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love you like no other! 5
登場人物 陛下、夕鈴、李順
カップリング 陛下x夕鈴
また寝られなかった。
夕鈴は鈍く痛む頭を抑えるようにして、
寝台から起き上がった。
昨日の自分の行動を思い返すと、
一国の王に対してすることではなかった、と反省の意しか浮かんでこない。
でも、あのときの陛下を受け入れられなかったのは事実だ。
演技の延長のように体を許したくなかった。
好きな人だから、
いざとなったら構わないとどこかで思っていたが、
心も繋がりたいというのはわがままなのだろうか。
一生叶うわけもないのに。
なんだか分からないが相手がその気になってくれたのなら、
女なら一度は好きな人に抱かれておくべきだろうか。
それにしてもなんて謝ったらいいのか、
と謝罪の言葉を何通りも考えて、結局夕鈴は寝付くことができなかった。
「お妃様!」
女官に呼ばれている。
頭が痛いから、朝からそんなに大きな声で呼んで欲しくないわ…と、
だらだら朝の支度を始める。
「お妃様!」
聞こえているわ、と返事をしようとしたが、
その前に腕を引っ張られた。
「陛下が大変なのです。急いでお支度いたしましょう!」
支度なんてしなくてもいいと思ったが女官としてはそうはいかないらしく、
夕鈴は無理やり押さえつけられるようにして、
化粧をすませ、着替え、髪を結われた。
最後の簪が挿されるか否かぐらいでもう我慢できなくて椅子から飛び上がるようにして、
そのまま部屋を出てしまったため少し髪が乱れた。
黎翔の部屋までの道がいつもよりずっと遠く思えた。
息ができないくらい苦しくて、
これだけ走り続けたのはいつ振りだか分からない。
急いで黎翔の部屋に駆け込むと、
寝台の横に李順がいた。
「夕鈴殿、もう少しおしとやかに入室いただけませんかねぇ」
仮にも妃が…と李順の小言を遮って、
黎翔が苦笑いしつつ言う。
「李順、しょうがないよ。
多分李順の伝え方が悪くて、女官が勘違いしちゃったんじゃない。
それで慌てて来たんでしょう。ねえ夕鈴?」
夕鈴は口を大きく開けたまま、
李順の影で見えなくなっていた人物に目を向けた。
「陛下…?」
「ごめんね、なんか心配かけちゃって」
「陛下ぁ」
気づいたときには夕鈴の目からはぼろぼろ涙があふれてきて、
止めることなんてできなかった。
ぐずぐず泣きながら黎翔に近寄って、
李順がいるのも忘れて抱きついた。
「よかったあ」
「うん、ごめんね」
「本物の陛下…!」
「うん」
黎翔に背中を撫でられて、ゆっくりと呼吸を落ち着かせた。
「またお饅頭作ってくれる?」
「はいっ!」





「陛下」
夕鈴がスキップするように部屋を去っていったのを見届けて、
李順が尋ねた。
「なんだ李順。頭の傷ならもう痛まない」
階段から転げ落ちるという古風な喜劇を演じ、
黎翔は不機嫌だった。
「記憶を失っていらっしゃった間のことは、
全て覚えておいでなのですか」
「ああ」
「……」
李順は黙って黎翔を見た。
「なんだ」
「いえ、あの娘、『本物の陛下』などと申しておりましたので、
興味深いと思いまして」
「……」
李順はもう黎翔のほうは見ておらず、
その発言は独り言のように部屋に響いた。









「はぁ……」
誰もいなくなった部屋で、
黎翔はため息をついた。
頭の傷は全く痛まないのだが、
胸の辺りにずっと鈍痛が残っている。
最後に夕鈴に逃げられたときの、
大粒の涙が罪悪感となって、
ずきずきと黎翔を傷つける。
まさかあれほど嫌われているとは。
あの時の自分は自分であって自分ではないと言い訳はできるものの、
夕鈴への気持ちと、
体を大事にしない彼女への苛立ちと、
自分の気持ちが伝わらない煩わしさと、
いろいろ混じってあの行動に出たのは間違いなく自分だという事実は、
曲げようがない。
あのときは、
過去に夕鈴に逃げられたことがないから、
大胆に動けたのだろう。
今は臆病になってしまって出来る気がしない。
とにかく怖がられないようにこれから気をつけて過ごさなければならない。
夕鈴は、記憶を失っていたころの自分と、
今の自分を全く別の人間のように思っているようだから、
そこまで心配しなくてもいいかもしれないが、
夕鈴のいう『狼陛下』はしばらく封印だと思った。
自分の中でどこまで明確に分けられているのか分からず、
ふとした瞬間に夕鈴に『狼陛下!』と言われてしまうので困ったものだが、
とにかく明るくにこやかにしていれば大丈夫だろうか、
と黎翔はこの先が不安でならないのだった。


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