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love you like no other! 4
登場人物 陛下、夕鈴、李順
カップリング 陛下x夕鈴

なんだか急ぎ足な感じに。
ーーーー


翌朝、
政務室で黎翔とばったり向き合った夕鈴は、
思いっきり目をそらしてしまった。
その瞬間、
やってしまった!と後悔の念に苛まれたがもう遅い。
あとでお咎めだろう。
そそくさと用意された椅子に走るように向かって、
そのまま扇子で顔を隠した。
少しだけ扇子を下げて、覗き見るように黎翔に目を向ける。
横顔を、吸い込まれるように見つめて、黎翔がこちらを向きそうになると、
また慌てて顔を隠した。
昨日の微笑みが忘れられない。
ずっと黎翔に微笑みかけられることがなかったからなのか、
思い出すだけで心臓が爆発しそうだった。
軽く頭に乗せられ、一瞬だけ暖かさを残していった大きな手のひらと、
優しく、くすぐったい微笑みが、
一晩たった今でも夕鈴をもだえさせていた。
久しぶりだったからだろうか。
だからこんなにドキドキしてしまうのか。
「妃よ」
「はひっ!」
呼ばれて、夕鈴は飛び上がるように返事をした。
「どうした。具合でも悪いのか。
心なしか顔も赤いぞ」
「いえ」
急いで首を横に振った。
黎翔は夕鈴の手をとる。少し熱い気がした。
「後宮まで送ろう」
「大丈夫です!
陛下の手を煩わせるようなことではございません」
「だが顔色が…」
「違うんです」
「……」
強情な夕鈴を不満そうに見つめて、
黎翔は少し考え込むと、
夕鈴が何か言う前に抱き上げていた。
「陛下?!」
「君は私の言うことを聞かないな」
抱くというよりは担ぐような形で、
黎翔は夕鈴が抵抗できないよう抑えながら、すでに政務室を出ようとしていた。
李順に短く視線を送り、すぐ戻ると口の動きだけで伝えて、
ぽかんとする官吏たちを尻目に進んでいく。
「あの、降ろして下さい!自分で後宮に戻りますから」
「途中で倒れたらどうする」
「体調は悪くないです」
「説得力がない」
「陛下!」
夕鈴は泣きそうになって叫んだ。
こんなふうに迷惑をかけるつもりは全くなかった。
まして、体調は万全だ。
後宮に入ると黎翔は夕鈴を寝台に下ろして、
近くの女官に薬と水を用意するように命じた。
「なぜ泣く?どこか痛いのか」
「違います」
「君はそれしか言わないな」
「そんなこと…」
寝台に寝かせようとすると、夕鈴は首を振って抵抗した。
「私は元気です」
「泣きながら言われても、信じられん」
「だって」
黎翔が夕鈴の頬に手をやる。
涙で濡れている。
今まで女の扱いに困った記憶はないが、
この臨時の花嫁だけはどうにも上手く相手ができなかった。
何しろ行動が読めないし、
黎翔の頭では彼女の感情も全く理解できない。
「いったいどうしたらいいのだ」
「陛下は仕事をしてください」
「そんな顔をされては戻れない、夕鈴」
夕鈴は息を呑んだ。
記憶を失ってから、
黎翔が夕鈴の名前を呼んだのは初めてだった。
心配そうに顔を覗き込んでいるその人は、
夕鈴が知っている『陛下』に見えた。
「陛下」
「…どうした」
一緒にいる時間を覚えていてくれなくて、それは寂しい。
でもこの優しさは、やはり自分の知っているその人なのだと感じる。
頬に当てられた手のひらに安心して、
でも自分に優しくしながら、
黎翔自身は今でも演技をしたままで、
気を抜けないのかと思うと心苦しかった。
いつまでこうやって、
彼は朝も夜も演技を続けていなければならないのか。
いつになったら心を開いて、
前のように小犬の顔を見せてくれるんだろう。
「力になれなくてすみません」
「何を言っているんだ。
私は、君がいるだけで、とても救われているよ。
いい子だからおやすみ」
黎翔はゆっくり夕鈴を寝台に寝かせた。
最後に額に唇を落として、
昨日の夜とは違う寂しそうな微笑を見せて部屋を出た。





結局夕鈴は、
そのまま熱を出した。
李順に後宮出入り禁止令を出され、
黎翔と夕鈴が会ったのはそれから一週間後だった。
「だから言っただろう」
「真に申し訳ございません…」
夕鈴はうう…と頭を垂れた。
あれだけ体調は問題ないと豪語していたくせに、
結局熱を出して倒れてしまうなんて情けない。
とはいっても、原因は二日もまともに寝られなかったせいではないか、と
夕鈴は原因になった人に目を向けた。
「どうした」
「いえ、あの、ちょっとお渡ししたいものが」
「なんだ?」
夕鈴は別の部屋に行って、
箱に入った饅頭を持ってきた。
「お詫びにもならないとは思うのですが、
陛下のためにお饅頭を作ったので、よかったら召し上がって下さい」
机の上に広げると、
出来立ての饅頭の香りが広がった。
「分かった。頂こう」
黎翔は1つ手にとって、そのまま口に入れた。
「おいしい」
「本当ですか?!」
「うん」
夕鈴の顔がぱあっと明るくなる。
味を気に入ってもらえたというのもあるが、
饅頭を食べたときの表情や返事が小犬陛下のようで、
少し気を許してくれた感じがした。
「妃よ」
「はい!」
「君は、」
「あ、お茶ですか?すぐ用意します!」
嬉しくなって、立ち上がろうとすると黎翔に抑えられた。
そのまま長いすに押し付けられるような格好になり、
背もたれと黎翔の腕で逃げられない。
「君は病み上がりなのにこんなものを作っていたのか」
「でももう治りましたよ?」
「私がこの一週間どれだけ心配していたか分かっているのか」
「治ってから作ったんですよ。
咳して汚したりしてないし…」
見当はずれの答えに苛々して、
黎翔はそのまま夕鈴を押し倒した。
「何も分かっていない」
「陛下?」
「私の心がどれほど君に囚われているのか、
分からせてやりたい」
「どうしたんですか、急に」
「かまわないか?」
手首をつよく掴まれて、夕鈴は思わず顔をしかめた。
冷や汗が出てきた。
似たような演技はあった気もするが、
どうも黎翔がふざけているようには見えない。
「陛下、あの…」
「夕鈴」
名前の呼び方があまりに優しく、それだけで夕鈴の体は震えた。
黎翔の顔は泣きそうに見えた。
「やめてください」
気づいたときにはそう言っていた。
「こんな、人のいないところで演技とかしても、しょうがないですよ」
「演技とはなんだ?」
「だって今、陛下、狼陛下の演技中じゃないですか」
黎翔は怪訝な顔をする。
それと同時に、意味不明なことを言って焦らす夕鈴に苛立っていた。
「私は君相手に自分を偽ったことなどない。
この私の言葉を疑うのか」
無理やりに唇をふさがれて、
夕鈴は必死に抵抗した。
手首を押さえられて腕は使えず、
残された手段は一つしかなくて思いっきり黎翔の腹を蹴ってしまった。
もちろんそんなものは効果はないのだが、
それだけの抵抗をされたことに驚いて、
黎翔はゆっくりと夕鈴から体を離した。
「そんなに私のことが嫌いか」
夕鈴は言葉で返事ができず、
ただ首を振る。
「嘘は言わなくていい」
「嘘じゃありません。嫌いになったことなんてないです。
でも、こんなことする陛下は陛下じゃないです!」
睨みつけるように言い切って、
夕鈴はその場から逃げようとした。
「夕鈴!」
黎翔は立ち去ろうとする夕鈴の腕を捕らえる。
「君は誰の妃なのだ、私を見ろ!」
「いやっ!」
夕鈴の目から大粒の涙がこぼれる。
そのまま黎翔の顔は見ないで、
夕鈴は走って逃げた。
追いかければ捕まえられたが、
黎翔は追いかけなかった。
机の上の菓子も手をつける気になれない。
『陛下のために』作ったと言っていたが、
その陛下は自分ではない。
少なくとも記憶のない今は、
彼女の見ている『陛下』と自分は、全く違う人間のような気がしていた。
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