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love you like no other! 6
登場人物 陛下、夕鈴、李順
カップリング 陛下x夕鈴


・これで最後です
次の日には夕鈴は約束通り饅頭を作ってきてくれた。
「できました!」
「わーい!夕鈴のお饅頭だ!」
これは素直に嬉しくて、
黎翔は早速頬張った。
「おいしい」
「本当ですか?!」
「うん」
少しお腹が空いていたのもあって、
黎翔はいくつかまとめて食べた。
その様子を夕鈴はじっと見ている。
「夕鈴?」
「あ、いえ」
「ありがとうね」
「いえ、そんな!」
「夕鈴も食べないの?」
「じゃあ頂きます」
確かに黎翔一人で食べるには数が多すぎたと思い、
夕鈴も一口かじった。
我ながら悪くない味だ。
横目でちらりと黎翔を見る。
饅頭を食べているところを見ていると、
やはり記憶があってもなくても同じ人間だ。
――当たり前よね…
「夕鈴」
「はひ?」
す、っと黎翔の手が伸びてきた。
頬にふれて、夕鈴が跳ねて反応する。
「ついてるよ」
黎翔は夕鈴の頬についた餡子を指で取ってやると、
そのまま舐めた。
とたんに夕鈴の顔が赤くなる。
「陛下っ」
「何?」
「恥ずかしいからやめてください~」
「なにが?」
ずい、と顔を近づけると、
夕鈴はさらに赤くなる。
「分かってるくせに!」
「なんだろうなあ~」
「もうっ陛下っんぐっ」
「食べて食べて!」
黎翔は夕鈴の口に饅頭を1つ入れると、
自分は2つ食べた。
夕鈴はその不満そうな顔のまま饅頭を頬張るのだった。
その様子を見て、
黎翔は危なかった、と小さく呟いた。




「李順」
これはロクでもない話だ。
と直感で分かっていた。
しかし国王に話しかけられて無視もできず、
一応返事をする。
「なんでしょうか」
「夕鈴が可愛くて困るんだけど」
やはり、ロクでもない話だ。
「私には理解しかねますが左様でございますか」
「もうさ~意地悪しちゃだめだって分かってるんだけど、
したくなるようなことばかり言ってくるんだよね。
拷問だよ」
「精神が鍛えられてよろしいと存じますよ」
李順の気のない返事を不満に思ったのか、
黎翔はじっと側近の顔を見てから、黙って仕事に向かうことにした。
それにしたって本当に、これはいじめだ。







たとえばこういうとき、
夕鈴を怖がらせないで邪魔をするにはどうしたらいいだろうか。
政務室で方淵と水月の3人で楽しそうに?会話する夕鈴を見つめ、
黎翔は考えていた。
今までだったら衝動的にその場に向かって、
夕鈴をさらってくれば良かったのだが、
それは『狼陛下』ではないだろうか。
しかし人がいる場では気の抜けた表情はできないし、
どうやって妨害するかは考えものだった。
「陛下、貴方は他のことで忙しいんですからね」
黎翔の考えを読んでいるかのように、
李順が言った。
「分かっている。しかし」
近い。
特に方淵が近い。
あの男は論議が白熱してくると身を乗り出す癖があるため、
夕鈴とも喧嘩がヒートアップするとだんだん顔が近くなるのだ。
それが耐えられない。
「やっぱりダメだ」
黎翔は立ち上がって、
夕鈴のもとへと向かい、
そのまま後ろから抱き上げた。
「楽しそうだな」
「陛下?!」
黎翔の登場で水月は一目散に逃げ、
方淵はハッとしたように仕事に戻った。
「君は、本当に私がいないときほど楽しそうだ」
「そんなことないです」
「さっきの顔を君自身に見せてやりたい」
抱いたまま夕鈴のことを降ろさずに、
黎翔は政務室から出ようとした。
「ちょっと待って下さい!どこへ行くんですか」
「後宮だ」
「いやいやいや、私、今度こそ熱ないですから」
「熱なんてどうでもいい。
君が政務室にいると、私が落ち着かない。
李順、すぐ戻る」
「はい」
李順はあからさまに嫌そうな顔をしたが、
こうなっては止めようがないから、とため息で返事をした。
そのまま黎翔は暴れる夕鈴を抑えて、
後宮に入った。
そして寝台にそっと下ろす。
「陛下のばか」
「……」
地味に傷つきつつ、
黎翔は平気な顔をして夕鈴との距離を縮める。
「君が悪い」
「何がですか」
「楽しそうにしているから」
「楽しそうになんかしていません!」
「強情だな」
夕鈴の頬に手を伸ばして、
夕鈴が固く目を閉じたところで、黎翔の動きが止まった。
「…陛下?」
夕鈴はゆっくり目を開けた。
黎翔はもう立ち上がっていて、表情が見えなかった。
「僕戻るね」
「…はい」





「あのー、李順さん」
これは面倒な話題だ、と李順は直感で感じ取り、
この娘なら別に無視してもいいだろうかと思ったが、
目の前に立たれるとそういうわけにもいかず返事をした。
「なんでしょう」
「なんか、陛下変じゃないですか?」
「あの人は元々少し変なんです」
「そうじゃなくて!
なんか私に気をつかってませんか?」
「陛下が人に気を使うことなんてないと思いますけどね」
それは流石に酷い言い方ではないか、と反撃しようと思ったが、
そんなことを言いに来たのではなかった。
「極端に狼陛下が少ない気がします」
ここ最近、
黎翔が夕鈴に会いに来るときは、
人目がなければ最初から花が飛んでいるようなふんわりした雰囲気で、
無理して明るくしているような気がするのだ。
時折真面目な顔になったり、
『狼陛下』っぽい顔をすることがあるが、
それもすぐに戻る。
無理に抑え込んでいるように見える。
「さあ、私には分かりませんが」
「陛下って、李順さんの前ではどんな感じなんですか」
「どんな感じもなにも、あの方はあの方です」
それは答えになっていないような気がして、
夕鈴はまた何か言おうとするのだが、
うまく言葉にできなかった。






夜になると黎翔が後宮に来て、
来た瞬間に双六を広げた。
「夕鈴、遊ぼう!」
「陛下」
「なーに?」
にこっ、と笑う黎翔が、なんだか胡散臭く見えるのだ。
「無理してませんか」
「なにが?」
「なんというか…」
「どうしたの夕鈴」
夕鈴が真剣に考え込んでいるので、
黎翔は心配して顔を覗き込んだ。
夕鈴は黎翔の顔をじっと見る。

陛下の本性はこっちの小犬陛下なんだから、
これで違和感はないはずなのに、
どうしてこんなに気になるんだろう。
どうして、
小犬のほうが演技をしているように見えるんだろう。
でも狼陛下が陛下の演技なんだから、
狼陛下のほうが自然なのも変だし、
狼陛下も小犬陛下も演技だったら、
いったい本物の陛下はどこに…?

ぐるぐると考えて、
その間呼吸を忘れていた夕鈴は苦しくなって倒れそうになった。
「夕鈴!」
「す、すいません」
黎翔に支えられてなんとか立ち上がる。
「大丈夫?」
「大丈夫です」
「もう、夕鈴ってすぐ無理するから信じられないよ。
今日はもう寝よう!」
黎翔に腕をひっぱられ、
あっという間に寝台に寝かされた。
「おとなしくするんだよ」
「陛下」
「何を言われても僕は譲らないよ」
「私、本当の陛下が分からなくて…」
「え?」
「狼陛下は演技だし、でも、今は、
今の陛下も演技に見えるんです」
「……泣いてるの?」
黎翔が夕鈴の頬に手をやると、
瞳からあふれた涙が流れた。
「泣いてません」
「嘘つき。君はすぐ嘘をつく」
自分の指についた涙をすくって、
それを舌で舐め取った。
「甘い」
「嘘」
「嘘じゃない」
目元に唇を落とす。
まつげが震えてさらに涙が流れた。
「夕鈴」
寝台に投げ出された夕鈴の手と、
自分の指を絡める。
泣いて潤った瞳と、少し赤くなった頬は必要以上に官能的に見えた。
「どっちがいい?
夕鈴はどんな『陛下』がいい?」
握った手に力を込める。
夕鈴も握り返してきた。
そして空いたほうの手を首に回して、
黎翔は夕鈴に抱き寄せられるようにして寝台に倒れこむ。
「両方です。
どんな陛下も好き」

双六を広げて楽しそうなときも、
書簡に囲まれて不機嫌なときも、
官吏や大臣の前で厳しい顔をしているときも、
東屋でゆっくりしているときも、
今こうして、
目を逸らさせない貴方が。
演技だなんてどうして思ったのだろう。
いつもそのままの言葉を信じていればよかった。
こんな当たり前のことが、
どうして分からなかったんだろう。

「狼陛下は怖くないの?」
「怖くないです。
いつも、優しいって知ってるから…」
「そうでもないよ。例えば、今も」
口付けができるくらいに身を話して、
黎翔は夕鈴の顔を固定しようとした。
その瞬間夕鈴の体は脱力して寝台に倒れこむ。
黎翔の下には、
規則正しく寝息をたてる夕鈴がいた。

「うん、まあ、分かってたよね」







「うん…?」
眩しくて、夕鈴は顔をしかめた。
窓の外から入ってくる光が、
目の前にいる人の影で細くなって、余計に眩しく感じる。
「夕鈴、起きた?」
「陛下!」
「おはよう」
「おはようございます!あれ?私、
昨日陛下に大事な話があって…」
「大丈夫。ちゃんと聞いたから」
「そうなんですか?なんか私あんまり覚えてない…」
「いいよ。ねえそれより、
僕が記憶をなくす前の日に、
僕の部屋に来てって言ったの覚えてる?」
「あ、そういえば。
それで朝に言ったら、怒られたんですよ」
「そうそう、あのときはごめんね。
それで僕も、あの日のこと昨日思い出して、
夕鈴に朝日を見せようと思って呼んだんだ」
「朝日ですか?」
「そう。ちょうど今の時期だけ、
僕の部屋からすごくキレイな朝日が見れるんだよ。
今ぐらいの時間だから、今から行こう」

黎翔は夕鈴の腕を引っ張って、
寝台から起き上がらせた。
そのまま上に羽織ものをしただけの格好で、
二人で廊下に出る。

得意げな、楽しそうな、
そんな黎翔の笑顔を見て、
この子どもみたいなところと、
厳しい王様の顔も全部合わせて陛下なんだわ、
と納得して、
夕鈴も一緒に笑顔になった。
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らっこさんへ
こんばんは~
長編?といえるのか 勢いで書いたので大分急ぎ足ですが、
楽しんでいただけてよかったです♪
らっこさんのコメントにはいつも元気をもらいますっ

最初はらっこさんの言うとおり切ない系の予定でしたがなぜかよく分からない方向に進みました…
夕鈴が狼陛下を演技じゃなくて陛下の一部として受け入れるのはいつになるんだろうと悶々しております。
9巻も本誌も出たばかりですがすでに続きが気になりますね…!

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secret


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