ黙ってついていく。
2人きりになると、
李順は壁に夕鈴を押し付けて逃げられないようにしてしまった。
これは、そうとう怒っている、と夕鈴は体が冷たくなるのを感じた。
「貴女、陛下になにかしたんですか」
「え?どういう意味ですか!
何もしませんよ」
「貴女は放っておくとすぐ男をたぶらかすんですから」
顔をしかめられて、
意味の分からないまま怒られた夕鈴は今度は反撃する番だった。
「なんてこと言うんですか!
私、たぶらかしたことなんてありません」
まったく見に覚えのない罪を着せられて、
夕鈴は憤慨していた。
今まで、好きな人の気もうまく引けたことがないのに、
なんということを言うのだろうか。
「そんなことはありません。
まずは私でしょう」
「え?」
「それから王宮の官吏だって、
陛下の妃ということですから直接手は出さなくても、
貴女を密かに慕っているものは大勢います」
夕鈴はぽかんと口を開けたままだ。
「陛下だって、貴女を気に入っているようですし」
機嫌が悪そうに李順は呟いた。
少し表情が子どもっぽく見えてそれは可愛いのだが、
言われたことには納得できない。
「李順さん!ちょっと待って下さい…!
王宮の人たちはただ仲良くしているだけだし、
陛下だって、暇つぶしに遊んでくれているだけだし、
李順さんのことなんて、
最初はほとんど会話もしてくれなかったくせに!」
大きな声で言い終わると、
李順はため息で返事をした。
「だから困っているんです。
こんなに貴女に落ちてしまうと分かっていたら、
婚約などはしていません。
仕事の邪魔です」
これは、喜んで良いのだろうか。
無表情でいつも冷静な婚約者の、ヤキモチ。
しかも夕鈴のことを、
簡単に言えば仕事に支障が出るほど思ってくれているのだ。
「…」
「李順さん」
思わずふにゃ、と頬がゆるむ。
本音を話しすぎたことに気がついたのか、
李順は顔をそらした。
「さっさと次の臨時花嫁を見つけて、
結婚しますよ」
「はい!」
早くこの部屋くらい堂々と手をつないで歩いて出て行きたい、と
そう思っていたのは彼のほうか彼女のほうか。
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竹藤さん
竹藤さんのために書いたようなものです!!
婚約者設定だと好きなだけいちゃいちゃさせられて楽しいです(笑

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secret


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