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となり 5
登場人物 几鍔、夕鈴
カップリング 几鍔x夕鈴

・完結です!
・久しぶりに陛下x夕鈴以外のカップリング真面目に書きました。
・1年以上も前からラストは書いてあったのに、ようやく書きあがりました。

ーーーーーーーーーーーー

避けない、と決めたのに、
また逃げてしまった。

翌日も頭が痛くて、
のろのろと起き上がって支度した。
朝食も簡単なものにしてしまったし、
青慎には申し訳ないことをした。

朝食を片付けようと思って、皿を運んでいたら、
途中で手が滑って割ってしまった。
「あ」
手を伸ばすと、指が切れた。
なにもかもうまくいかなくて、涙が出てくる。
「もー、いや!」
誰も知らないところに行きたい。
どこか遠くへ行きたい。
なにも考えたくない。
ぐずぐず泣きながら皿を片付けて、
指は洗うだけですませて、
夕鈴は水を取ってくるために外に出た。
井戸に桶をおろすと、
軽い音がした。
このまま下を向いているとまた涙が出てきそうだった。
「夕鈴?」
ああ、
涙を流そうとすると会ってしまうなら、
もう水なんて飲まないほうがいいかもしれない。
「几鍔」
「お前、まだ泣いてんのか」
「まだって何よ」
「帰ってきたばっかのとき、毎日泣いてただろ。
最近はなくなったと思ってたんだよ」
「なにそれ?あとつけてたわけ」
「ちげーよ。お前が分かりやすかったんだ」
「あっそ!
言っとくけど、李翔さんは関係ないから。
変な想像しないでよ。
さっきまでたまねぎ切ってたの」
着物の裾で涙をぬぐう。
荒い布はこすれると痛かった。
几鍔はずかずかと大またで夕鈴に近づいた。
夕鈴は思わず距離をとってしまう。
「んなのどうでもいいんだよ。
原因はあの男でもたまねぎでもなんでもいい」
几鍔は不機嫌そうに言った。
「俺はお前のこと気にしてんだ」
「同情なんかいらないわ」
ふいっと夕鈴が顔を背ける。
「同情なんかするかよ」
几鍔の声は真剣だった。
几鍔は夕鈴を腕を掴んで、
無理やり自分のほうを向かせる。
「何…」
文句を言おうと夕鈴が口を開くと、
それを防ぐように几鍔は続けた。
「好きなんだ。気づいてるだろ」
耳から入ってきた言葉と、
真剣な顔と、
目の前にいる人間が喧嘩相手の几鍔だという事実が、
あまりにも非常識で、
夕鈴はしばらく瞬きしかできなかった。
きちんと理解できたときには、
気持ちとは関係なく顔が熱くなり、
思わず目を逸らしてしまった。
「目逸らすな。
こっちだってもう隠してねぇんだから、
お前みないな鈍感なやつでも、分かってるだろ。
俺から逃げるな」
夕鈴は顔をあげなかった。
「夕鈴」
名前を呼ばれて、
夕鈴はゆっくりと几鍔と目を合わせる。
「うちに来い」
夕鈴首をふる
「なんで」
「私、まだ、」
「いいよ」
何がいいものか。
信じられない。
「几鍔なら、もっといい人いるでしょ!
私なんかにかまってないで、他の人のところ行きなさいよ」
夕鈴は耐えられなくて噛み付くように叫んだ。
もう放っておいてほしい!
「そういうことじゃねぇって分かるだろ!」
大きな声を出され、
夕鈴の体が震えた。
怖いわけではなかったが、
今答えを出さなければいけないという切迫感に追い詰められて、
泣きそうだった。
とても混乱しているのに、
追い討ちをかけないで欲しい。
その様子が分かったのか、
几鍔は静かに続けた。
「お前はどう思ってんだよ。
俺はいいって言ってるんだ。
あのクソ野郎のこと忘れてなくてもいいし、
青慎馬鹿でも、お人よしでも、乱暴でも、お前がいいんだよ。
ずっと見てたんだ。今更取って付けた理由で引き下がれねーよ。
本当に嫌なら、ちゃんと拒絶しろ」
几鍔はまっすぐに夕鈴を見る。
夕鈴は目を逸らそうとすると、
肩を強くつかまれて阻止された。
「ちゃんと、俺が嫌いだから嫁には行けないって言え。
そしたらもう来ない」
夕鈴の肩が震える。
一度下を向いて、また顔を上げたときの瞳は涙でいっぱいだった。
「ひどい。言えるわけないじゃない」
ためきれなくなった涙が、
ぽろぽろこぼれる。
「今優しくしないで」
それが答えだった。
突然体を強い力で引かれ、
夕鈴は何が起きたか分からなくなった。
しかし背中に回された手の力強さと、
体温を感じて、抱きしめられているのが分かる。
「悪かったよ。付け入るような真似して情けないとは思ってる」
さらに力を込められ、
苦しいくらいだった。
その力に押されるように、
夕鈴の口から言葉がこぼれる。
「私、まだ、あの人のこと大事で、
でも」
「ああ」
それと一緒に、また涙が落ちてきた。
「もう会えなくて、幸せになってほしくて…」
言葉に出してしまうと、
もう立っていることもできなかった。
ずっと押し込めていたものが全てあふれ出て、
ずるずると、几鍔に支えながらしゃがんでしまった。
「一緒に幸せになるの、私じゃないんだって、分かってたんだけど、
でもほんとに悲しいの!すっごく悲しいのよ。
でもね、その悲しいのも忘れちゃうの。
好きだったのが嘘みたいよ」
ぐす、と鼻をすする音が響く。
こんなに涙と鼻水を流してみっともなかった。
とても惨めだった。
この惨めなまま目の前の幼馴染に抱きしめられて、
温かくて安心している自分が一番いやだった。
だって彼も、とても大切な人なのだ。
この嫌な気持ちをぶつけて、
それを支えるなんて損な役をしてほしくなかった。
「こんな気持ちのまま、几鍔のとこなんて行けないわ。
私、アンタと喧嘩ばっかしてるけど、嫌ってるわけじゃない。
ちゃんといい人お嫁にもらって、幸せになってほしいのよ。
ちょっと優しくされて、
ふらふらして、恥ずかしいの。
もうどの自分の気持ちが本物か、信じられない」
几鍔はそれを聞くと、鼻で笑った。
「嫌いじゃないなら十分だ。
何年も待ってきたんだから、
今更追加されても文句は言わねーよ。
だから、1人でなんとかしようとするな」
小さい頃にしてあげたように、
頭を軽くなだめるように叩いてやった
「でも…」
「『でも』禁止だ、不細工」
「なによっ」
夕鈴はムッとした顔で、
几鍔の体を押した。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔だが、
強気な目が光っていた。
「少しは元気になったかよ。
そういう顔のほうがいい。安心する」
几鍔はもう一度夕鈴を見る。
「俺に幸せになってほしいなら、
お前が俺の隣に来いよ。
他のだれでも代わりにはなれねーんだ」
「ずるいわ」
「ずるくて結構だ」

勝ち誇ったような笑い方が、
とても幸せそうで、
それがとても愛おしくて
きっと大丈夫だと思えた。
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らっこさんへ
らっこさんあけましておめでとうございます!
一気読みありがとうございます。飽きられなくてヨカッタ!
原作では几鍔と夕鈴のカップリングはありえないですが、
昔からの知り合いでどこか信頼はしているんだろうし、
ちょっとのきっかけがあって、素直になれたらくっつくと思うんですよね~
楽しんでいただけてよかったです♪

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secret


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